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恵庭OL殺人事件 控訴趣意要約書 vol.2


04月22日(金) 17時10分
文:東  写真:東 



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ガソリンキング恵庭店
 当初、検察官が証言を拒んだ「2台の車」の目撃者。

 平成15年3月26日、札幌地裁(遠藤和正裁判長)は、恵庭OL殺人事件の容疑者として逮捕された大越美奈子被告に懲役16年の判決を言い渡した。

 被告は捜査段階から一貫して無実を主張、即日、札幌高裁に控訴した。控訴審は札幌高裁(長島孝太郎裁判長)で開かれており、次回5月24日の公判で結審する。

 以下、弁護団が昨年3月、札幌高裁に提出した控訴趣意要約書のvol.2。

 ◇                         ◇

 第2 本件における初動捜査の欠陥
 1.「見込み捜査」から出発
 北海道警察は、平成12年3月17日の事件発覚当日、被害者の携帯電話の発着信記録を押収した。その結果、被害者と最後に別れた被告人が、事件当日の前日まで多数回にわたり被害者の携帯電話に架電していた事実を把握したことから、3月18日以降、被告人を「最有力容疑者」と断定し、被告人の行動確認など、被告人に的を絞った捜査が開始された。

 そのため、捜査機関は、通常の殺人事件で当然に行われるべき基本的な初動捜査を行うことなく、事件発覚当日「事件現場に停車していた2台の車」という重要な情報を得ていたにもかかわらず、あえて無視ないしは軽視し、「本件は男女の三角関係のもつれによる怨恨殺人であり、被告人が犯人である」との先入観に固執したのである。そのために、本件捜査はその当初から、中立公正な立場に立って被害者の交友関係を広く洗うという捜査の常道を踏み外し、専ら被告人大越美奈子の身辺、周辺捜査のみに終始することとなったのである。このような初動捜査の欠陥は、以下のような捜査経過や捜査結果の杜撰さに集中的に表れている。

 2.現場の足跡の捜査
 平成12年3月17日、捜査官は本件遺体発見現場の「足跡」を発見し、直ちに採取した。ところが、現場足跡を「対照依頼」に出したのは6月8日であり、その対照結果が出たのは事件から3ヶ月後の6月15日であった。しかも対照結果によれば、被告人の足跡は検出されなかった。そのために検察官は、当初、現場足跡の捜査報告書の存在をひた隠しにし、弁護人らの再三にわたる証拠開示請求や裁判官の勧告があったためにはじめて第7回公判で法廷に提出され、被告人の足跡が現場に存在しなかった事実がようやく明らかにされた。

 3.現場の「タイヤ痕」の捜査
 (1)捜査機関は、3月17日、現場から「タイヤ痕」の採取を行っている。ところが、タイヤ痕の「対照依頼」を行ったのは6月8日であり、事件から3ヶ月後の6月16日に「対照結果」が出ているが、現場から被告人のタイヤ痕は検出されていない。タイヤ痕の捜査結果によると、現場に立ち入ったことが判明している幼稚園バス、近所の主婦、消防署、警察のタイヤ跡以外に、大型車・普通車の2〜3種のタイヤ跡が残存している。これらのタイヤ痕が犯人のものである蓋然性が非常に高いのにもかかわらず、検察官によれば、そのタイヤ痕の捜査を行っていないというのである。前記足跡の場合と同様、上記タイヤ痕の捜査結果についても、弁護人の証拠開示請求後、初めて法廷に顕出されたものである。

 ちなみに、犯行時刻頃、現場近くに20分以上停車していた「2台の車」のタイヤ痕の捜査は、本件にとって極めて重要である筈であるが、当該捜査を行っていないとの理由で、何故か捜査報告書が証拠として提出されていない。

 4.被害者・被告人車両から採取した「指掌紋」の捜査
 被害者車両に残された「指掌紋」も、真犯人と本件犯行とを結び付ける重要な証拠である。そのために捜査機関は、3月17日、被害者車両の運転席ドアや助手席シートベルトなどから「37個の指掌紋」を採取している。

 ところが、この指掌紋の「対照依頼」をしたのは、事件から約1ヶ月経過後の4月14日であり、しかも29個の指紋しか「対照依頼」に出されてはおらず「8個の指紋」は捜査からいつのまにか消されていた。この「8個の指紋」の中に犯人の指紋が含まれている可能性があるのである。

