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恵庭OL殺人事件 控訴審第9回公判 後編 被告は事件当日、被害者への無言電話を「覚えていない」と証言


 
被害者に対する憎しみを否定。
平成12年3月17日午前8時20分頃、恵庭市北島の道路わきで、苫小牧市に住むOL・橋向香さん(当時24)の焼死体が発見された。札幌地裁(遠藤和正裁判長)は、15年3月26日、この事件で殺人と死体損壊の罪に問われた元同僚・大越美奈子被告に懲役16年の判決を言い渡した。
大越被告は捜査段階から一貫して無実を主張してきたが、遠藤裁判長は「犯行は合理的な疑いを挟む余地なく認定できる」と断罪した。そのため、被告側は即日、札幌高裁に控訴した。
11月30日午後1時15分から札幌高裁(長島孝太郎裁判長)で「恵庭OL殺人事件」の控訴審第9回公判が開かれた。以下、高橋勝検察官による被告人質問の後編。
高橋検察官(以下、高橋) あなたは(平成12年)3月16日の午前中も(非通知で)橋向さんの携帯電話に掛けているでしょ。ものすごいこと(17日に橋向さんの遺体が発見された)が起こった前日に電話したこと、それも覚えていないのか。
大越美奈子被告(以下、大越) ……。
高橋 覚えていないのか、自分の記憶に残っていないのか。
大越 はい。
高橋 16日は午前1時7分台に2回、3時と7時に1回掛けている。覚えていないのか。
大越 覚えていない。
高橋 わざわざ出勤前に電話を掛けていて覚えていないのか。
大越 はい。
高橋 出勤後、事務所で橋向さんと話をしたことは覚えていますね。
大越 はい。
高橋 それなのに電話したことは覚えていないのか。これまでのあなたに関する記録では、3月13日にサザンオールスターズのビデオを見て、橋向さんへの思いは吹っ切れたと言っている。
大越 はい。
高橋 それ以降、すっきりしていたのではないか。
大越 割り切れない部分もあった。
高橋 (当時、交際していた)板持(貢)さんのことをあきらめ切れなかったのか。
大越 別れるという言葉は言ってもらえなかった。
高橋 別れるかどうか、あなたが板持さんに聞けば良かったのではないか。
大越 自分の気持ちの中にいずれ別れるという気がありつつ、一緒に遊びに行くと楽しい気もあった。
高橋 あなたは3月16日、通常に出勤していますね。
大越 はい。
高橋 あなたは1審の第17回公判で、午前8時30分頃、板持さんと橋向さんの2人を気になって見たと述べていますね。
大越 その数日前から気にして見ていた。16日も多少は見ていたと思う。
高橋 2人の関係が頭から消えなかったのか。
大越 毎日、顔をつき合わせているので、ゼロになることはなかった。
高橋 あなたは3月16日の段階で橋向さんに対し、うらやましい、憎らしいなどの気持ちがあったのか。なぜ、見ていたのか。橋向さんに対して憎らしい気持ちはなかったか。
大越 ありません。
高橋 あなたから見れば、板持さんを取られた。橋向さんを憎くなかったのか。
大越 その時点では(2人が交際していることは)私の推測だったし、2人を見ても変わった様子はなかった。
高橋 3月16日午後8時にあなたは橋向さんに「私を追いていかないで」と言った記憶はないか。
大越 ありません。
高橋 (日常的に)残業を終えたあなたが、橋向さんと待ち合わせて帰ることはなかったのか。あなたも橋向さんも1人で帰るのか。
大越 そうだったと記憶している。
高橋 あなたはAさん(大越被告が元同僚の板持貢氏と交際する前に付き合っていた男性)に16日のテレビドラマの録画を頼んでいる。その時点で残業は時間的にどのくらい残っていたのか。
大越 そこまで考えて電話はしていない。仕事をしている時は伝票に集中しているので、時間を考えたことは記憶していない。
高橋 3月16日は何時に仕事が終わるか分からずに残業をしていたのか。
大越 11、12時までかかるとは思わなかったが、細かい時間まで考えていなかった。
高橋 橋向さんは自分の残業がどのくらいかかるかを話していなかったか。
大越 特に言ってはいなかったと思う。
高橋 お互いに残業がどのくらいかかるかの会話はないのか。
