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検証 「恵庭OL殺人事件」第25回 「判決の行方」


03月25日(火) 10時25分
文:東  



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大越美奈子被告(左)と殺害された橋向香さん
 「疑わしきは被告人の利益」か…。

 3月26日午前10時。いよいよ札幌地裁で「恵庭OL殺人事件」の判決が言い渡される。

 2000年3月17日午前8時20分ごろ、幼稚園職員が恵庭市北島で、苫小牧市に住むOL橋向香(当時24歳)の焼死体を発見。同年5月23日、事件発覚直後から警察にマークされていた大越美奈子(当時29歳)が殺人、死体損壊の容疑で逮捕された。大越と被害者の橋向は、日本通運札幌東支店キリンビール千歳工場内構内課に勤務する同僚だった。

 検察の冒頭陳述による事件の概略は以下の通り。

 <被告人は、事件当日、被害者と一緒に退社し、殺害する機会をうかがおうと考えていたことから、自らの仕事を急いで処理。橋向に対し「私を置いて行かないでね」などと言って単独で退社することを阻止した。橋向に合わせて残業を終えた被告人は、被害者と一緒に午後9時半頃「お先に失礼します」と残っている従業員に挨拶し、1階の事務所から2階の女子更衣室に行き、帰り支度をして退社している。

 その後、被告人は午後11時頃までの間、千歳市、恵庭市またはその周辺において被害者を殺害。殺人の動機は、結婚を期待しながら交際を続けていた男性に突然別れ話を通告され、その原因が被害者との交際を開始したことにあること。また、被告人は(アルバイトから)契約社員への昇進時期(経験年数や仕事内容)の件で反感を持っていたとしている。死因は頸部圧迫による窒息死。さらに、恵庭市内の路上にて被害者の死体に自分の車に積んでおいたポリタンクの灯油をかけた上、火を放って焼損。犯行に用いた凶器は現在まで見つかっていないが、公判に出廷した証人の警察官はタオルではないかと証言している>

 一方、弁護側の冒頭陳述は、検察と真っ向から対立したものだった。

 <被告人と被害者は事件当日午後9時半頃仕事を終えて、2階女子更衣室で着替えながら会話した。その会話の中で被告人は、被害者の冷たい一面を知り、自分の元恋人の彼女とはいえ「大したひとではない」と思えるようになった。それまで恋人のことで悩み、無言電話をかけていたことが馬鹿らしくなってきた。また、被害者が他の同僚と一緒に「またカラオケに行こうね」と親しく話してきたことから今までの行動を自ら反省し、嫉妬の気持ちも失せていった。2人は一緒に退社したが、その後被告人は、気分転換のため真っ直ぐ家に帰りたくないと思い、知り合いに会う可能性の少ない、恵庭の書店「ビブロス」で立ち読みをしていたとしている。

 起訴状によれば、被告人は午後11頃までに被害者を殺害し、午後11時頃死体に灯油をかけて火を放って焼損した、とされている。もし仮に、JR長都駅に被害者の車両が置かれていた事実から被告人が会社の駐車場からさらにJR長都駅に向かったとすると、JR長都駅を出発できる時刻は午後9時50分頃となる。さらに25分かけて、遺体発見現場に到着する時刻は午後10時15分頃となる。したがって、犯行時刻とされる午後11時までは45分しかない。検察側が言う45分間という短い時間内に、単独で、殺害と死体遺棄・死体放火等一連の行為を行ったとすることには合理的説明がつかず、不可能としか言いようがない。被告人は午後11時36分にはガソリンキング恵庭店にてガソリンを給油してもらい支払いまですませ、レシートを受け取っていることから、給油に要する時間を考慮すれば、その数分前の午後11時30分前後にはガソリンスタンドに到着していなければならない。現場から当該ガソリンスタンドまで所要時間は25分かかる。したがって、午後11時15分に現場を出発すると、午後11時30分迄の到着はありえない。この点から、被告人の犯行は不可能である>

 以上が検察と弁護側の冒頭陳述の要旨であるが、双方に“決定打”が見当たらないのも事実。

 検察は殺害時刻や凶器の特定、発見には至っていない。また犯行に使ったとする大越の車からは、ルミノール反応(血痕を検出する検査)、指紋、毛髪等の証拠も見付からなかった。

 一方、事件当初から「冤罪」を主張する弁護側は、事件当日、橋向を殺害してから給油することは不可能だとする反面、立ち読みをしていたとする大越のアリバイを立証することはできなかった。

 一部のマスコミは、この殺人事件の原因を三角関係のもつれと報じた。その背景には、かつて大越被告の同僚で恋人でもあった板持貢が事件発生直前から、橋向と交際を始めた事実があったためだ。

 こうした愛憎劇を根拠とした「三角関係」説に拍車を掛けたのが無言電話。検察側の主張によると、大越は2人の交際を恨み、橋向の携帯電話などに230回、無言電話を掛けたという。

 片や弁護側は大越被告が2人の交際を疑う中での不安定な心理状態で電話を掛けたもので、多くは呼び出し音の鳴る前に切った、と嫌がらせが目的ではないとした。

 BNNではこれまでの取材で、板持が大越と付き合っていたこと、その後、板持が大越と別れ、橋向と交際した事実を確信した。しかし、「三角関係」の前提となる“同時進行”は確認できなかった。

 いずれにしても、大越は一貫して犯行を否認してきた。そのため、大越の殺人を主張する検察には有力な状況証拠が求められる。すでに札幌地検は300を超える状況証拠をベースに殺人の立証を図ってきたが、前述したように“決定的な証拠”を提示するには至っていない。

 判決は言うまでもなく裁判官が下すものだが、刑事裁判の原則「疑わしきは被告人の利益に」に則れば、大越に有罪判決を言い渡すことは難しいのではないだろうか。(敬称略) 







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