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恵庭OL殺人事件 最高裁提出「上告理由書」 vol.14


 
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| 平成12年4月15日、橋向香さんの遺留品が焼損状態で見付かった早来町(現・安平町)の町民の森 |
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弁護人は札幌高裁が「証拠に基づかない有罪認定を行った」と主張。
平成12年3月17日、苫小牧市に住むOL・橋向香さん(当時24)が、恵庭市北島の市道脇で焼死体となって発見された恵庭OL殺人事件。
この事件で逮捕、起訴されたのは、被害者橋向さんの同僚で日本通運札幌東支店キリンビール千歳工場内構内課に勤務していた大越美奈子被告(36)だった。
15年3月、札幌地裁の遠藤和正裁判長は、殺人と死体損壊の罪に問われた被告に対し「被告人単独で被害者を殺害、死体を焼損したことは、合理的な疑いを挟む余地なく認定できる」と断罪、懲役16年(求刑・懲役18年)の判決を言い渡した。
捜査段階から一貫して無実を主張してきた被告は、1審判決を不服とし、札幌高裁に控訴。控訴審はおよそ1年半にわたり開かれた。昨年9月29日、札幌高裁(長島孝太郎裁判長)は1審・札幌地裁判決を支持、控訴を棄却した。被告は即日、上告。弁護団は提出期限である今年3月6日、最高裁に上告趣意書(上告理由書)を提出した。
以下、上告理由書のvol.14。
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9.被告人は被害者の遺品を投棄していない
(1) 原審は、被告人に土地勘のある場所から、被害者の遺品残焼物が発見された事実を、積極的情況証拠の一つとしてあげているが、その問題性については前述したとおりである。ここでは、むしろ、この事実が被告人にとって有利な消極的情況証拠となり得ることについて検討する。
原審は、「警察官の被告人に対する行動確認は、常時監視していた訳ではなく、とぎれとぎれに行われていたにすぎず、しかも4月14日午前8時22分以降は監視をしていないこと、被告人が被害者の遺品を投棄したと推認される期間にマスコミが常時被告人を尾行していたとの事情も認められないこと、4月14日に行われた検証の結果、被告人車両のタイヤに泥が付着し、左右の前輪後方の車体側面に土砂が乾燥していた状態で付着していたことから、被告人が被害者の遺品を投棄するのは不可能であるとは言えない」とした。
(2) 原審が認定したところの「常時監視をしていた訳ではない行動確認」とは、本件のずさんな捜査の一端を彷彿とさせるものであるが、それはさておくとして、原審の認定の問題点は、被告人車両のタイヤや車体側面に泥や土砂が付着していたことをもって、「被告人が被害者の遺品を投棄する可能性が不可能であるとは言えない」と認定し、さらに「被告人が投棄した」という認定に至った推論のプロセスである。
4月10日午後9時ころから翌11日午前4時ころまでの間、早来町(現・安平町)一帯に大雨が降った事実は争いがない。当時はちょうど雪解けの時期で、早来町町民の森に通じる道路は舗装でないために、融雪期と大雨による泥の轍が大きくでき、そこがぬかるんでいる状態であった。
弁護人が問題にしていたのは、このような道路状況のところに、大雨が降ったのだから、その直後に被告人が早来町町民の森に車両を乗り入れたとするならば、車体に土砂埃や左右の前輪後方の直近車体側面に土砂が付着している程度でなく、タイヤが泥だらけになったり、車両のボディの下方の広範囲に泥が付着したはずだということである。
(3) 被告人車両の泥の付着情況について、行動確認に当たっていた警察官は次のとおり証言している。
ア.4月11日夜から同月12日朝まで被告人を監視していたX(※)は、車両を降りて徒歩で被告人車両のところまで行って確認しているが、「車に泥や汚れがあったかは確認していない」と供述している。
イ.4月12日夜から同月13日朝まで被告人を監視していたY(※)は、「13日午前8時20分ころ、被告人車両の車体の左側、ドアやフェンダー付近に泥が付着しているのを見た」と供述しているが、「付着の程度については憶えていない」と供述しており、記憶に残らない程度の付着でしかなかったことが推認される。
