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「しちゅれいしますゅ」


 
ざっと2年前、俺はこのコーナーに「ちゅぎは大通」を書いた。
「ちゅぎは大通」は、札幌市営地下鉄東西線で通勤する男の知的障害者が車掌のアナウンス「次は大通」を真似て発する言葉だ。
以来、俺はこの年齢不詳の知的障害者と会うことはなかった。
ようやく目にしたのが2月22日。
午前8時15分、東西線「南郷7丁目」の駅からこの知的障害者は地下鉄に乗った。青年は「しちゅれいしますゅ」(失礼します)、「しちゅれいしますゅ」(失礼します)と人込みをかき分けて、満員電車の車両中央部まで進む。
年齢不詳の青年の身長は、前回会った時と同じく俺の首ほどの高さ。1メートル55ぐらいだ。身長は伸びておらず、成長が止まったことを考えると、年齢は20歳代半ばだろうか。
青年は前回同様、車内で「ちゅぎは東札幌。降りぎゅちは左側に変わります」「大変危険でちゅので、駆け込み乗車はおやめください」とアナウンス。
この日の車内状況は、2年前と異なっていた。時間が早いため、超満員なのだ。車両の両脇には椅子があり、その間の通路部分には体を動かせないほどの乗客が立っている。青年の前後左右もびっしりと通勤客。
青年を囲んだその空間は相も変わらず、不気味な様相を呈している。
青年に背後を取られ、吊り革につかまる女が2人。
女2人は真後ろから発する「ちゅぎはバスセンター前」の声に動じることなく、何事も起こっていないかのごとく文庫本を読んでいた。
ところがどちらの女もページをめくらない。しかも、そのうちの1人が読んでいるは、ペットの飼育方法を解説したイラスト満載の文庫本である。本を読めずに神経を背後に集中させられていたことは明らかだった。
もちろん、ほかの乗客も大差はない。嫌な顔をすることもなけらば、うるさいと注意するわけでもない。
何より、間近にある青年の顔をを見ようともしない。耳をそばだてることさえない。
周囲から無視され続けても、「ちゅぎは……」とアナウンスを続ける青年。あたかも何も見なかったかのように振る舞う乗客たち。
たった1人の青年が満員電車を支配した瞬間だった。 






関連サイト

「ちゅぎは大通」
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnContents?news_genre=23&news_cd=N20021111011&hi=22200502






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