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半世紀にわたる“異常事態”を解消、道教委が今年からようやく「勤務評定」を実施


03月16日(金) 18時00分
文:東・臼谷 



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教育現場には問題が山積している
 査定評価制度を導入、5段階評価に昇給に反映。

 「教員に自分を高めたり、客観的に自身を評価する資質が備わっていなければ、子どもたちに影響を与えることになる。私が子どもの頃は、夏目漱石が好きな国語の先生に当たり、漱石に興味を持つことができるようになった。いまの子どもたちは、たくさんの情報を得ている。そんな子どもから見て、小粒の先生が持っている知識には魅力がなくなっているのではないか」

 北海道教育委員会の上林猛教職員局長は、これまで教職員に対する勤務評定が実施されていなかったことの“弊害”をそう指摘する。
 
 地方公務員に対する勤務評定(勤務成績の評定)は、地方公務員法第40条(※1)、地方教育行政法第46条(※2)で実施が定められいる。にもかかわらず、長年、道教委は勤務評定を策定してこなかった。

 1957年、道教委は勤務評定の導入を検討したが、北海道教職員組合(北教組)が「給与差別」を理由に導入を反対した。61年には道教育長と北教組が「勤務評定は施行しない」との覚書を交わし、以後、40余年にわたり勤務評定が策定されないという異常事態に陥っている。北教組はもちろん、道教委の姿勢もまた厳しく批判される結果となった。

 61年以降は、「実際には所属長が教員の勤務状況を把握してきた」(上林局長)という状況が続いてきた。道教委の各教育局は個々の教職員の勤務状況などを把握し、適材適所の配置の観点から人事を実施してきたと主張するが、法に定められた勤務評定を実施するにはほど遠く、文部科学省からも明らかな法律違反と指摘された。

 遵法もさることながら、教育現場には子どもの学力低下やいじめ、不登校、学級崩壊、指導力不足の教員など火急の問題が山積している。こうした問題を改善するための要諦は、教員の自己研鑽や指導力の向上であり、それを“判定する”勤務評定の策定は不可欠だ。

 教育現場の現況を踏まえた文部科学省は、2003年度に各都道府県と政令指定都市の教育委員会に新たな教員評価制度の検討を促した。

 教員評価制度は学校の活性化と教員の資質能力の向上などを通して、その成果が児童・生徒に還元されることを目標に掲げている。その結果を昇給の判断材料にしたり、評価の低い教員を研修に参加させるなどの措置を講じることも可能だが、具体的な実施内容は各教育委員会の判断に委ねられている。

 道教委は04年11月、有識者、経済会関係者、PTA関係者など11人で組織する「教員の評価に関する検討委員会」を設置、評価の手法、評価の項目、評価結果の活用など関する論点整理を行った。05年6月1日に開かれた第6回検討委の会議録には、各団体からの意見が次のように記載(抜粋)されている。

[北海道教職員組合]
・教職員を評価することに力を注ぐよりも、管理職の資質を向上させ、教職員との日常的な意思疎通を図り、意見等を随所に取り入れることが、円滑な学校運営を推進し、教職員の協力、協働を促進するために何よりも重要なことである。

・校長等による恣意的な運営が行われれば、教職員はやる気を失い、自由に活発な意見を言えない職場をつくり出すことになる。教職員の個性を生かし、活発に活動できる職場の雰囲気をつくることが大切であり、制度導入により、そこそこ無難にこなす教職員が増加することになれば逆効果である。

・処遇への評価結果の反映は、教職員間の協力、協働を阻害し、互いに足の引っ張り合いを始めるおそれをもたらし、学校全体がばらばらになってしまう。

[北海道高等学校教職員組合連合会]
・教員評価制度の目的については、制度導入が子どもたちへの還元という最終的な目標の達成に真に役立つものであるかどうかを慎重に検証していくことが必要。

・「北海道の教員評価制度の方向性」「学校目標の達成に向けた協働の促進に向けたシステム」について、子どもや地域の実態を踏まえた十分な議論がないまま、特色づくり・学校が抱える課題や学校の教育目標を論じたり設定することは、子どもたちの成長・発達という教育の普遍的な目標を矮小化する危険性をはらんでいる。

[全北海道教職員組合]
・今回の論点整理で示された制度としての教員の評価は、教育課題の解決方法を一人一人の教員の資質、能力の問題のみに矮小化するという危険性を感じる。教員集団としての教育目的の実現のための諸活動の総括や方針を検討するためのものではなく、個々の教員一人一人の評価のシステムであり、実施すれば個々の教員の中に同僚との協働ではなく、閉鎖性を生み出すことになる。これでは、学校の活性化も子どもたちへの還元も期待できない。

