高並編集長はとても几帳面な人である。どこで売っているのかわからない「ポケットサイズ」ならぬ「ポケット1/4サイズ」の手帳を常に携帯し、地下鉄料金からポテトチップスにいたるまで、自分が支払った金額はその時即座に記入し、1円たりとも無駄にしない。
そのほか、聞くところによると、映画を観た感想なども劇場から出る前に細かくメモしているらしい。僕も何度か編集長がメモしているのを目撃したことがあるが、ただでさえ小さなメモ帳に米粒にお経を書く人みたいな文字がびっしり並んでおり、まったく解読できなかった。その時「こんな小さな字で後から読めるの?」と僕が聞くと、編集長は「だいたい分かる」と言っていた。
だいたいでいいのか…。ならなぜポテチが120円だったか130円だったかでそんなに悩む?それで待たされるこっちの身にもなってくれ。
そんな高並編集長が、今日も手帳を開いたまま悩んでいた。今回はどうやら来月のスケジュール調整に四苦八苦しているらしい。もちろん、映画鑑賞のだ。
それというのも、5月13日から6月16日まで、札幌市中央区の
「スガイシネプレックス札幌」で「韓流シネマ・フェスティバル2006」が開催されるからだ。編集長は通常の試写会や公開作品の鑑賞に加えて、このフェスティバルで上映される18本の韓国作品をすべて観ようと目論んでいるらしい。5週に分かれて数本づつが上映され、上映時間もそれぞれ異なるためにいつ何を観るかを決めるのが大変だと編集長は言うが、悩むのを楽しんでいるようにしか見えない。
料金は1作品につき当日1800円、前売り1500円だが、お得な「5枚セット券」6000円というのもあり、得しながら効率よく鑑賞するためには、やはり事前の計画が大切なようだ。映画の楽しみって、こうした観る前の段階から始まっているのかもしれない。
尚、開催中は「スタンプラリー」もあって、観た作品の本数によって様々な特典がもらえるそうだ。高並編集長が真剣に計画をたてているのも、ソレが狙いなのかも。
昨年も同じフェスティバルで韓流映画を堪能した編集長によると、一口に韓流と言っても、当然面白い作品もあれば、つまらないものもあるようで、今年は何本「当たり」があるか?というドキドキ感も、映画ファンの楽しみなのかもしれない。
さて、僕が高並編集長からこの話を聞き出すためには、当然彼が悩みながらスケジュールを決め、例の極小文字で記入し終わるまで辛抱強く待たなくてはならなかったワケだが、その後「全部観れそう?」と聞くと、「だいたい観れる」だって…。
こういうのは高並編集長独自の楽しみ方だと思う。
■辻 正仁(つじ まさひと) 1966年生まれ。 中学生の頃、ビートルズに憧れ自らも作詞作曲を始める。大学時代は、バンド活動と友人の映画作りの手伝いに没頭した挙句、単位の修得を失念。北海道のCD ショップチェーン「玉光堂」の社員として10数年間勤めた後、2004年退社。現在は自らの音楽活動、執筆活動に勤しむあまり、生計を立てるのを忘れがち。
FM新さっぽろ「海月屋本舗(毎週月曜18時)」のパーソナリティ、ミュージックショップ「音楽処」の準スタッフ等々、様々な分野で活動中。自主制作レーベル「海月屋(くらげや)」主宰。