最近、DVDの機械の調子が悪く、観るものすべて40分あたりで止まってしまう辻がお伝えします。
先日、2月18日に札幌市中央区の「札幌市民会館」で行われた
佐野元春のライヴに行ってきました。いや、もう子供の頃から好きなんですよ、佐野元春。
会場を見渡せば、おそらく僕と同じように少年、少女時代からのファンと思われる中年男女がほとんどを占め、若い人は極端に若くてまだ小学校にも入学してないようなお子様ばかり。多分、お父さんお母さんに無理やり付き合わされているのでしょう。
現在もツアー続行中でネタバレするといけないので内容の詳細は申しませんが、実に気持ちの入った3時間の熱演。これまでも彼の札幌でのライブにはほとんど足を運んでいますが、最近の札幌では珍しいくらいの盛り上がりでした。
ライブの魅力というのはアーティストそれぞれで、中には曲の合間のトークが楽しい人、手の込んだ舞台装置や演出で楽しませてくれる人、華やかな衣装やダンスで見せるステージを堪能できる人など様々ですが、佐野元春の場合は音楽そのものが凄い。
バンドとの息の合った、それでいてスリリングな緊張感や突発的なアドリヴも楽しめる演奏が、CDで聴く時とは違った楽しみを与えてくれます。
3時間の間にほとんどトークもなく、次から次へとそうした演奏が繰り広げられる中で、会場にはちょっと他では感じられないほどのピースフルでエネルギッシュな空気が充満してきます。
よく言われる「音楽でのコミュニケーション」というのは、こういうことなんだと実感できるライブです。
ツアー中でも、その日によって曲目やアレンジを変えてしまうことで有名な彼のステージ。この日も、ステージ上でメンバーと急遽打ち合わせをして、おそらく会場の空気にあわせて曲順を入れ替えるなど、その時その場所でしか味わえない、二度と同じステージはあり得ない佐野元春のライブの魅力を楽しめました。
往年のヒット曲、ファンに人気の曲をふんだんに演奏した今回のライブだが、不思議と「懐メロ」のようには響きません。
曲によっては原型をとどめていないほどアレンジを変えたものもあり、毎回昔を懐かしむためにではなく、昔の曲を今聴いても懐古趣味にならないような工夫がなされて、またそんな意識で演奏されているせいでしょう。
もちろん、20年前の曲が演奏されれば僕のような昔からのファンは当然、その曲が発表された当時の事を思い出したりもするけれど、「昔に戻る」という感覚はありません。その曲を聴いてから随分と年を取って、良いことも悪いこともいろいろと経験を重ねた今の自分を肯定して祝福しているような気持ちになれます。
往年の名曲を聴かせて、観客に「今の自分」を楽しませるライブなんていうのは、キャリアを積み重ねて、なおかつそのキャリアに甘んじることなく常に新鮮な気持ちでステージに取り組んでいる人だからこそできるのだと思います。
改めて、佐野元春という稀有なアーティストの魅力を確認できた夜でした。
もし、このツアーのDVDが発売されるなら、それまでには我が家のプレイヤーを何とか修理し、全編スムーズに観たいなと思っている辻がお伝えしました。
■辻 正仁(つじ まさひと) 1966年生まれ。 中学生の頃、ビートルズに憧れ自らも作詞作曲を始める。大学時代は、バンド活動と友人の映画作りの手伝いに没頭した挙句、単位の修得を失念。北海道のCDショップチェーン「玉光堂」の社員として10数年間勤めた後、2004年退社。現在は自らの音楽活動、執筆活動に勤しむあまり、生計を立てるのを忘れがち。
FM新さっぽろ「海月屋本舗(毎週月曜18時)」のパーソナリティ、ミュージックショップ「音楽処」の準スタッフ等々、様々な分野で活動中。自主制作レーベル「海月屋(くらげや)」主宰。