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after Saddam〜イラク渡航記 最終章


07月29日(火) 20時30分
文:東  



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悪の権化はいずこに…
 現地に赴き感じた7つの「サプライズ」

 私は5月20日から29日まで、UAE(アラブ首長国連邦)とヨルダンを経由してイラクを訪れた。

 渡航期間中、私にとっての「サプライズ」は数多く存在したが、その中から7つを列挙する。

 1.駐留する米軍兵士の多くは童顔の20歳前後。暑さとホームシックで士気は低下していた。
 バグダッドは日中の気温が45度にも達するため、戦車の中に氷柱を入れ、暑さをしのぐ兵士もいた。うら若き兵士の中には「早くマザーに会いたい」と弱音を吐くケースもあった。

 2.バグダッドはとにかくごみが多かった。
 市内はもちろん、線路にまでごみが散乱していたが、なぜか、バクダッドの街には、ごみが似合っていた。

 3.空爆された建造物が戦禍を物語っていることはもちろんだが、経済制裁こそがこの国を苦しめた。
 アメリカ軍が1991年の湾岸戦争で初めて使った劣化ウランは、原子力発電や核兵器に使用する天然ウランの濃縮処理時に派生する“ごみ”である。劣化ウランは非常に比重が重く、硬いことから貫通性に優れた砲弾として大量に軍事利用された。劣化ウラン弾は、爆発後、大気や土壌に飛び散り、農作物や飲料水、空気などを通じて、人々を蝕み、白血病、小児がん、奇形児の増加などにつながった。しかし、国連安保理決議により、経済制裁を受けるイラクは、医薬品、医療機器の慢性的な不足状態を生み、がん患者を一層苦しめている。

 バグダッド市内の病院に入院していた白血病の少年ファラ・ハラシートも、経済制裁に苦しめられる1人だった。

 4.イラクの人々は無類のお人よし。
 イラクの人々は我々を見かけると「ジャパニーズ、グッド」「ハロー、ミスター」などと常に声を掛けてくる。中には金の無心が目的の場合もあるが、ほとんどは親切かつフレンドリーだった。

 バグダッド市民の平均的な月収は50ドル程度だそうだが、タクシー運転手のモハメッドは、写真のようにフロントガラスがひび割れていても、自分がたばこを吸うたびに、およそ1箱3ドルのたばこを1本ずつ私にくれた。また、暑さに弱そうな日本人に対する気配りか、1ドルするペプシコーラを奢ってくれもした。

 5.日本人は尊敬の対象。
 イラク渡航歴10回、札幌在住フォトジャーナリスト・林直光は、かねてからこう語っていた。

 「イラクの人々は親切で心優しい。特に日本人に対して親近感を抱いている。世界でも最も人が良いのではないか。第二次世界大戦で日本は原爆を投下されて負けた。しかし、米英の列強と臆せず戦ったこと、そしていち早く経済復興を成し遂げことが高く評価されている。イラク国民は車やテレビに限らず、ボールペンまで日本製のものを使っており、日本の工業技術とそれを生み出した日本人には尊敬の念すら抱いている」

 日本政府がアメリカ支持を表明した後も、日本人に対する「憎悪」や「批判」の素振りは見受けられなかった。

 6.イラクの人々の目は輝いていた。
 イラクの人々は総じて彫が深く、眼が大きい。よって、はなはだ主観的だが、目に「力」があるように見える。貧しい生活をしていても、生きることに疲れたり、覇気が感じられない日本のサラリーマンとはあまりにも対照的だった。特に他人が子どもを平然と怒る場面は、今日の日本ではほとんど見ることのできない新鮮な光景だった。

 7.イスラム世界に近代化は「あり得ない」
 イラク一帯は、世界最古のメソポタミア文明発祥の地である。イスラムの預言者・マホメットが登場したのは7世紀。イスラム教の教えは8世紀までに、インド、中国、ヨーロッパ、北アフリカにまで広がった。こうして出来上がったサラセン帝国は、かつてのローマ帝国を凌駕するほど、広範な地域を支配した。

 イラクは写真のように肥沃な大地の恵みは石油と同様に豊富であり、そもそもが決して貧しい国ではない。

 にもかかわらず、アラブ諸国は「近代資本主義」や「近代国家」という面で欧米の後塵を拝している。その理由はやはり、「宗教」にあるのではなかろうか。

 ムスリム(イスラム教徒)は、物を買ってもらっても一切、礼を言わないと批判されることがある。

 キリスト教は「お偉い」教会が信者から金を巻き上げたり、免罪符を売るなどの「商売」、つまり資本主義の土壌が次第に形成されていった。

 しかし、イスラム教における唯一、絶対の神は「アッラー」だけであり、マホメッドといえども、「神の子・イエス」などといったあいまいな存在ではなく、預言者にすぎない。そのため、ムスリムが契約を結ぶ相手はアッラーだけだという。

 一方、キリスト教は「隣人を愛せよ」との教義から人と人の契約、すなわち「商売も大切」とされている。「神も大切ならば、隣人にも親切に」というキリスト教徒は根本的に大きな相違があるというわけだ。

 ムスリムが聖地・メッカに向かって1日に5回も礼拝することは良く知られたことだが、礼拝前には体も清めなければならない。「敬虔なクリスチャン」という言葉は、むしろムスリムに当てはまる。

 ムスリムがこんな生活をしていれば、近代化など願うべくもないはずだが、そこが「イスラム世界」の魅力と言えるのではなかろうか。(敬称略) 










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