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辻 正仁の「音ラインにゅ?す」<CDとライダー・スナック その2>


05月08日(月) 16時00分
 



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「ライダー・スナック商法」は、音楽が好きが故にCDショップで働いて給料をもらうことになった僕にとって、なんとなく複雑な思いがするものだ(辻)
音楽ビジネスにおける「ライダー・スナック商法」について、更に考える。

 多種多様な特典をつけて、同じ内容のCDを一人に何枚も買わせてしまう方法を、僕は子供時代にトレーディングカード欲しさに食べもしないスナック菓子を買い続けた経験から、勝手に「ライダー・スナック商法」と名づけている。

 この商法を僕は特に否定はしない。売上を伸ばすための立派な企業努力だと思う。ただ、問題があるとすれば、こうして特典目当てで一人で何枚も購入しても「CDチャート」という、一見するとその音楽的内容の人気・支持の度合いを推し量るランク付けの中に入ってしまうことだ。勿論、それが目的でこうした商法を考えるのだろうけれど。

 全国の子供達がカードだけ取り出し、中身を捨てていた事で社会問題になった「ライダー・スナック」だって、おそらく表向きは当時「大人気のお菓子」という事になっていたハズだ。これも同じく企業努力であるし、どういう形で出されても、特典やオマケを沢山手にすることができて喜ぶ人がいるのだからそれはそれでいい。

 もともと商業音楽(こう言って判りずらければ「ポピュラーミュージック」のほうがいいだろうか?)は、どこまでが音楽に対する人気で支持されているのかがあいまいであり、そこが魅力であったりもする。

 CDの売上ランキングというのは、その音楽だけでなく、歌い手や演奏者の容姿やキャラクター、所属する事務所やレコード会社など諸々の要素の総合力のランキングであると言えると思う。だから、まったくの無名の歌手でも曲の魅力でランクインする場合もあれば、テレビで人気の出たタレントが、その人気を「現金化」するためにCDを出して、特典を付けることでランクインする場合もあり、その両者が同じ週のチャートに並んでいたりする。

 その歌い手についてよく事情を知らないひとが聴くと「なんでこんなヘタな人が?」ということもあるだろう。多分、かつて人気のお菓子だからと「ライダー・スナック」を食べてみて「なぜこれが?」と思った人もいたはずだ。

 そして、CDに関して本当にライダー・スナックのような事がおきた。

 前回話題にしたCDの発売と同じ頃、別なアーティストのCDの特典でも同じように数種類の特典が付けられていたのだが(特典の内容がわかるだけ良心的だろう。一応は「お好きな特典のものを選んでください」ということだ)、このCDが発売されてまもなく、札幌のとある駅のごみ箱に大量に捨てられているのが発見されたのだ。特典は取り出された状態で。

 付近のCDショップでは盗難に遭った形跡はなかったそうだ。これは推測に過ぎないが、おそらく購入者が特典だけ取り出して不要なものは捨てたのだろう。ライダー・スナックと同じように。

 同じCDを買うのにも、理由はひとそれぞれだ。そのCDの音楽が好きだから、アーティストの容姿が好きだから、話題についていきたいからなどなど…。

 だから、前回僕が例に挙げた「特典が14種類あるCD」の場合も、単純に音楽を気に入っているだけの人は1枚しか買わないし、そのアーティストのもの全てが欲しいファンは14枚購入する場合もある。例えば、この二人しかCDを買うものがいなくても、特典がなければ2枚の売上のところを、特典のおかげで15枚売れるのだ。そして、売れた数字だけを見るとその一枚一枚が購入者それぞれに対してどんな価値を持っているのか判らない。ある者にとってはかけがえのない一枚のCD、ある者には(まあ、一枚は必要として)すぐに捨てる十数枚のゴミという可能性もある。

 繰り返しになるが商品である以上、より沢山売って業績を伸ばすのは悪いことではない。特典が沢山あるのも、ファンの楽しみであるからいいことだろう。

 だが、音楽の作り手としてはどうなんだろう?沢山売れればそれだけ手元に入る額も大きくなるからいいのだろうか?確かに、その額分の人気はあるのだろうが、それは自分の作った音楽への支持とはまた別の話だ。

 その当時はCDが良く売れる時代だった。「音楽バブル」などと言われたりもしていた。

 「売るための手段」としての特典も、最初はファンサービス的な発想だったのだろう。あるいは、売れて注目されることで、より多くのひとに音楽を聴いてもらえるチャンスを作ろうという考えかもしれない。

 だが、こうした方法で売上が伸びていたころ、音楽についての話題といえば「200万枚突破」とか「コンサートで10万人動員」や「10日間連続公演」など数字に関することばかりで、セールスポイントとして、それがどんな音楽なのかが語られることが少なくなってしまったようにも思う。

 商品を200万枚売るというのは凄いことだと思う。しかし、そうした話を見聞きしながら「でも、音楽が200万人に愛されたわけじゃない」と思ってしまう自分もいた。

 「ライダー・スナック商法」は、音楽が好きが故にCDショップで働いて給料をもらうことになった僕にとって、なんとなく複雑な思いがするものだ。

■辻 正仁(つじ まさひと) 1966年生まれ。 中学生の頃、ビートルズに憧れ自らも作詞作曲を始める。大学時代は、バンド活動と友人の映画作りの手伝いに没頭した挙句、単位の修得を失念。北海道のCDショップチェーン「玉光堂」の社員として10数年勤めた後、2004年退社。現在は自らの音楽活動、執筆活動に勤しむあまり、生計を立てるのを忘れがち。  FM新さっぽろ「海月屋本舗(毎週月曜18時)のパーソナリティ、ミュージックショップ「音楽処」の準スタッフ等々、様々な分野で活動中。自主制作レーベル「海月屋(くらげや)」主宰。







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