大越 そういう会話はない。
高橋 残業後、橋向さんとの約束事はなかったか。
大越 ありません。
高橋 残業の時、橋向さんと交わした会話であなたが覚えていることは。
大越 ビデオの録画以外、会話内容は覚えていない。
高橋 あなたは3月17日の段階で、前日の記憶もなかったのか。
大越 そこまでは覚えていない。
高橋 あなたの残業が終わった時間は。
大越 9時半過ぎだったと記憶している。
高橋 事務所の時計を見た記憶があるのか。
大越 はい。
高橋 時計を見た話を初めから弁護士や警察官に話したか。
大越 そこまで詳しいことは話していない。
高橋 あなたの退社した時間が問題になることは、弁護士の話で分かったでしょ。弁護士に具体的な時間を聞かれたでしょ。
大越 はい。
高橋 弁護士の(供述)録取書にも、時計のことは出ていない。初めて出てくるのは、1審の17回公判だ。時計を見たことを初めて弁護士に話したのはいつか。
大越 いつ頃かはちょっと記憶にない。
高橋 残業を終えた後、あなたは女子更衣室で橋向さんと話しましたね。
大越 はい。
高橋 会話にはTさんのことも含まれていたのか。(大越被告は前回の公判で、橋向さんが新人女性社員のTさんを無視してやったと笑っていたことを機に、橋向さんに対する憧れがなくなり、電話をしていたことがばからしくなったと証言した)
大越 はい。
高橋 あなたが更衣室に居た時間は。
大越 5分か10分程度。
高橋 化粧直しはしていないでしょ。
大越 はい。
高橋 原審のあなたの供述では、弁護士から「更衣室での会話で覚えていることはないか」と聞かれ、あなたは特に記憶がないと答えている。実際のあなたの記憶には、Tさんの記憶が残っていたのか。
大越 ありました。
高橋 更衣室で橋向さんと話をし、Tさんのことを聞いて橋向さんを軽蔑するようになりましたね。
大越 はい。
高橋 そういう話をする時間的な余裕はあったのか。
大越 着替えをしながらだったのでありました。
高橋 Tさんのことは、なぜあなたが橋向さんに電話をしなくなったかを考えた時、思い出した会話だったので覚えていたのか。更衣室で橋向さんと会話をしなければ、あなたはその後も橋向さんに電話を掛けるつもりだったということになるのか。
大越 そういうことを頭で考えたことはないが、電話は続いていたかもしれない。
高橋 電話を掛けるのはやめようと、更衣室で意識したことはないんでしょ。
大越 更衣室ではない。書店(恵庭のビブロス)に着いてからいろいろ考えた。
高橋 あなたは更衣室を出て、(従業員の)駐車場に向かい、入り口で橋向さんと別れたのか。
大越 はい。そうです。
高橋 車に乗って、すぐ出発したのか。
大越 はい。
高橋 車の中で考えたことはないか。
大越 ビブロスに行こうと思ったことはあるかもしれない。
高橋 車の中で橋向さんのことを考えたのではないか。
大越 ビブロスの駐車場で考えたと(以前)話をしたと思う。
高橋 あなたはどうして、あれこれと車の中で考えるのか。
大越 通常でも車の中というのは、私にとって居心地の良い場所のひとつだった。その前まで妄想していたことが橋向さんの(Tさんに対する)言葉で打ち消されたため、いろいろ考えた。
高橋 打ち消されれば、もう考える必要がなかったのではないか。
大越 必要性というより、私の性格なので考えた。
高橋 ビブロスを出た時刻は、あなたの記憶として残っているか。
大越 時計を見ていないので、きちんとした記憶はない。
高橋 大体、何時ごろか。
大越 11時過ぎと記憶している。
高橋 ビブロスにはどのくらい居たことになるか。
大越 1時間以上、居たと思う。
高橋 5月16日に弁護士が作った(供述)録取書では、11時過ぎとなっているが、時間ははっきりしていないということか。
大越 きちんとした時間は記憶していない。
高橋 ビブロスで(首や肩に負担のかからないシャープペン)ドクターグリップの芯を見付けたということだが、それを橋向さんに教えようと思ったのか。
大越 はい。
高橋 その気持ちは橋向さんに対する軽蔑と矛盾していないか。
大越 そう思われるかもしれないが、私は教えようと思った。
