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after Saddam〜イラク渡航記 第九章


06月21日(土) 00時00分
文:東  



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内部はこんな様子
 米軍戦車に“突撃”。

 目下、イラク国内に米英軍が駐留していることは広く知られている通りだが、米軍は首都・バグダッド、英軍はクウェート国境に近い南部の港湾都市・バスラを占領下に置いている。

 フセイン政権下では少数派のイスラム教スンニ派の人々が主流となり、6割を超すイスラム教シーア派の信徒は、徹底して弾圧された。従ってシーア派教徒が多数を占める南部では比較的、英軍を歓迎するムードが強い反面、バグダッドの住民と米軍の間には緊張感が漂っている。

 バグダット市内には、至るところで米兵が目を光らせている。これまで米兵と市民による衝突も度々起こった。19日の読売新聞朝刊では、米軍が元イラク軍兵士のデモ隊に発砲、2人が死亡したと報じたように、戦闘終結後もバグダッドは一触即発の様相を呈している。

 我々がバクダッド滞在中の米軍兵士と市民の関係は、大人の多くが兵士と距離を保っていたこととは裏腹に、子どもたちは米軍戦車の周辺で遊んだり、米兵と会話を交わしていた。

 上官を除けば、戦車に乗り銃を構える兵士の大半は未成年とおぼしき童顔ばかり。「ガールフレンドに会いたい」とか、「家に帰ってマザーと話がしたい」と、炎天下でのヘトヘト状態と相まって、ホームシックにかかってしまった様子だった。

 予想以上にフレンドリーな対応をしてくれた米兵と接し、私の脳裏には、とある案が浮かんだ。

 「いっそのこと、戦車に乗ってやろう」というチャレンジャー精神?である。

 市内を徘徊していた私の眼前にはちょうど戦車が見えてきた。45度の炎天下。もちろん通常の思考回路など働くはずもなかったが、私は気が付くと、こともあろうに戦車の上に乗っていた。

 「ハロー」と兵士に声を掛けてみたまでは良かったが、相手は黒人兵。

 「まずい!相手の表情が読み取れないではないか」

 しかも危険なことにそれまで首の垂れていた銃の角度が上向いてしまった。

 私は最大限のつくり笑顔で「ナ・イ・ス・ト・ウ・ミー・トゥ・ユー」とカタカナで英語を羅列。ところが、逆光で表情が読み取れなかった黒人兵は仏頂面だった。

 ここで何とか冷静さを取り戻した私は、握手がまだだったことを思い出して「ギュツ」

 うれしいことに黒人兵も固く握り返してくれるでないか。日米友好の瞬間を察知した私は、パシャパシャと写真を撮った。

 ここで女神が参上!。中国留学生・田中奈美の登場である。私はすぐさま田中を戦車の上に呼び込んだ。

 田中はペラペラの英語で兵士とフレンドリーな会話を交わしている。私は私で戦車のマシンガンや弾をじっくり観察していたが、田中の姿が消えたことに気が付いた。

 「田中さん〜田中さん」。繰り返し呼べど田中の姿は見えない。

 何と田中は、戦車の中に潜り込み、白人兵士と親しげにしているではないか。私も潜り込んでみたが、肩まで組んでラブラブである。

 米中友好と言うよりは、戦車で芽生えた国際的なラブロマンスか、と仰天。

 そうこうしているうちに、兵士たちの雰囲気が一変した。大型4輪駆動車のハマーに乗って、上官がやって来たのである。上官は兵士たちと我々の“痴態”に少々お冠の様子だったが、幸いなことにこれといったお咎めはなかった。

 バクダッドの酷暑は、人から恐怖心を拭い去り、恋心を芽生えさせるかのようだった。(敬称略)






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戦車の兵士は、この2人を含め全部で3人


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赤い缶は、コカ・コーラ


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バグダッドでのこうした光景は珍しくもない


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戦車内部でポーズを取る若き米軍兵士(田中奈美提供)






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