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当世缶詰事情 前編 中高年層に人気の「鯨」


11月28日(月) 11時45分
 



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さまざまな缶詰食品が並ぶショッピングセンター。手頃な価格なのは消費者にとってありがたいことではあるが、売る側の苦労がにじむ
 忘れられない味が潜在需要に。

 飽食の時代といわれる現代。しかし、昔から食べてきたものへの愛着は忘れがたいものがある。会社帰り、百貨店の缶詰売り場にふらりと寄ってみたサラリーマン。「たまには缶詰を肴(さかな)にしてみるか」と、今夜の酒の供を探す。そして、ちょっと懐かしい絵柄の缶詰を手に取った。缶詰食品をめぐる最近の事情を追った。

 物を売ることが難しい時代になっている。食品業界も然(しか)り。景気の底上げが実感できない今日も、新しい食の流行を追い求める消費者の欲求はとどまることを知らない。新商品が次々と投入され、華やかさに満ちたショッピングセンターの売り場の影で、商品ブランドの短命化が急速に進んでいる。長く売れ続け定番商品として親しまれる食品が減っているのだ。

 移り変わりの激しい食品市場で、缶詰食品の存在感が薄らいでいる。ショッピングセンターをゆっくりと見て回ると実感できるだろう。レトルト食品など、より便利さを追求したカテゴリが生まれ、定着したことがその最大の原因といわれる。

 そんな缶詰食品の中で、根強い人気を誇る超ロングセラー商品がある。その一つが鯨(くじら)の缶詰だ。極洋の「鯨大和煮」は40年以上の歴史を刻んでいるという長寿商品で、最近になって人気が静かに浮上している。

 ある年代から上の世代は郷愁をも覚えるであろう、鯨の赤肉を生姜しょうゆのタレに漬け込んだあの味だ。日本の商業捕鯨が中止され、一時期は食卓から縁遠い存在になった鯨肉が、再び身近なものになってきた。

 「数量でみると道内で鯨の缶詰は、5年前と比べると約2倍に増えています」と極洋札幌支社の加藤修札幌営業所長は話す。缶詰の需要が伸びている背景としては、調査捕鯨枠が拡大されるなどして、以前と比べ鯨肉が一般消費者の目に触れる機会が増えてきたことがあげられるだろう。同社では鯨の缶詰の潜在的な需要が高い点に着目し、量販店などへの地道なセールス活動を行ってきた。

 鯨の缶詰の購買層は、かつて鯨の肉を味わった世代が多いという。「鯨の缶詰のお客様で大半を占めるのは40代後半くらいから60代までの年代で、男性の方が比率的には多いです」と加藤所長。中高年世代の圧倒的な支持を受けているのがわかる。

 さらに道内では地域によって売れ行きが大きく異なるという点も興味深い。加藤所長は「数量的に一番出るのはやはり札幌圏ですが、函館での鯨の缶詰の売り上げは突出しています。それと比べ、旭川や帯広などの内陸部ではあまり人気がありません」と説明する。

 函館といえば捕鯨基地があり、鯨とはゆかりの深い地域。そうした背景をもとに今も鯨の缶詰は売れ続けている。食べ物の嗜好は過去の記憶と密接に結びついているというが、函館での鯨肉の根強い人気は、地域ならではの食材とそこに暮らす人々の食の経験が織り成す「地産地消」の営みがあったからこそ生まれたものだといえる。

 食と健康の関わりが非常に高い関心を呼ぶ現代。鯨肉にもさまざまなメリットがあるという。加藤所長は鯨の魅力を「高たんぱくで低カロリー。そして、ほかの畜産製品と比べ鯨肉はアレルギーを引き起こしにくいという特性も認められており、健康志向にもかなった食品なのです」と強調する。過去には青魚のDHA効果が注目され、イワシやサバなどの缶詰が売れる現象が起きたが、鯨の缶詰も新たな視点で脚光を浴びる機会が今後あるかもしれない。

 以下、後編に続く。

■長谷川隆(はせがわ たかし) 札幌を中心に活動するフリーライター。






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極洋の「鯨須の子大和煮」(左)は、脂肪と肉が縞状になった上級部位の「須の子」を缶詰にした高級品。「鯨大和煮」(右)は息の長い人気を持つ



関連サイト

極洋
http://www.kyokuyo.co.jp/






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