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北大・櫻井義秀助教授に聞く「カルト宗教のいま」 中編


05月03日(土) 21時50分
文:東  



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櫻井義秀氏
 「『こいつらはおかしい』という意味で『カルト』という言葉を使うのであれば、それは安易な使われ方だ」

 「カルト問題」に関わる“すべて”を北海道大学大学院文学研究科の櫻井義秀助教授(宗教社会学専攻)に聞く続編。以下、櫻井氏との一問一答。

 ――オウム真理教(アーレフに改称)の一連の事件もあって、「カルト」や「マインドコントロール」という言葉は、誰しもが気軽に使うようになった。宗教社会学の研究者からするとこの「現象」はどのように映るのか。

 櫻井 私は社会学を研究しているため、ある種の宗教的見地から「これは普通の宗教である」または「これはカルトである」というような区別はしない。また法律家でもないため、現行の法体系や社会常識に基づいた社会的相当性という観点から、「これはかなり逸脱している」とか「逸脱していない」という議論も基本的にはしない。あるいは心理学者や精神医学者でもないので、「これは正常/異常である」 とか、「この教団のこの教祖や信者が精神的に問題だ」ということも言わない。

 では社会学は何を問題にしているのかといえば、基本的には社会問題だ。社会問題は、その社会に住んでいる人々がそれを問題だと感じ、告発することで社会現象化する。私の仕事はそういう問題の立ち上がり方を記述すること。

 昨今のいろいろな宗教団体の勧誘方法や悪徳商法の金の集め方に対し、「ちょっとこれはないんじゃないか」と普通の人々が非常に厳しい視線を向けるようになってきた。さらに一般市民だけではなく、元信者も「自分たちは、だまされて教団に入った」あるいは「法外な資産を奪われ、返してもらえず、生活が困窮している」などの具体例を提示して告発し始めている。

 こうした中でいわば「カルト」が社会問題となってきた。そういう意味では「カルト」は社会問題の在りかを示すレッテルであり、ラベルなんです。

 ――「カルト」は便利な言葉ということか。

 櫻井 便利ですね。しかし、使い方には気を付けなければいけない。宗教団体の行っていることを世間の常識に照らし合わせてみると、一見奇妙に映ることはたくさんある。だからといって「お前らはおかしい」「あんたたちとは一緒に居たくない」ということにはならない。

 思想や信条、生活習慣などが異なっていても、共存していくのがこれからの時代だ。イスラムの生活パターンは我々と大分違うが、隣に住めばそれなりに共存していかなければならない。

 往々にして「こいつらはおかしい」という意味で「カルト」という言葉を使うのであれば、それは安易な使われ方だ。具体的に特定の人間の利益や人権、それらに関わる深刻な問題があってこそ社会問題になる。それがない以上、カルトという言葉を使って相手を単に非難することは非常にまずいと思う。

 この点、マスメディアは「カルト」という言葉を乱暴に使っているようで、案外慎重です。宗教問題は非常にデリケートなので、下手な批判をすると、当該団体がすごく反発する。マスメディアはこうした点が恐ろしいため、実際に「カルト」と名指しした教団は極めて少ない。このことは私の論文にも記載しているが、10教団にも満たない。これだけ「カルト」という言葉が氾濫している割には「ここの団体がカルト」とはなかなか言えない。

 ――社会問題を起こした事例を根拠とした「カルト教団」は。

 櫻井 まず、刑事事件を起こした教団。オウム真理教が典型だ。次は刑事事件にならなくとも、民亊のレベルで違法な行為をした統一教会。3番目は違法な集金を行った教団で、統一教会の霊感商法や法の華三法行。そして4番目に挙げるとすれば、教団内部での信者に対する処遇問題だ。無償労働をさせていないか、教団で暮らす子供たちにきちんと教育を受けさせているか、親と一緒に生活させているか、栄養状態はどうかなどの問題がある。具体的にはライフスペースや現在は改善されたとするヤマギシ会が当てはまる。

 ――教団側は「マインドコントロール」の手法をどのようにして会得するのか。

 櫻井 マインドコントロール自体は全然特殊な技術でない。これは『マインドコントロールとは何か』の著者である西田公昭氏も述べているが、簡単にいえば、セールスのテクニックと同じだ。店員が歩いている客に話し掛け、10分、15分と会話を続ければ、客は店員の勧めを断りにくくなる。宗教団体の場合も、いきなり「信仰しなさい」「買いなさい」とは言わず、何気なく訪れ、関係ができたところで初めて「これはどうですか」となる。

 医療ではインフォームド・コンセント(内容、目的などを説明し、患者の同意を得て治療すること)が重視されているが、宗教団体はこう反発するかもしれない。「我々の世界の宗教的知識は、一般の商品や契約と違う。最初に全部を説明して納得したら入ってもらえますか、というものではない。少しずつ相手の状況に合わせ教えたり、諭すことで知識は深まっていく。

 だから初めから全てを説明しないのは、当たり前という主張だ。確かにそういう面はあるが、宗教団体によっては、入ると「全財産を出しなさい」「専従職員になりなさい」というケースがある。このような教団が入会者に対して十分な情報を与えずにこうした要求をするならば、問題だ。「カルト問題」といわれているのはこうした事例である。

 ■櫻井義秀(さくらい よしひで) 1961年4月、山形県上山市生まれの42歳。84年、北海道大学文学部哲学科卒業。87年3月北大大学院文学研究科博士課程中退。北星学園女子短期大学家政学科専任講師、北大文学部講師を経て、96年から 同大助教授。専攻は宗教社会学。







関連サイト

前編
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_genre=17&news_cd=H20021021303

櫻井義秀氏HP
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~n16260/






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