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辻 正仁の「音(オン)ラインにゅ?す」<限定盤に気をつけろ! その3>


 
加熱する「初回限定盤」競争。
いや、今回は気をつける話でもないんだけどね。売り場でたまに「コレ初回盤ないんですか?」とか聞かれたりするんで、ちょっとご説明を。
ここ数年、CDの限定盤の中でも多いのが「初回限定盤」というヤツ。初回盤、要するに最初に生産プレスしたもののことで、書籍でいうところの「初版」と同じなんだけど、「発売1週間が勝負」と言われる昨今のCDは、その間に沢山売って、チャートにランクインさせないと、翌週にはまた新曲が出て売れなくなるって傾向があるわけです。つまり、曲の寿命が1週間と製作側が考えている。正直、それもどうかと思うのだが…。
ともかく、発売したらいち早く買っていただくために、CDではこの初回だけにしかない「希少価値」を付けて売り出そうと(良心的に考えれば、「最初に買うファンのため」という考えもあるのだろう)「初回限定仕様」なるものが作られる場合がある。
最初の頃は、その初回盤だけにケースを収めた厚紙の箱が付いてくる程度のものだったんだけど、そのうちジャケットのデザインが違ったり、初回だけ曲が多いというのも登場するようになった。書籍で言えば、初版本だけ表紙が違ったり、ページが多いようなものだ。
そうなってくると熱心なファンは、初回限定仕様を買い、後日初回以降のものが出た時にまたソレを買ったりもする。これも書籍だと、内容の同じ小説を表紙が違うから2冊買ってることになる。
この現象に拍車がかかって、最近では発売と同時に「初回盤」と、それとはジャケットや内容の異なる「通常盤」が同時発売されることも多くなった。
初回盤のバリエーションも増えてきて、DVD付きだったり、ブックレットがついていたり、ケースが違ったりと様々。ヘタすると、それぞれ特典やジャケットの違う「初回盤A」「初回盤B」なんて何種類もの初回盤と、CDだけの「通常盤」が同時発売されて、一つのタイトルがついた5種類の商品が店頭に並んでいることすらある。
中には、初回盤にはタイトル曲とDVDが収録されていて、通常盤にはDVDは付かないけど初回盤に収録されていない曲が入っているなんてものもあり、混迷を極めているのだ。
あまりに色んな種類を作ってしまい、発売から何年も経っているのに、未だに「初回限定盤」がメーカーの倉庫にあるという場合もあり、その際も「初回のAはないけど、Bはある」とか、「通常盤が品切れで初回ならある」とかいうワケのわからない状況だ。
こういう事が通例化してくると、買う方の中には「初回盤」というのは「特典がつくもの」とか、「ジャケットの違うもの」の事だと思ってる人も現れるのだ。それで、冒頭のような問い合わせをいただくことになる。
だが、先ほども述べたように、あくまでも工場で最初に作ったものが「初回盤」であって、後から追加生産されたものと同じものであっても、初回は初回なのである。
趣向を凝らしてバリエーションを増やし、ファンに喜んでもらうのも一つのサービスではあるが、こうした売り方を見ていると、時々CDにあまり音楽作品としての価値が問われていないような気がすることがある。
書籍と同じように、CDにもどこかに「初版」とか「第2刷」みたいな表記を入れて、見かけは同じでも「初版」を持っていると、後年になって喜びが増し、そちらの方が値打ちが上がるような音楽が出てこないものだろうか?
こういう話をする度に、あのビートルズを思い浮かべる。活動の後半から解散まで、自作品の扱いに権限を持っていた彼らは、ヒットシングルでさえアルバムには収録しなかった。「ファンに同じ曲の入ったレコードを何枚も買わせたくない」というのがその理由だ。少ない小遣いをやりくりしながら好きな音楽を聴いていた自分達の少年時代の気持ちを忘れていなかったのだ。
同じ曲に付加価値をつけて何種類もの「初回限定盤」と「通常盤」を作り、1週間で売上が激減する音楽が溢れる中、ビートルズの音楽は何十年も愛され続けている。果たして、どちらが本当の「希少価値」だろう?










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