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ピストン


 
先日、小・中学校時代を共に過ごした鈴木融の結婚式があった。
ガキの頃、5年間同じクラスだった鈴木は「ピストン」と呼ばれていた。あだ名の由来は、ピストン運動の宣教師だったためだ。
まだ手淫の仕方を知らない男子もいた頃、ピストンは放課後、学校の理科準備室でパンツを脱ぎ、みんなにピストン運動を公開してくれた。
時には準備室の参加者に女子が交じっていることもあった。まともな神経の持ち主ならば、公開せずに後悔するところだが、微動だにせず、ピストン運動を続けたところにピストンのピストンたる存在感があったことは存外に知られていない。
女子の好奇な視線をもろともせず、黙々とピストン運動を続けたピストンに感極まった俺たちが「いいぞ〜ピストン」と賞賛の声を浴びせたのは、いまから四半世紀も前のことだ。
そのピストンは現在、外資系の大手損保会社に勤めている。結婚式では上司や部下が「大変出来のいい男」といった主旨の祝辞を贈った。
ところが出席者の少なからぬ面々は、祝辞を退屈そうに聞いていた。それもそのはずである。
中学生女子の黒い生パンティーを頭から被り、学校の廊下を疾走して教師に怒鳴りつけられたのがピストンだ。真昼間、穴を開けた女子便所の天井から落ち、女子に蹴りを入れられたのもピストンだ。そんな時代を一緒に過ごした連中にしてみれば、祝辞にピストンの武勇伝が含まれていなかったことは当然、つまらなく感じたに違いない。
結婚式当日、新婦と座っていたピストンは、俺に「友人代表のあいさつをしてくれ」と突然頼んできた。
俺は「挨拶をするのはいいが、中学時代のエロガキぶりを話すことが条件だ」と注文を付けた。
俺はピストンが返事に躊躇したら挨拶を断ろうと考えていたが、ピストンは間髪いれずに「ああ」と承諾した。
マイクを握った俺は「新郎新婦の入場の仕方は普通だった。ガキの頃、女子便所の天井から落ちたように、天井から落ちてくるのが筋ではないか。残念だ」と話した。
司会者は新婦に「奥様はそのことをご存知だったのですか」と問い掛けた。新婦は「はい。聞いておりました」と、はにかんだ。
俺は「随分、出来たカミさんだ。これならバツイチのピストンもうまくいくだろう」と感極まった。
もうすぐ39歳になるピストンは、ボクシングを続けている。目標はもちろん、ピストン堀口である。 










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