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after Saddam〜イラク渡航記 第十一章


06月29日(日) 19時30分
文:東  



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サダム・シティーの住民は、「サダム」の名を嫌い名称をサドル・シティーに変えた
 スラム街「サダムシティー」で“事件”。

 いよいよ明朝はイラク出発という5月26日、すでに我々一行9人のうち、6人が腹痛と下痢に悩まされていた。

 「現地の水を飲んでは危ない」と、我々がヨルダンのスーパーマーケットで事前に大量購入したミネラルウォーターは、まだ数十本、蓋を開けずに残っていた。

 しかし、我々の頭にインプットされていたはずの「自己管理」というフレーズは、イラクの酷暑でフリーズしてしまった。「現地の水」にしか、注意を払っていなかったためだ。

 エアコンのないタクシーを降りれば、半分凍ったペプシコーラをガブガブ。昼と夜はレストランで現地の水で洗った生のキュウリとトマトをムシャムシャ。ホテルに戻れば、疲れた肉体を顧みることもなく、冷え冷えのビールをグビグビ。

 こんな調子で腹はゴロゴロ。トイレに行くこと一日、十数回。しかも、ホテルから一歩外に出れば、そう簡単にトイレには駆け込みことができないにもかかわらず、である。

 “爆発寸前”で何とかトイレにたどり着き、ことなきを得た快感と、懲りずにペプシやビールを飲む爽快感。

 本来は非日常的であるはずの下痢の“連射”が日常となり、“飲んでは出す”、“出しては飲む”という、腹にとってはまさに“呉越同舟”の行為を臆することもなく受け入れ続けたメンバーが私のほかに5人もいたことは大いなる驚きだった。

 そんな状況であるにもかかわらず、我々9人はバクダッドのスラム街・サダムシティーに足を踏み入れた。すでに私と吉田由紀子、田中奈美の3人が5月23日にこの貧民街を訪れたことは第5章に記載したが、26日は全員がチャレンジ。

 前回は午後3時頃だったが、26日は午後5時過ぎの到着。そのせいか、サダムシティーの喧騒は23日以上だった。我々ジャパニーズの周りにすぐさま黒山の人だかりが出来るのは相も変わらず。9人で一緒に歩くことなどとても無理だった。

 しかし、3グループに分かれても、この状況に大差はなし。ほかのグループのメンバーは姿こそ見えないが、周囲はあたかもハエがたかってでもいるかのように真っ黒になるため、他グループの居場所は瞬時にして判明する。

 平たく言えば、「ベッカム様in japan」状態の二乗。「暑苦しい」「煩わしい」などという言葉では到底、言い尽くせない「別世界」である。とにかく歩けば、連結した列車でもあるかのように私の背中に、子ども、少年、青年、そして無心をするオババが付いて来る。車にクラクションを鳴らされようがお構いなし。こんなことを続けていれば、誰かが車に轢かれてしまう、そんな心配をしてしまうほどだった。

 10分ほどした時であろうか。私に肩を中年の男性が叩いた。男性の手には、私のリュックに入っていたはずのハンカチ、ノート、ボールペンなどが握られていた。私は男性に礼を言い、渡してくれたものを再びリュックに戻した。

 「アッッ、航空券がない。やられた」。もちろん、これだけ人がいれば、犯人など分かるはずもない。

 それでも不幸中の幸いと言うべきか、一安心。盗まれたのは「羽田ー札幌間」だった。盗まれるまで気が付かない私も私。「これ以上、ここに居てもロクなことはない」と他のグループと約束した集合場所に向かった。

 遅れてやって来た大山謙吾の言によれば、「はしゃぎまくる子どもたちを威嚇するため、空に向かって発砲した人間もいた」そうだ。

 日本人ジャーナリストはもとより、現地の人までもが危険視するサダムシティー。正直なところ私は「大袈裟すぎる」と思っていたが、我々も運が悪ければ……。(敬称略) 






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黒い服を身にまとった女性の多くが、金の無心にやって来る






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