高橋 あなたは何も買っていないが、実際にビブロスに行ったのか。
大越 はい。
高橋 早く自宅に帰ることは考えなかったか。
大越 これが通常の私の行動なので、考えなかった。
高橋 3月12日から橋向さんに電話を掛け、睡眠時間がなかったのでは。
大越 私自身、もともと遅く寝る。
高橋 あなたは(恵庭)のガソリンキングで給油していますね。
大越 はい。
高橋 その前日も給油している。
大越 はい。
高橋 かなりガソリンを使っていたのではないか。かなり車で走ったのではないか。
大越 かつかつというほどではなかった。(タンクに)4分の1くらいはあったと思う。
高橋 帰宅した時間をあなたは当初、警察官に午後11時30分と言っていた。それが零時過ぎに供述が変わった。
大越 はい。
高橋 記憶違いか。
大越 はい。
高橋 3月15、16日のあなたの時間に関する記憶自体はあいまいか。
大越 私は腕時計を持っていないこともあって、普段から私生活ではあまり時間を気にしない。店で時計を見ることはあっても、記憶することはあまりなかった。
高橋 3月16日、(以前住んでいた木材会社の)社宅には出入りできましたね。
大越 はい。できました。
高橋 (千歳のセイコーマート)ふくみやで購入した灯油は、あなたの車の助手席の足元に置いていたのか。
大越 はい。
高橋 その後、灯油はトランクに移したのか。
大越 はい。
高橋 家に着いてからトランクに移したのか。
大越 はい。
高橋 灯油は社宅の片付けをするのに使う目的か。
大越 はい。
高橋 橋向さんに電話をしている段階で、本当に社宅の片付けを考えていたのか。
大越 はい。本当に考えていました。片付けにすぐ手を付けなかっただけです。
高橋 平成12年の3月はいつ頃、社宅に行ったのか。
大越 日にちまでは覚えていない。
高橋 あなたは事件前、事件後も社宅に行っていますね。
大越 行ってます。
高橋 何回?
大越 回数は覚えていない。家の中まで入らなくても屋根から落ちてくる雪(の状態)を見に行ったこともある。
高橋 社宅に灯油のポリタンクを入れる倉庫はあるか。
大越 物置はあった。
高橋 3月は社宅の物置に入れたか。
大越 雪かきをしていなかったので、物置には行っていないと思う。
高橋 あなたが灯油を補給したことは。
大越 あります。
高橋 引っ越してから補給したことはあるか。
大越 あると思う。
高橋 記憶としてはっきりしないのか。
大越 記憶としてはある。
高橋 原審では記憶がないと話しているのではないか。
大越 そう述べているかもしれないが、思い出すとあるという記憶だ。
高橋 思い出したのはいつ頃か。
大越 詳しい時期まで覚えていない。
高橋 灯油を補給したとすれば、自分で買いに行くのか。
大越 はい。
高橋 あなたは4月29日の警察官調書では、ふくみやで買った灯油をしばらく、自分の車の助手席に置いたと言っていた。
大越 はい。
高橋 なぜ、そう言ったのか。あなたの言っている内容が違う。どちらが本当か。
大越 トランクに積んだことのが本当だ。
高橋 この時、灯油がこぼれていたのはなぜか。
大越 ポリタンクのキャップが空いていたか、傾いていたのだと思う。いつもトランクからポリタンクを取って給油していたため、キャップは確認していない。
高橋 ポリタンクはトランクに積んだままだったのか。
大越 はい。捨てるまで載せていた。
高橋 それはいつ頃までか。
大越 3月の終わりまで。
高橋 あなたはどうして灯油を社宅に持って行かなかったか。
大越 その後、すぐに事件が起きて、3月18日の夕方にはマスコミの方が来たので、社宅に行くことはなかった。
高橋 社宅に行っても良かったのではないか。灯油はこぼれたままにしていたのか。
大越 ポリタンクのキャップを締め直したので、問題ないと思った。灯油を買ったのが3月16日の未明なので、社宅に持っていく余裕がなかった。
高橋 灯油を買った以降、あなたは社宅に行ったんでしょう。なぜ、置いてこなかったのか。
大越 そこまでは覚えていない。
高橋 あなたの車に灯油を積んでいると、マーチの外から灯油は見えなかったのか。
大越 見えません。
高橋 わざわざ灯油をトランクに積んだのか。