 上記3団体の意見はいずれも教員評価制度に反対、あるいは拙速な導入を危惧するものである。それでも、これらの組合に属する教員がいまの教育問題を生じさせた一因であることは否定できない。

 「互いに足の引っ張り合いを始めるおそれをもたらし、学校全体がばらばらになってしまう」と懸念する北教組は、昨年12月に道教委が実施したいじめ調査の際、21支部に協力しないことを指導した。その北教組が「協働」なる言葉を使うことは詭弁と言って差し支えないだろう。

 「処遇への評価結果の反映は、教職員間の協力、協働を阻害」するという指摘も、現実の学級経営では「多くの担任がほかの教員や管理職に口出しされたくない」(北教組組合員の30歳代教員)という空気が漂っている。教職員間の協力も、「組合員が結集して管理職をつるし上げる場面などでより発揮される」(同)こともあり、「協働を阻害」が本末転倒の観は拭えない。

 北教組が主張する「校長等による恣意的な運営が行われれば、教職員はやる気を失い、自由に活発な意見を言えない職場をつくり出すことになる。教職員の個性を生かし、活発に活動できる職場の雰囲気をつくることが大切」との主張も名詞を次のように変えれば、現在、山積する教育問題が端的に示される。(カッコ内は原文)

 「担任(校長等)による恣意的な運営が行われれば、児童・生徒(教職員)はやる気を失い、自由に活発な意見を言えない学級(職場)をつくり出すことになる。児童・生徒(教職員)の個性を生かし、活発に活動できる学級(職場)の雰囲気をつくることが大切」

 人が人を評価することが難しいのはどの職場も同じである。教員が児童・生徒を評価する通信簿を付けているにもかかわらず、自身が評価されることを拒むことは独善的というほかない。

 道教委は07年1年と2月の2カ月間、道内14管内の高等学校14校に教員評価制度のモデル実施をした。道教委は4月から道立高校50校程度を対象に教員評価制度を導入する方針。市町村立の学校に対してはできるだけ早期に教員評価制度を導入するよう指導する。

 道教委では「いまのところ、教員評価制度の結果を給与に反映することは難しい」(上林氏)としており、教員昇給の指標となることはなさそうだ。

 これまでは熱心で指導力の高い教員も、向上心に乏しく子どもの学力向上に貢献できない教員も、昇給で差が付けられることはなかった。

 しかし、新たに導入される教員評価制度で昇給を決めなくても、査定昇給制度の導入によって各教職員の昇給額が決定されることになる。

 道人事委員会は「全国的に公務員の年功序列式の給与体系が批判されている」ことなどを理由に、05年10月13日、現行の給与表を2005年度で廃止することを知事に勧告。06年度からは新たな給料表が導入された。

 道職員の昇給は毎年1月。従来の給料表を用いた昇給制度は今年12月で適用期間が終わる。07年1月からは新たな給与表に基づいた昇給制度がスタートした。道職員の中で本庁課長職以上は、すでに今年1月から査定昇給制度が実施されている。そのため、本庁課長職以上となる特定管理職である道立学校の事務長7人には、今年1月から査定昇給制度が実施されている。

 これまでの給与表は今年12月に終了するため、特定管理職を除く教職員にも査定昇給制度を導入しなければ、来年1月の昇給はできず、道教委は遅くても今年11月までには実施する方針。

 教職員に対する査定昇給制度は、各学校長による5段階評価となる予定。最高のAから最も低いEまでの評価は、0、2、4、6、8号棒として反映され、個々の昇給額が決まる。昇給額は年齢にもよるが、ゼロの0号棒から最も高い8号棒まで8,000円程度の差が付けられる見通し。査定評価制度の結果は毎年1月の昇給に反映される。

 査定昇給制度(勤務評定)は、教職員組合の反発から導入が難航すると見られてきたが、長らく続いた異常事態は間もなく解消される。 

※1 第40条 任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。

※2 県費負担教職員の勤務成績の評定は、地方公務員法第40条第1項の規定にかかわらず、都道府県委員会の計画の下に、市町村委員会が行うものとする。







関連サイト

荒廃する学校 教師、父母、子どもが抱える幾多の課題
http://www.bnn-s.com/news/series_cd133.html

第6回教員の評価に関する検討委員会会議録
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/F2A3BCE1-B0A7-4993-8A62-D0E878ED32B1/0/hyoukalog06.pdf






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