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アメリカに翻弄されたフセイン元大統領、“2度目の死”


12月27日(水) 18時50分
文:東  写真:東 



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多くのイラクの人々はフセインを憎んでいるが…
 “世界の警察”の庇護の下、権力を増大させた独裁者。

 イラク高等法廷は、イスラム教シーア派住民を虐殺したとして先月5日に死刑を宣告されたサッダーム・フセイン元大統領(以下、フセイン)の控訴を棄却。死刑が確定したフセインに対しては30日以内に絞首刑が執行される見通し。

 高等法廷は、旧フセイン政権時代の犯罪を暴く目的で米英占領当局とイラク統治評議会が2003年12月に設置した特別法廷が前身。国内法に基づき、5人の判事が審理を行う2審制。

 フセインは独裁政権が崩壊した約8カ月後の2003年12月、潜伏していた中部ティクリート近郊で米軍に生け捕りにされた。フセインは翌年7月の特別法廷予備尋問で「本当の犯罪者はブッシュだ」と反論した。歴史をさかのぼれば、この発言を暴言とするには少々無理がある。

 フセインは、1982年にイスラム教シーア派住民148人を殺害したとされる「ドジャイル事件」で昨年、起訴され、「人道に対する罪」で死刑を言い渡された。

 本来、集団殺害や侵略、戦争犯罪を犯した国家指導者や個人に対しては、国際刑事裁判所(ICC)で審理されるのが一般的である。しかし、フセインは利害や恩讐が交錯するイラクの人々自ら裁くことになった。国内法に基づきフセインを裁いたのは、極刑にしなければフセイン政権時代に弾圧されたシーア派やクルド人勢力が反発すること、さらにアメリカがICCに加盟していないことが要因だろう。

 独裁者として君臨したフセインは、数々の非人道的行為を繰り返してきた。その代表例が「ハラブジャ事件」。イラン・イラク戦争の末期である88年3月、フセイン政権は、クルド人居住区のハラブジャ住民がイランを支援したとして化学兵器を使用、およそ5,000人が死亡した。

 アメリカはイラン・イラク戦争の際、経済、物資の両面でイラクを支援した。03年3月、アメリカが仕掛けたイラク戦争の大義が「イラクの大量破壊兵器」の存在であったことは周知のとおりだ。イラク国内で大量破壊兵器を発見できず、国際社会から非難されたにもかかわらず、そのアメリカは「ハラブジャ事件」でフセイン政権が使用した化学兵器に関しては口を閉ざしたままだ。

 フセインが多くの人々を殺害した悪魔であることは間違いない。だが、独裁者・フセインの権力を増大させた一因は、反米国家・イランの橋頭堡となるべくイラクを利用してきたアメリカである。

 右の写真は03年5月、ブッシュ大統領が戦闘終結宣言をして間もない頃の写真である。バクダッドはもちろん、ほかの都市でも、フセインの肖像画や銅像はことごとく破壊されていた。左の写真のように“無事”だったものはほとんどなかった。

 フセイン政権崩壊後、バクダッドのスラム街「サッダーム・シティー」は、忌み嫌われたフセインの名前を排し、シーア派指導者の名を冠した「サドル・シティー」に改められた。それでも、独裁者が健在だった時代よりも現在のイラク情勢は悪化しており、フセインの死刑執行によって、さらに治安が悪化する懸念は払拭できない。

 アメリカの援護を受け、独裁者の地位を守り続けたフセインは、アメリカに裏切られ、バグダッド陥落と同時に“死亡”した。アメリカの「イラクに民主主義国家を樹立する」という戦略の下、フセインは2度目の死を迎えようとしている。










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