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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第21回


03月02日(木) 00時00分
文:惠谷 治 



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金日成の最後の戦闘現場と周辺図。日本人が経営していた伐採場は、現在の楊樹溝林場と推定(原図製作・惠谷治、デザイン・鍵本博子)
 第1部 金正日の出生の秘密を暴く

 第2章 ソ連逃避行の途上で父母は電撃結婚

 満洲における金日成の最後の戦闘

 安図縣と和龍縣の県境に近い大馬鹿溝と紅旗河の2本の川が合流する地点付近には、日本人が経営する伐採場があり、紅旗河森林警察隊本部が置かれており、150人ほどの警察官が駐在していた。1940年3月11日の夜、金日成が率いる部隊は森林警察隊の寝入りばなを奇襲し、予想以上の大戦果をあげた。

 前年12月17日の敦化縣六☆松の伐採場襲撃は、北朝鮮では「六☆松木材所襲撃戦闘」と呼ばれているが、第7連隊の呉仲洽連隊長、第4中隊の崔一賢中隊長、機関銃小隊の姜興錫小隊長の幹部3人が戦死している。しかし、「六☆松木材所襲撃戦闘」に続く「大馬鹿溝戦闘」では、幹部は戦死することなく、大量の戦利品を獲得したのだった。

 襲撃部隊は現金1万1千円を強奪し、軽機関銃1挺、歩兵銃10挺、弾薬箱10箱余りを奪い、白面(メリケン粉)70袋、軍服100着余りを捕獲した。そして、火薬庫を爆破し、145名の現場労働者に戦利品を担がせて、急いで現場から離脱した。襲撃部隊は丸一昼夜休まずに移動し、追撃から逃れたのである。

 金日成部隊出現の通報を受けた和龍縣警防大隊の中隊長である前田武市警佐は、中隊の145人を総動員して、猛烈な勢いで追撃を開始した。

 金日成の傍にいた第2方面軍警護中隊の漢人隊員だった劉玉泉は、当時の模様を次のように回想している。

 「当時の状況は非常に困難だった。後方から敵に追跡され、部隊は停まって休むことができず、食事もできないので、生の米や雪を食べて飢えをしのいだ。隊員の半数は筋肉が引きつるようになり、症状の軽いものは自力で歩き続けたが、重症者は人が支えて歩いた。夜になって停まり火を起こすと、敵も停まって火を焚いた。その距離が非常に近くて、敵の叫び声が全部聞き取れることもあった。ある日、呂〔伯岐政治部〕主任と〔金日成〕師長は焚火のそばで研究し、敵を待ち伏せ攻撃することを決定した」(『東北抗日聯軍史料(下)』646頁)

 金日成たちは偵察を終えた後、3月25日、大馬鹿溝795高地の山腹に身を隠して、討伐隊が現れるのを待った。隊員たちの手足はかじかみ、「猫に噛まれたような」疼痛に悩まされた。陽が西に傾き、もう討伐隊は現れることもないので撤退しようとした正にその時、見張りに立っていた呉白龍が旗を振った。「敵接近」の合図だった。そして、午後4時半、戦闘が開始された。

 「敵の大隊が我われの待ち伏せ圏内に進入し、100メートル以内となったとき、〔金日成〕師長が最初の一発を撃つと、全員が一斉に敵に向かって射撃を開始した。敵は非常に頑強であり、戦闘は1時間以上も続き、数回の突撃を経て、ついに敵を殲滅することができたのである」(『東北抗日聯軍史料(下)』647頁)

 前出の劉玉泉は、戦闘の体験談を以上のように書いている。

 この戦闘は、北朝鮮では「紅旗河戦闘」と呼ばれている。中国共産党が東北抗日連軍の武装闘争をまとめた『東北抗日聯連史料叢書』には、「紅旗河戦闘」について次のような記述がある。

 「3月25日、和龍縣特設部隊と討伐隊の200余名の日本軍が、第2方面軍の活動地帯に現れ、これを知った我が軍は、再度打撃を与えることを決定し、和龍縣紅旗河の30キロ北の山中で待ち伏せした。待ち伏せ圏内に侵入してきた敵に対し、我が軍は有利な地形を利用して、一挙に前田討伐隊を全滅させた。前田部隊長以下100名近くが戦死し、30名を捕虜としたが、7名が逃亡した。この戦闘で、我が軍は拳銃6挺、歩兵銃100挺余り、多量の食糧及び弾薬を捕獲した」(『東北抗日聯連第二軍』199頁)

 「紅旗河戦闘」に関する日本側の官憲記録は多いが、琿春領事館の木内忠雄領事が作成した秘密報告書「機密111号」によれば、日本側の犠牲者は「前田隊長以下58名、及び人夫17名が戦死、警察官及び人夫15名負傷」であり、「賊側にも死者5名負傷者多数ある見込みなり」となっており、惨澹たる有り様だった。

 しかし、1940年3月の大馬鹿溝襲撃テロと紅旗河追撃戦を最後に、金日成部隊による大規模な攻撃作戦は終息したのである。(つづく)

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