ウ.さらに、4月13日夜から、同月14日朝まで監視していたZ(※)も、被告人車両の汚れについては「確認していない」、「記憶していない」と供述しているのである。
このように、被告人車両のタイヤが泥だらけになっていた事実は確認されておらず、大雨の直後に、被告人車両が早来町民の森に乗り入れたとする証拠は全くないのである。
(4) しかも、原審は、被告人が被害者の遺品を投棄することの不合理性について、何ら検討していない。そもそも、被告人が被害者の遺品をわざわざ投棄・焼損した目的が不明である。もし、証拠隠滅のためであるならば、埋めるか海か川に投げ捨ててしまった方が発見されにくいし、焼損するにしても、もっと完全に焼却したはずである。本件は、中途半端な焼損であったが故に、被害者の遺品であることが判明したのであるとすれば、本件投棄・焼損は、わざわざ被害者の遺品であることがわかるようにするために投棄したと考えた方が合理的である。
(5) また、投棄された時期も問題である。遺品が発見された状況から言って、遺品が投棄された時期は、現場周辺に大雨が降った4月11日午前4時以降と考えられるが、被告人が犯人であれば、もっと早い時期に被害者の遺品を処分したはずである。なぜなら、被告人は、既に3月下旬頃には、配車センターに出入しているドライバーから、自分が犯人として警察に疑われていることを聞かされて知っていたからである。
4月14日以降に遺品が投棄・焼損された事実は、被告人が犯人と疑われていることを知っている真犯人が(被告人は4月14日に、会社の前で任意同行を求められた)、被告人の嫌疑を深める目的で、被害者の遺品を投棄した、と考える方が合理的である。
(6) また、投棄されて場所も問題である。被告人が犯人であれば、投棄場所はなるべく日常の生活圏と無縁なところを選択するはずである。そこを、あえて、自宅近くを選択したこと自体極めて不自然である。
しかも、被害者の遺品を入れていたと思われるハンドバッグや財布は、被告人の周辺からは発見されておらず、被告人が、これを所持していたとか、投棄したという証拠は全くないのである。
(7) 以上のとおり、被告人に土地勘のある場所から被害者の遺品残焼物が発見された事実は、むしろ、被告人にとって有利な消極的状況証拠というべきである。
(8) 小括
これまで、8点に亘り、被告人に有利な消極的情況証拠について述べてきた。原審が、刑事裁判の事実認定の原則に対して忠実であったならば、これらの情況証拠はいずれも被告人を無罪に導いていたであろう証拠である。
ところが、原審は、通常ではあり得ないような非合理的な推論を行い、これらの情況証拠も被告人を有罪に導く証拠としたのである。原審の推論は、被告人の犯人性を覆す消極的情況証拠について、「不可能ではない」とか「被告人の車両に血痕等の痕跡がないことから、直ちに被告人の犯人性を否定されるものではない」などといういわゆる二重否定を重ねており、およそ合理的推論とは言えないのである。その問題点は、まさしく次の判例が指摘しているとおりである。「有罪認定に都合の良い可能性を持つ一面を選りだして、これらを重層的に重ね合わせ、その上で、これだけ多くの事実がすべて集まるのは偶然ではないと主張してみても、説得力がない。有罪認定をするには都合の悪い、いわば消極的可能性を持つほかの一面や、有罪認定とは矛盾する可能性が高い情況証拠をも正当に評価する視点が十分でないからである」(前掲ロス疑惑控訴審判決)
原審が、このような合理性のない事実認定に走った背景には、本件捜査が異常な程にずさんであったこと、どう見ても「見込捜査」としか言いようのない違法な捜査であったことに起因している。
本件において、原審は、捜査官の違法かつずさんな捜査結果を追認し、むしろ、その捜査の欠陥を補完するため、「被告人の供述ないし弁解は不自然・不合理である」という被告人に対する不信を付加して、「幾つかの間接事実」を「総合評価」して、証拠に基づかない有罪認定を行ったものである。
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以下、次回に続く。
(※)Xは1審・札幌地裁の第31回公判で証言した警察官
(※)Yは同じく第32回公判で証言した警察官
(※)Zも同様に第33回公判で証言した警察官







関連サイト

シリーズ一括読み
http://www.bnn-s.com/bnns/series/seriesList.jsp?series_cd=13






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