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恵庭OL殺人事件 控訴審第12回公判 後編 大越被告が改めて無実を主張


 
被告に「あなたは都合の悪いことを隠し、証拠が出てくると認める感じだ」と言い放った裁判長。
平成12年3月17日午前8時20分頃、恵庭市北島の市道わきで、苫小牧市に住むOL・橋向香さん(当時24)の焼死体が発見された。
この事件で逮捕、起訴されたのは、橋向さんの同僚で日本通運の札幌東支店キリンビール千歳工場内構内課に勤務していた大越美奈子被告。15年3月26日、札幌地裁の遠藤和正裁判長は、殺人と死体損壊の罪に問われた被告に対し「被告人単独で被害者を殺害、死体を焼損したことは、合理的な疑いを挟む余地なく認定できる」と断罪、懲役16年の判決を言い渡した。
被告は捜査段階から一貫して無実を主張、1審判決を不服とし、即日、札幌高裁に控訴した。
札幌高裁(長島孝太郎裁判長)は、2月24日午後1時15分から控訴審第12回公判を開いた。後編は裁判官の被告人質問。
右陪席裁判官(以下、右陪席) あなたは(以前交際していた同僚の)板持(貢)さんの携帯電話の(登録されている)番号を盗み見たということだが、板持さんの携帯電話を操作することはできたのか。
大越美奈子被告(以下、大越) はい。
右陪席 板持さんのメーカーはあなたと一緒ですね。
大越 はい。
右陪席 板持さんの車の中でそういう操作はできたのか。
大越 はい。
右陪席 板持さんとあなたの携帯電話の操作方法は大体一緒か。
大越 覚えていません。
右陪席 それまでは板持さんの携帯電話からアドレスを呼び出したことはないですね。
大越 はい。
右陪席 操作は簡単にできましたか。
大越 …はい。手間取った記憶はありません。
右陪席 板持さんが家の中に入った隙にやったことですね。
大越 結構、待たされました。
右陪席 あなたは板持さんがいつ戻ってくるか分からないのに(登録されている番号を)メモした。本当にそんな時間があったのか。
大越 はい。
右陪席 (札幌市清田区の書店)「コーチャンフォー」で板持さんから「時間がほしい」と言われ、あなたはきちんと考えてほしいと言った。
大越 はい。
右陪席 きちんと考えてほしいとは、何を考えてほしかったのか。
大越 …私も反省すべき点は反省するので……きちんと……その時は頭に血が上っていたので、冷静に考えてほしいという気持ちもあった。
右陪席 板持さんとこれからも付き合いたいという気持ちはあったのか。
大越 多少はありました。
右陪席 (平成12年)3月7日19時58分、あなたは板持さんに電話をし、通話が成立している。板持さんが会社に居る時間にどうして携帯に電話したのか。理由として何か思い当たることは。
大越 多分になるが、留守電にメッセージを入れることしか思い付かない。
右陪席 どういうメッセージを入れたのか。
大越 覚えていません。
右陪席 あなたは板持さんが携帯電話をなくしたことを聞いて、留守電にメッセージを入れたことを板持さんに告げたのか。
大越 記憶していません。
右陪席 あなたは橋向さんの携帯に何回も電話している。結局、何のためにしたのか。
大越 分からないです。
右陪席 自分のやったことです。何で分からないのでしょうね。
大越 ……考えたのですが、きちんと言葉にして説明することができません。
右陪席 嫌がらせでなかったことは確かですか。
大越 はい。
右陪席 あなたは前回の弁護人の質問に答え、(恵庭市の書店)ビブロスの店内では橋向さんに電話をしていないと言ったが、間違いないか。
大越 はい。
右陪席 橋向さんに電話をしたのは、車の中からと自宅からだけか。
大越 はい。
右陪席 そういう記憶はあるのに、なぜ橋向さんに電話をしたかは分からないのか。
大越 はい。
右陪席 あなたは(元同僚女性の)Iさんとレストランで食事中に非通知で橋向さんに電話をしている。覚えていないか。
大越 はい。
右陪席 (大越被告の返答を聞いて肩を落としながら)あなたは、(セイコーマート)「ふくみや」で灯油を買って、こぼれていたので(灯油を助手席から)トランクに移した。気付いたのはいつか。
大越 家に着いてからではないかと思う。
右陪席 臭いがするはずだが、家に帰るまで気付かなかったのか。
大越 はい。
右陪席 なぜ(灯油を)すぐに社宅に持っていかなかったのか。
大越 面倒くさかったこともあり、特に…特に理由はありません。
