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after Saddam〜イラク渡航記 第四章


 
湾岸戦争後、がん、白血病、奇形児が急増しているが、経済制裁下、医薬品は慢性的な不足状態。
日本出発前から訪問しようと考えていたのが病院だった。
どうすれば、病院を訪れることができるのか、思案していたものの、イラク人のタクシー運転手の計らいでバグダッド市内の国立病院に難なく入れてもらうことができた。
門をくぐると、一人の少年が珍しそうに日本人を眺めている。恥ずかしいのか、恐ろしいのか、声こそ掛けてこないが、後を付いて来る。
少年は白血病に苦しむファラ・ハラシート。まだ12歳。
医師のサラム・ダウッド(27)は、少年が「劣化ウラン弾による白血病患者だ」と教えてくれた。
イラクでは劣化ウラン弾が使用された湾岸戦争後、ファラのように白血病を患うケースや、がんの発症、奇形児の出生が急増している。
アメリカ軍が湾岸戦争で初めて使った劣化ウランは、原子力発電や核兵器に使用する天然ウランの濃縮処理時に派生する“ごみ”である。
ところが、この劣化ウランは非常に比重が重く、硬いことから貫通性に優れた砲弾として大量に軍事利用された。劣化ウラン弾は、爆発後、大気や土壌に飛び散り、農作物や飲料水、空気などを通じて、人体を蝕んだ。
周知のように、イラクは国連安保理決議611により、経済制裁を受けた。これが医薬品、医療機器の慢性的な不足状態を生み出し、白血病、がん患者を一層苦しめている。
私は日本の「100円ショップ」で購入したクレヨンとノートをベッドに座るファラに手渡した。ファラは笑顔で絵を描き始めたが、その笑顔がいつまで続くのか、私には分かるはずもなかった。(敬称略)










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