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独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第45回


 
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| 1987年に完成した金正日が生まれたとさる丸太小屋(著者撮影)。中朝国境に聳える白頭山南麓の小白水谷の林のなかに、金正日が生まれたとされる偽造の丸太小屋が建設されたのは1987年のことである。その完成を待つかのように、その年の秋から北朝鮮は一般観光客を受け入れるようになった。1987年10月、私は第1陣観光ツアーで北朝鮮を訪れ、白頭山を登った帰り道に、金正日の経歴偽造のために捏造された「創作小屋」を見学した。小屋の背後の山は、かつては長寿峰と呼ばれていたが、1988年8月、金正日に因んで「将軍峰」と改名され、頂上付近に名前が刻まれた岩が取り付けられた(写真左上参照) |
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第1部 金正日の出生の秘密を暴く
第3章 1941年に生まれた金日成の子供
1974年の「出生33周年祝賀電文発送運動」 1975年、韓国の金日成研究家として知られる呉基完氏は、専門誌『北韓』(75年5月号)に「金正日ストーリー」という論文を発表し、金正日の経歴について初めて具体的に明らかにした。その論文のなかで呉基完氏は、金正日は「1941年にサマルカンド(ウズベキスタン共和国)で生まれた」と書いた。呉基完氏は、この情報を朝鮮労働党連絡部所属の招待所で働く「シンモ(賄い婦)の朴ハルモニ」から聞いたと情報源まで明らかにしている。
1970年代の北朝鮮では、金正日がソ連生まれであることを噂として知っている国民は多かったが、正確な出生地については知らなかった。当時は、スターリンが1936年に高麗人(ソ連系朝鮮人)を、極東から中央アジアに強制移住させたという歴史的事実は、ソ連との友好関係のなかで北朝鮮では抹殺されていた。そのため、スターリンを恨む高麗人がサマルカンドを注目せさるために流した噂が、秘密機関である党連絡部の末端で働く朴ハルモニにまで届いたものと思われる。
スターリンによる極東からの高麗人追放の事実を知っていた中国は、呉基完論文に注目し、1980年に上海で発行した『当代国際人物詞典』のなかで、「金正日は1941年にサマルカンドで出生」と記述した。また、1994年5月、北京の世界知識出版社が発行した『各国概況アジア編』(第3版)にも同様の記述があるが、これは『当代国際人物詞典』の情報を無批判に流用したためと思われる。
事実を承知している中国で、金正日がサマルカンド生まれとする書籍が出版された背景には、政治的配慮があると考えられる。つまり、金正日はヴォロシロフ(南野営)生まれであるにもかかわらず、サマルカンド生まれと誤認しているように記述し、中国は白頭山密営説を否定する一方で、北朝鮮には正当に反駁できる余地を与えているのでしる。サマルカンド出生説は、中朝関係を慮る中国人の智恵なのかもしれない。
であれば、1941年生まれという記述は、どう解釈したらいいのだろうか。単に、呉基完論文のデータを採用しただけなのだろうか。
実は、呉基完論文が発表される前年(74年)の2月、北朝鮮では朝鮮労働党書記局の組織・宣伝担当書記に選出され(73年9月17日)、秘密決定で「唯一後継者」とされていた金正日のために、「出生33周年祝賀電文発送運動」というキャンペーンが、大々的に展開されていたのである。北朝鮮の各機関や企業所では「尊敬する指導者であられる党中央委員会金正日書記同志の誕生33周年を迎え、祖国統一と南朝鮮革命の前哨線に立つ我われは、……尊敬する指導者金正日同志に限りなき忠実な近衛隊、決死隊になることを誓います」といった祝電を党中央に送るよう強要されていた。この悪習は現在まで続いている。
1974年に「出生33周年」ということは、1941年生まれということである。この事実を知れば、1974年当時の金正日は、組織・宣伝担当書記として電文発送キャンペーンを指示する際に1941年生まれであることを、自ら認めていたことになる。翌1975年から、金正日の誕生日である2月16日は国定休日に指定され、今日に至っている。
そして、1982年2月15日、金正日の誕生日の前日、共和国中央人民委員会は「生誕40周年」を記念して、「金日成同志に朝鮮民主主義人民共和国英雄称号を授与することについて」という政令を布告した。以後、金正日は中朝国境に聳える白頭山の密営で1942年に誕生した、という改竄された経歴が定着していったのである。
1986年の秋から、白頭山南麓の小白水谷の林のなかに、金正日が生まれたとされる丸太小屋が建設され、翌87年2月11日、金正日の「45歳」の誕生日直前に完成して、盛大な落成式が行われた。金正日は偽造した経歴を証拠立てるため、小屋まで創作したのである。 (つづく) 






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