右陪席 あなたはリダイヤル機能を使って橋向さんに電話をしたことが、犯人として疑われる理由にはならないと思っていたのですね。
大越 はい。
右陪席 (4月14日に)任意同行された時も同じだったか。
大越 はい。
右陪席 だったらなぜ、弁護人に電話のことを言わなかったのか。
大越 ……心を開くことができず、言えなかった。
右陪席 疑われると思っていないなら、(電話をかけたことを)隠す理由はない。心を開くことができなかったでは納得できない。
大越 二百何十回もかけていると自分では思っていなかった。そんなにはかけていないが、かけたことはあると言えば良かった。でもその時は数に驚き、疑われるのではという不安があり、余計に言うことができなかった。
右陪席 じゃあ、疑われる理由になると思っていたということか。
大越 「新聞に(電話をかけたことが)載っている」と弁護人から聞かされてので…。携帯電話の件で補足していいですか。Iさんと食事をしていた時間帯は、その日、板持さんから電話をもらうことになっていたので、携帯電話をテーブルに置いていました。
右陪席 3月17日、あなたは出勤後、警察官が来るまで何回外に出たのか。
大越 記憶では1回です。
右陪席 (外に)伝票を取りに行ったことは。
大越 ホチキスの芯を置いて、伝票を取りに行ったので1回です。
右陪席 (3月17日、事務所の)女子休憩室には何回行ったのか。
大越 3回です。
右陪席 どういう場合か。
大越 橋向さんが来ていないかと行った時、(外に出るために)ジャンパーを取りに行く時、昼食を食べる時です。
右陪席 ジャンパーは休憩室に戻していないのか。
大越 警察官が来るまでは戻していません。
右陪席 警察官の事情聴取で(3月16日に恵庭市内のガソリンスタンド)「ガソリンキング」に行ったことは話していないのか。
大越 はい。
右陪席 忘れていた?
大越 はい。
右陪席 初めてのガソリンスタンドに入ったことを翌日には忘れてしまったのか。
大越 はい。
右陪席 ガソリンキングに行ったことは、いつ思い出したのか。
大越 記憶にありません。
右陪席 どのようにして思い出したのかも思い出せないのか。
大越 はい。
右陪席 4月18日の調書の時点では思い出したのか。
大越 はい。
右陪席 事件後、あなたは板持さんと橋向さんが交際をはじめたことを聞いた。仕事中の2人の態度を見て、そうだと思ったということか。
大越 妄想ではなく、現実でした。
右陪席 そういう気持ちだけか。
大越 ほかにもあったかもしれないが、思い出せません。
長島裁判長(以下、長島) あなたが被告人質問を大分受けている中、不自然なことがあります。動機の問題、あなたと板持さん、板持さんと橋向さんのことが問題とされた。それが当審になってあなたは(板持氏と交際する前に付き合っていた男性)Aさんが本命だと言っている。間違いないのですね。
大越 はい。
長島 私がいま言ったこと以外に自分が疑われていると思っていることはありませんか。
大越 ありません。
長島 疑われていることであなたが思い当たることは。弁明することは。
大越 うまく思っていることを説明できないことが大きい。
長島 あなたは都合の悪いことを隠し、証拠が出てくると認める感じだ。
大越 そういうことはありません。
長島 あなたは(平成12年)4月の段階で、3月17日に(元同僚女性の)Sさんから橋向さんの電話番号を聞いて電話をしたが、それ以外は橋向さんにかけていないと言っている。
大越 そこまでは記憶していません。
長島 伊東(秀子)弁護人が作成した接見報告書には、200回以上電話をかけていると報道されたことがあなたに知らされ、あなたはそんなにかけていないと否定している。
大越 はい。
長島 たくさん電話をかけた記憶は蘇らなかったのか。
大越 蘇りませんでした。
長島 それが分かったのは、いつの段階か。
大越 1審の時、セルラーの人が(証人として)説明して…。
長島 あなたは電話のことを9月26日、弁護人に告白していませんか。
大越 はい。理解できたのはセルラーの時です。
長島 相手が出る前に電話を停めれば、記録には残らないと思っていたのか。
大越 はい。
長島 そういう説明をすることはできたはずだ。3月、4月にそういう認識はなかったのか。
大越 ありませんでした。
長島 なぜ、(説明を)できなかったのか。
大越 ……事柄を振り返って、自分のことを考えることができませんでした。
長島 意味が分からない。
大越 ……。