 さらに、指紋照合対象者は「日通関係者57名」だけであり、指掌紋対照結果報告書が作成されたのは7月31日であるが、この報告書によれば、被告人の指掌紋はどこからも検出されていない。被害者車両は、JR長都駅前に放置されていたのであるから、犯人は被害者車両に同乗ないし運転して車を移動させたものと考えられる。もし仮に、被告人が犯人だとするならば、当然、被告人の指掌紋が被害者車両内から検出される筈である。

 5.被害者の携帯電話・短靴の「指掌紋」の捜査
 被害者の携帯電話からは、一切の指掌紋が検出されなかったとされている。

 しかし、ストラップの部分等を含め、全く指掌紋が検出されなかったこと自体が甚だ不可解千万である。しかも、そのような報告書が作成されたのは、事件から約3ヶ月経過後の6月12日付けとなっている。

 また、死体発見現場には、右足用短靴は左足真下にあって焼損しており、左足用短靴が左足から35センチメートル位離れたところに放置され、焼損されないまま遺留されていた。捜査機関は、3月17日、その短靴を採取しているが、短靴の指掌紋の「対照結果」は法廷に顕出されてはいない。弁護人が証拠開示請求したのにもかかわらず、検察官がこれを拒否したためである。これは、被告人の指掌紋がその短靴から検出されなかったためと考えられる。

 6.杜撰な「アリバイ捜査」
 捜査機関は、平成12年3月24日、本件犯行は「キリンビール工場関係者」によるものと判断した。にもかかわらず、アリバイ捜査は、日通関係者51名に対してしか行われていない。しかも、その「アリバイ捜査」を現実に行ったのは、被告人逮捕後、事件から80日以上も経過した6月9日のことである。

 さらに当時、作成されたアリバイ捜査の報告書には、明らかな虚偽記載が13名分にも及んでいたことが原審公判廷で明らかにされている。虚偽記載の内容は、そもそもアリバイの裏付け捜査を行っていないのにもかかわらず、裏付け捜査をしたことにした、というもので誠に驚くべき虚偽記載であった。

 弁護人らは、捜査機関の「アリバイ捜査」の内容に疑義を抱き、甲170号証を証拠として請求したところ、検察官は、急遽、同号証の証拠調請求を撤回し、平成12年11月22日付け作成の189号証を新たに証拠請求した。しかしM・S証人(※1)は、甲189号証にも虚偽記載があったことを、原審法廷において明らかにしている。

 7.被害者のロッカーキーの捜索差押の違法と不合理性
 (1)ロッカーキー発見時の不自然さ
 捜査機関は、4月14日、千歳警察署・車庫内に鍵をかけないで放置されていた被告人車両を検証した際、被告人車両のグローブボックス内から本件鍵を発見し、それが配車センター2階女子休憩室内ロッカーの鍵と酷似していたとして、法的根拠もないのに、この鍵を千歳署内から持ち出し、日本通運キリンビール事業所の被害者ロッカーの鍵穴と照合したところ、一致したので、差押許可状発布を得て本件鍵を差し押さえた。

 このとき捜査機関には、ロッカーキーをすぐに照合しなければならない緊急の必要性は全くなく、しかも当日、被告人は千歳署内にいたのに被告人の同意も得ず、事前の令状請求を行うこともなく、勝手に千歳署内から持ち出すという違法行為を行ったのである。

 ところで、捜査機関は、何故に、この時、このような神業に近い判断をしたのだろうか。何故に違法行為と知りながら、外部に持ち出して照合する必要性があったのだろうか。

 このことを冷静に考察してみるとき、本件鍵が被告人車両のグローブボックス内から発見されたこと自体が、実は極めて不自然であることに、我々は気付かざるを得ないのである。

 (2)ロッカーキーの入手及び投入の容易さ
 被害者のロッカーは、日常的に施錠されてはおらず、本件鍵は被害者のロッカーの棚に放置されていた可能性が高い。したがって、本件ロッカーを捜索した際、捜査官は鍵を容易に発見することが出来たし、入手も可能であった。

