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本屋さま こちらは、しがない客でございます


 
近頃のガキは、「腹の立ったこと」には即答できるが、「うれしいこと」や「悲しかったこと」「楽しかった」ことを聞いても返事に窮するそうだ。
早速、小学3年の我が息子にも尋ねてみたが、結果は似たようなものだった。
「腹が立ったことは何よ」
「2組の○○に押された」
「それで黙っていたのか」
「いや、押し返してやったら謝ってきた」
という具合である。
「うれしいこと」や「悲しかったこと」「楽しかった」を質問すると、面倒くさそうに考え、答えを見付けるまでに時間を費やす。
息子はニヤリとしながら「そういえば、この間、父さん、高速道路で200キロ出したな。俺は車の窓を開けて、手を冷やしていたから、あの手は冷たかっただろ」
息子は窓から手を出して十分に冷やした手を俺の顔に付けた。その手は氷のように冷たく、シートから飛び上がりそうになった。いかにも悪ガキという表情でニヤニヤする息子の顔を見ると、頼もしい気がしたのは確かだが、危ない。
危なかったら飛ばすなと言われればそれまでだが、ともかく、最近のガキは「頭にきたこと」ばかりが脳裏に焼き付くようだ。
さてと…。俺の場合だが、やはり楽しかったことよりも、昨日は腹の立つことの方が残った。
俺は毎日のように地下街の本屋に行く。会社から近いためであり、帰り道でもあるためだ。
その本屋は新宿に本社を置く、誰もが知る有名店だ。
しかし、店員の態度が悪い。
カウンターで店員に本と金を渡すと、店員は「お預かりします」と言って、レジ係に金を渡す。このレジ係は釣り銭を釣り銭皿に入れ、店員に渡す。俺は釣り銭と買った本を受け取り、本屋とおさらばするわけだ。
だが、本を受け取るまでに不愉快なセレモニーがあるのだ。俺が本を買う時刻は大体、閉店間際の午後8時前。レジ係はいつも同じ中年男だ。恐らく男は本屋の中間管理職だろう。
この男は必ず、釣り銭皿に釣りを「ガチャリン」と投げ入れて、カウンターの定員に渡す。俺が本を買えば、男は10回中、10回ともこの「ガチャリン」という音を立てる。
当然ながら毎回、この音を立てられた俺はトサカにくるわけだ。
いまどきこんなお粗末な態度はバイトでもしない。社員教育をする立場の管理職がこのざまだ。
ガキが「腹の立ったこと」にしか、即答できない傾向も、こうした不感症の大人の“狂育”のおかげか。 










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