長島 あなたは橋向さんの携帯電話の番号を知っていることを隠していた。(板持氏の携帯電話から橋向さんの番号を)盗み見たことを言いたくなかったと言っている。覚えているか。
大越 はい。
長島 あなたは悪いことをしているためとも言っていた。
大越 はい。
長島 相当、電話をかけていたこと頭にあったのではないか。
大越 はい。
長島 9月26日以前に電話のことを弁護人に話すことはできなかったのか。
大越 はい。
長島 弁護人に(電話以外の)ほかに隠していることはないか、と聞かれたのではないか。
大越 はい。
長島 どの段階で相当数電話をかけたことを認識したのか。
大越 ……。
長島 電話のことを弁護人に話すと、あなたは弁護人が離れると思ったと言っているが、犯人にされるという心配はなかったのか。
大越 起訴された時に犯人にされるという絶望感がありました。
長島 電話のことを弁護人に話し、あなたが事件に関わっていると思われることに嫌な気持ちはなかったのか。
大越 そういう気持ちもありましたが、弁護人が私を犯人と思うとまでは考えていなかった。
長島 自分が犯人ではないことを(自分自身が)知っていれば、一生懸命、弁護人に訴えるのではないか。
大越 そこまで自分で頑張ろうというパワーは沸いてきませんでした。
長島 78号証の6月8日の欄には、弁護人があなたに(午前)4時50分頃、(以前被告が不倫交際していた)Hさんに電話をかけたか、と聞いた時、あなたは寝ていたのでかけていないと話している。
大越 覚えていません。
長島 当時、弁護人から接見を受けた時のあなたの気持ちは。
大越 その時は、多分、早朝ならば寝ていると思っていた。
長島 普通は寝ているが、あなたにとっても(早朝の電話は)異常な行為だ。
大越 日々取り調べで体力の限界だった。さかのぼって考えることはありませんでした。
長島 甲56号証のあなたの携帯電話の通話料金明細通知書の3月12日の欄の上から4番目以降、午前7時44分49秒、47分10秒、8時00分34秒の3つの相手先電話番号は板持さんの自宅ですね。
大越 はい。
長島 その下の2つは板持さんのお兄さんの電話番号ですね。
大越 はい。
長島 板持さんは調書で自宅やお兄さんの携帯電話に7回ほど無言電話があったと述べている。いまのがそれに当たるのか。
大越 はい。そうではないかと思う。
長島 電話は通話状態になって、すぐやめたということか。
大越 はい。
長島 あなたは板持さんに対して、どういう気持ちだったのか。少なくとも3月12日頃は心に残っていたのか。
大越 はい。
長島 その一方で被害者が板持さんと付き合っているかもしれないと確認したかったのか。
大越 はい。
長島 3月16日の出勤時の服装はえんじ色のフリースを着ていたのか。
大越 はい。
長島 それは板持さんからのプレゼントか。
大越 はい。
長島 板持さんとは、ふっ切れていたのではないか。
大越 自分ではそういうつもりでした。
長島 あなたは3月17日の事情聴取でガソリンキングに行ったことを述べていない。4月14日の車の捜索でガソリンキングの伝票が出てきた。これを指摘されて、ガソリンキングのことを話したのか。
大越 (そういうことは)あったかもしれないが、記憶にありません。
長島 あなたは9月26日まで灯油を捨てたことを言わず、使わずに持っていたと話している。
大越 はい。
長島 弁78号証では6月1日の接見で、警察官から買った灯油と押収した灯油が違うと言われていますね。
大越 はい。
長島 あなたも灯油が違うことは知っていましたね。警察官から指摘されてどう思ったのか。
大越 その時にどう思ったかは思い出せません。
長島 あなたは供述録取書でも、灯油を使わず、警察官に押収されたと述べているが、(事実と)違うことは知っていますね。
大越 はい。
長島 それなら心配して弁護人に
大越 (裁判長の質問を途中で遮り)弁護人が来た時は、警察から言われたことを述べるという状態でした。いろいろ考える力がなかった。
長島 前回、あなたは警察官から具体的な資料を見せられたことがないと言っている。
大越 はい。
長島 警察官は当てずっぽで言わないと思います。灯油が(最初に買ったものと)違うのではないか、と聞かれたのではないか。
大越 だから弁護士に(灯油を買い直したことを)言いました。
長島 その時、買い直したことがばれたとは思わなかったか。
大越 思考能力がありませんでした。
長島 マスコミに灯油の写真を撮られたことはないですか。
大越 マスコミの人とは話したことがありません。