大越 トランクは荷物を積むところなので、わざわざということはない。
高橋 3月20日、あなたがイエローハットに行った時、店員はマーチのトランクの灯油を見ていない。本当は積んでいなかったのではないか。
大越 いいえ、積んでいました。
高橋 あなたは灯油を捨てたと言っているが、3月31日のことになるのか。
大越 その前後としか記憶にない。
高橋 あなたは灯油を捨てた後に買い直したのは4月1日だと言っている。捨てた時と買った時は接着している。
大越 接着していると思う。
高橋 あなたは1審の第18回公判で、3月26日に岩内町で法事があり、灯油を捨てたのはその前か後かはわからないと述べている。
大越 はい。
高橋 ところが、今度は3月31日と変わってきている。どうしてなのか。
大越 その時の状況を順番にさかのぼって思い出したためです。
高橋 あなたは灯油を捨てた理由を容疑者として自分の名前が出て怖くなったためと言ってますね。
大越 (勤務先に出入りする運送会社の)運転手に言われて怖くなった。
高橋 あなたは3月31日よりも前に疑われていますね。
大越 はい、そうだったと思います。
高橋 疑われるのが怖いというなら、(喫茶店Tの)Tさんが、警察に電話した3月22日の直後に灯油を捨てるのではないか。
大越 Tさんに言われた時に動揺しているということではなかった。
高橋 灯油は捨てずに社宅で給油すれば良かったのではないか。
大越 後で考えればそうだが、その時は正常に考えることができなかった。
高橋 おかしいでしょ。
大越 はい。
高橋 灯油を捨てた時間帯は。
大越 夜だが、時間帯は覚えていない。
高橋 捨てた場所は覚えているか。
大越 はい。
高橋 灯油は捨てた場所にあったのか。
大越 弁護士からは、捨てた場所に違うポリタンクはあったが、赤いのは出てこなかったと聞いている。
高橋 弁護士に灯油を捨てたことは話したか。
大越 8月か、9月でないかと記憶している。
高橋 橋向さんの携帯電話に非通知で電話したことを話した時期と同じか。
大越 はい。同じです。
高橋 9月26日になるのか。
大越 いまははっきりと覚えていない。
高橋 あなたはポリタンクの指紋を拭いていないのか。
大越 拭いていない。
高橋 疑われていたのになぜ。
大越 そこは私のばかな行動だと思う。
高橋 社宅にあった赤のポリタンクは後から買ったものか。
大越 はいそうです。
高橋 (甲101号証の写真を見せながら)社宅にはこの状態でポリタンクを置いていたんですね。
大越 はい。
高橋 新しく買った灯油をタンクに入れずに置いていた理由は。
大越 社宅に長い時間滞在していないことが理由です。
高橋 4月1日に灯油を買って車に載せ、早来に戻り、その後、灯油をその日の内に社宅に置きに行ったのか。
大越 思い出せません。
高橋 ポリタンクの注ぎ口に油の染みだれが付いていたことは知らないか。
大越 思い出せない。
高橋 灯油の入ったポリタンクの容量は10リットルですね。
大越 はい。
高橋 灯油は買ったままの状態だったのか。
大越 はい。
高橋 中身は全く触っていないか。
大越 はい。
高橋 ポリタンクの中には9.5リットルの灯油しかなかった。覚えていないか。
大越 覚えていない。
高橋 給油した場合、店の人が10リットル以上入れるケースはあっても、少ないことはないはずだ。最初から少なかったということか。
大越 そうだと思う。
高橋 あそこ(社宅)に灯油を置いていたのは警察官に見てもらうためだったのではないか。
大越 いいえ、違います。
高橋 社宅にはコンポも置いてあったでしょ。家にコンポはなかったのか。
大越 置いていません。1台しかありませんでしたから。
高橋 あなたにとって社宅は、生活の中でかなりの時間を過ごす場所だったのではないですか。
大越 かなりの部分では……。利用はしていました。
検察官の被告人質問は、午後5時35分に終了した。
長島裁判長は、次回公判を12月20日午後3時から開くことを告げ、引き続き行われる検察官の被告人質問を「2時間で済みますね」と確認した。







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