 警察は、その後の捜査においても、被告人と本件犯行を結びつける物証が出てこないため、被告人と被害者を結びつける唯一の物証を作出するため、既に入手していた本件鍵を故意に被告人車両のグローブボックス内に入れた可能性が高い。なぜなら、被告人車両は、4月14日の差押後、千歳署内の駐車場に開鍵された状態で放置されており、捜査官が被告人車両内に本件鍵を入れることは、いとも容易なことであった。

 (3)捜査報告書の不存在の不可解性
 検察官は、本件鍵がグローブボックス内のどこの位置に、どのような状況で置かれていたかに関する捜査報告書は存在しないと主張している。

 しかし、これは非常に不可思議なことである。

 本件において、ロッカーキーは被告人と被害者とを結びつける唯一の物証である。そのような重要な物証が、グローブボックス内のどこの場所に、どのような状態で置かれていたかについて、1枚の写真もなく、1行の説明もないという事実は、ロッカーキーの発見状況それ自体に、実は非常に後ろ暗いところがあったからとしか考えられない。

 しかも、「被害者のロッカーキーと酷似している」という咄嗟の判断は、同じ物をそれ以前に目にしている者でなければ到底できない判断である。

 4月14日朝、警察は、わざわざ多数のマスコミの面前で被告人を会社前から任意同行し、その被告人の姿を大々的に報道させ、「被告人が犯人である」という世論の動きを作り出そうとしていた。ところが当時、被告人と被害者を結びつける証拠は皆無であった。そのため、警察は、唯一の物証として、被告人車両内からロッカーキーが発見されたことを強調し、ことさらに印象づける必要があり、そのためにあえて違法な行動をとったのである。

 そもそも、被告人が真犯人であるのならば、被害者の他の所持品と共に本件鍵を焼いている筈である。通常、自分が犯人であることを裏付ける決定的証拠を、わざわざ事件発生の約1ヶ月後まで保管し続ける者は居ない。

 以上のとおり、本件ロッカーキーの発見状況には、不自然かつ非合理なことが多く、捜査官による証拠の捏造が行われたことは明白である。

 8.現場付近の「2台の車」に関する捜査の欠落
 (1)3月16日夜、現場近くに居住する○○○○証人(※2)は、午後11時05分の時刻を柱時計で確認した後、娘をJR○○駅まで迎えに行くために自動車を運転して自宅を出発し、南8号線と西8号線の交差点やや東側に「2台の車」が止まっているのを目撃した。同人は、7〜8名の警察官に対し、3月17日「1台はボンゴ車で、もう1台は小さめの乗用車であり、娘をJR○○駅で迎えてから同じ地点を通過した午後11時20分頃も、その2台の車両はまだ停車していて、乗用車の上の方に赤い光が見えた」旨供述しており、その旨の供述調書も存在する。

 (2)犯行時刻について、被告人逮捕の際の逮捕状では、犯行時刻は午後11時15分頃と記載されている。したがって○○○○氏の証言は、その犯行時刻と合致している。「2台の車」の搭乗者は、現場の炎が十分に見える視認距離範囲内で、約20分間停止して本件犯行の一部始終を見ていたことになる。となれば「2台の車」の存在は、本件が「単独犯」か「共犯」かに関する非常に重要な証拠となるはずである。

 ところが、このような重要な情報であるのにもかかわらず、検察官は、「2台の車」に関する捜査報告書は存在しないと言い切っている。検察官は、原審において、○○○○証人の証人尋問に強く反対し、裁判長が同人の供述調書の開示と証人尋問を決定したところ、異議の申立を行って徹底的にこれを争い、同人の証言を頑強に拒んだ経過がある。

 検察官は、何故、○○○○証人の尋問に対してこれほどまでに頑固に反対し、真実が明らかになることを恐れたのだろうか。

 上記一連の検察官の訴訟行為は「2台の車」の存在が明らかになることによって、被告人の「単独犯行説」が否定され、「共同犯行説」が強く推認されること、すなわち、被告人に対して無罪判決がなされることを恐れたからとしか考えられない。