長島 灯油を捨てた日は、あなたが(会社に出入りするトラック)ドライバーから(お前が犯人だったのか、と)言われた日か、次の日で間違いないか。
大越 はい。
長島 それは岩内で法事があった日の前後か分からないか。
大越 はい。
長島 あなたは最後に灯油を捨てた日を火山(有珠山)が爆発した3月31日だと話している。
大越 はじめは混乱していました。少しずつ思い出していく中で…。
長島 灯油を捨てることを誰かに相談したことはありませんでしたか。
大越 ないです。
長島 3月22日に(被告が通っていた早来町の喫茶店Tの)Tさんから(犯人として疑われているとの)アドバイスを受けているが、Tさんに助けを求めることがあっても良かったのではないか。
大越 理由はないです。
長島 会社の帰りに灯油を捨てた場所は分かっていますね。
大越 はい。
長島 灯油を持っていた方が無実を晴らすことになると思って買い直すまでどのくらいの時間があったのか。
大越 そんなに経ってはいません。捨てた後に捨てたものがないと大変だと思いました。
長島 (捨てた灯油を)探しに行っているのかい。
大越 いいえ。
長島 灯油は流したのでなく、タンクごと捨てたのだから買い直さず、探しに行くのが普通ではないか。
大越 わざわざではなく、札幌から帰る途中で買いました。
長島 あなたは灯油を捨てた場所を大体覚えていると話しているので、探しに行かなかった理由がよく分からない。
大越 そういう風には考えませんでした。
長島 Tさんに助けを求めることはできたはずだ。
大越 迷惑を掛けたくありませんでした。
長島 あなたの話していることには説明のつかないことがある。僕たちに分かることを説明できないか、後でばれることを言ってしまっている。説明してほしい。
秋山賢三弁護士(以下、秋山) あなたの携帯電話の非通知のことだが、携帯を買った時はどちらにしていたのか。
大越 覚えていません。
秋山 平成12年の3月頃、わざわざ非通知にした覚えはありますか。
大越 覚えていません。
秋山 非通知に変えた覚えはないのですね。
大越 いつかは覚えていません。
秋山 あなたはリダイヤルで電話をしたことが犯人と疑われることとは考えていなかったと言っている。正常呼38回、課金対象15回は分かっていますね。(携帯電話を操作した)指先の回数は多いと思うが、記録に残っているとは思わなかったのですね。
大越 はい。
秋山 平成12年3月頃の認識は。
大越 ありません。
秋山 あなたの頭の中では大したことはないと思っていたのですか。
大越 はい。
秋山 あなたは何のために電話をかけたかよく分からないと話しているが、当時の心理状態は分からないのか。
大越 はい。
秋山 隠しているのではないのですか。
大越 そのようなことはしていません。
秋山 あなたは橋向さんに電話をしたり、灯油を捨てたり、三角関係を疑われて、起訴されている。本件はあなたが人間を殺害し、遺体を燃やして起訴された。分かっていますね。
大越 はい。
伊東 自分の言葉で言えることを言ってみませんか。最後の機会なのですよ。
大越 裁判長がさきほど言っていた私の理解できない部分は、弁護人と自分の心を見つめ直してきました。それでもきちんと説明することができません。言葉が足りない自分の責任もあると思うが、きちんと考えることができないばかな女だということを分かってほしい。疑わしいからといって、このような事件は絶対にやっていません。分かってください。
伊東 あなたの生い立ちも述べた方がいいのではないですか。お母さんはタクシーに乗っても私の事務所に来れない。そういうことを言ってみたらどうですか。ハートを裁判官に伝えなさい。ばかとか、知能の問題ではないんです。
大越 人に頼れず、甘えることもできずにずっと過ごしてきたので、裁判長がTさんに相談できなかったのか、と聞かれたようにはできませんでした。
伊東 裁判長に一言言ってください。
大越 私はやっていません。
検察官 非通知、通知(の切り替え)は自分でできますね。
大越 はい。
検察官 3月12日以前は、携帯電話を通知にしていましたね。
大越 その時々だと思います。
午後4時45分、3時間半に及んだ被告人質問は終了した。
長島裁判長は「被告人立ってください」と指示し、「次回は弁護人、検察官の証拠の整理し、双方の弁論を行います。その上で多分、判決の期日を言うことになると思います。次回の公判は5月24日午後1時30分からです」と被告に告げた。







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