消費者金融や商工ローンからの借入れに関わる法改正が進められている。マスコミで大きく取り上げられ、例えば、ネット上、asahi.comでは、2006年02月22日、次のような見出しの記事を登載している。
「灰色金利」撤廃へ法改正 債務者救済図る 金融庁
政治家は、世の評判に敏感なもので、超党派の議員連盟「金融システム整備による経済活性化を推進する議員連盟」が近く発足するのだそうだ。「社会問題化しているグレーゾーン(灰色)金利や、過剰貸し付けの防止策などについて、与野党の垣根を越えて協議し、具体策を打ち出す構え」とのことである(NIKKEI NET 2006年03月02日)。
「灰色金利」という言葉が生まれた背景を理解してもらうために、現在の金利に関する法規制を復習すると次のとおりだ。
ア 『利息制限法』という法律で制限利率が定められている。
a 元本が10万円未満の場合 年2割
b 元本が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
c 元本が100万円以上の場合 年1割5分
この制限利率を超えて支払った部分の契約は無効となる。つまり、超えた部分は、利息の支払いではなく、元金を支払ったものとして取り扱われ、借りた方に有利に計算されることになる。
消費者金融や商工ローンからの借入れは、この制限利率を大幅に超えて設定されているから、『利息制限法』に基づいて計算し直すと(「引き直し計算」と呼ばれている)、元金は、消費者金融などが示す金額より少ない。大幅に減っているばかりか、元金返済が既に完了しており、その後の支払は払い過ぎとなっている場合がある。
払い過ぎの返還を求めて裁判を起こした場合、「過払金返還請求事件」などと呼ばれる。私が提起した事件は、
BNNでもご紹介頂いている。
イ ところが、利息制限法の制限利息を超えたからといってすべて刑罰の対象となるわけではない。略称『出資法』という法律(「出資の受入れ、預か金及び金利等の取締まりに関する法律」というのがフルネーム)があって、貸金業者については、金利29.2%を超えて契約した場合に刑罰の対象となることを定めている。
ウ このように、貸金業者が利息制限法を超えて金利をとっても、刑事罰に問われない金利の幅がある。「グレーゾーン金利」とか、「灰色金利」とか呼ばれている。そして、「灰色」とか「グレーゾーン」と呼ばれるのはもう一つ理由がある。略称『貸金業規制法』(フルネームは、「貸金業の規制等に関する法律」)という法律が、『利息制限法』の定める制限利率を超えて支払われた場合でも、有効と扱える例外を定めているのだ。「みなし弁済」制度と呼ばれている。
このあたりになってくると、読者の頭の中は、ぐちゃぐちゃであろう。出来の悪いぱずるのようだ。
ただ、今回はこの辺までは、理解して置いて欲しい。
冒頭で紹介した、金融庁が、「灰色金利」を撤廃する方向で動いている、ということは、この複雑さを単純化しようとしていることにほかならない。
しかし、それは、単純に「債務者救済」という図式となるのかどうかがまさに問題である。
弁護士が債務整理の依頼を受け、消費者金融や商工ローンに対して利息制限法による引き直し計算を求めると、かつては、この「みなし弁済」を主張してくるのが常套手段であったが、現在では、司法の場で一定の解決が図られてきたことから、個別的救済は実現しつつある。
私が、前記のように、敢えて、
過払金返還請求事件を提起したのは、その消費者金融が、現在の時流を余りにも無視する態度を取りつづけたからだ。
実際、前記のasahi.comによると、「武富士やアイフルなど消費者金融大手4社が返還に応じた額が、昨年4〜12月で358億円に達したことがわかった」とのことである(2006年02月26日)。
次回は、このあたりから話を進めていくことにしたい。