 9.被告人の「行動確認捜査」
 (1)捜査機関は、平成12年3月18日、被告人に対して「行動確認捜査」を開始した。当時、被害者のハンドバックが発見されていなかったため、捜査機関は、被告人が退社する午後8時頃から翌日の午前8時30分頃まで、常時、被告人を尾行し、その行動を監視・確認し続けた。それは、4月14日、被告人が任意同行されるまで続いたが、被告人には何ら特異な行動は認められなかった。

 (2)ところが、4月15日、早来町町民の森において、被害者の所持品らしきものの焼損物が発見された。このことから、捜査官は「行動確認捜査は、2名の警察官が、1・2時間間隔で被告人の車両を確認していたに過ぎないから、その合間に被告人が町民の森に被害者の所持品を焼くために出かけることは可能であった」旨公判廷で証言するに至った。

 もし、事実が警察官らの証言のとおりであったとするならば、一体、警察は何というマヌケな「行動確認捜査」をやっていたのかと呆れるばかりである。

(3)本事件の重大性と当時の世論の注目度を考えるならば、当該「行動確認捜査」が、警察官が証言するようなマヌケな実態であったことは、到底、考えられない。4月15日、早来町の町民の森で、被害者の所持品が焼かれた事実が発見されたため、捜査機関は「被告人が監視の目をかいくぐって現地に行き、被害者の所持品を焼損することは十分に可能であった」などと、誠に恥さらしの不自然・不合理な証言をせざるを得なくなったのである。

 10.被害者の携帯電話の発着信記録の差押手続の違法性
 (1)捜査機関は、3月17日、北海道セルラー電話株式会社札幌支店(以下単に「セルラー」という)に対し、「被害者が所有している携帯電話の位置情報と3月15日から3月17日午後0時までの着信情報」を記載した書面を差押物とする捜索差押処分を行った。

 (2)本来、「物」として上記書面を差押えるのであれば、当然、原簿を押収するべきである。本件においては、東京料金センターやBSCから検索されたデータをプリントアウトしたものが原簿あるいはそれに近い。

 しかし、書面作成者であるA・M氏は、プリントアウトした原簿に近い書面をわざわざ廃棄し、プリントアウトしたものに使用基地局やセクター、通話状態を手作業で書き加えて作成した合成書面を警察に提出している。警察は、それを「差押物」として差押えたが、これは、原簿または原簿を添付した書面で当該書面の記載内容の正確性の追試が不可能なものである。本来、裁判の上では、このような書面についての証拠能力は認められないのが本則である。

 11.「ガソリンキング」のビデオテープについて
 (1)本件ビデオテープは、「ガソリンキング」が監視カメラで来訪する顧客を撮影したものであり、平成12年3月16日午後11時30分頃、ガソリンを入れてきた被告人車両が撮影されている重大な証拠である。その上、当該ビデオテープには時刻が表示されており、被告人車両が撮影された時の表示されている時刻は、一本が23時28分50秒頃、もう一本が23時30分20秒頃である。

 (2)原判決は、被告人が被害者を殺害し、遺体を焼損した時刻を23時05分頃とし、現場を離れたのが23時10分頃と認定している。このビデオテープは、発見現場と「ガソリンキング」の間は、夏場でも25分以上かかり、被告人が、当該時刻に「ガソリンキング」に来ることは、時間的にみても不可能であることを示す重大な証拠である。

 (3)また、当ビデオは、本件犯行直後の被告人車両を撮影したものとなるが、被告人車両は極めて自然に来訪し、「ガソリンキング」の店員の対応も不自然さが全くない。これは、被告人には被害者との闘争の痕跡や油類の臭等がなかったことを示すものである。

 (4)このように、証拠物としては第1級の証拠価値のものであるのに、押収していた捜査機関はその存在を明らかにせず、証拠として提出しようとしなかった。それは、捜査機関においても、時刻の点から当該ビデオテープが被告人を無罪とする決定的証拠になると判断したからに他ならない。弁護人らは、その存在を全く知らず、原審において取調べ請求することが不可能であった。本件ビデオテープは、被告人が犯人でないことを明らかにするものである。

 ◇                         ◇

(※1)M・S証人は、千歳警察署刑事一課長として第34回公判で供述。

(※2)遺体発見現場近くで2台の車を目撃した○○○○証人は、第40回公判に出廷、裁判所の了解を得て名前を伏せて証言したため、○○○○とした。







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