ガン 私の後悔
12月17日(月) 18時35分
徳永エリ
皆さん、お元気ですか?色々忙しくて、11月は更新が一度しかできませんでした。ゴメンなさい!
最大の事件は私の父に肝臓ガンが見つかった事。青天の霹靂でした。だって風邪一つひかない元気な人ですし、夏に一緒に奥尻島に旅行に行った時は父の住む函館から、フェリーに乗る江差港まで100キロ以上を自転車で走り、奥尻島についてからも島の中を60キロ以上走るという、73歳のスーパー爺さんなんですから。
たまたま定期検診に行ったら、肝臓に3センチのガンができているのが見つかったのです。函館の病院ではちょっと心配だから、セカンドオピニオンを受けたいということで、私がガンに関しては最も信頼を寄せている、白石区菊水にある、北海道がんセンターの副院長で放射線科の西尾正道先生のところに連れて行きました。
がんの腫瘍のタイプと出来ているところがそう難しいところではないということで、手術も放射線治療も可能。どちらも治療成果は同じパーセンテージだろうということで、私は強く放射線治療を勧め、また、たっぷり時間をかけて考えるよう促したのですが、「悪いものはさっさと取ってしまいたいんで、先生、年内に手術をして退院したいんです。外科の先生を紹介していただけますか?」と、私のアドバイスには全く耳を貸さず、どんどん決めてしまって11月21日に札医大に入院し、12月4日に7時間近くかけて手術。肝臓のガンとその周りを切除、胆のうと若干癒着がみられた血管も切除しましたが、術後の回復はさすがに鍛えているだけあって、体力もあるのですこぶる順調です。
12月28日に退院予定で、今後は様子を見ながら函館の病院で抗がん剤治療を続けるそうです。しかし、3センチのガンができていても自覚症状は全くなく、入院した時もそこにいることに非常に違和感がありましたね。場違いな感じで…。だってすごく元気なんですもの。精神的にも強い人なので、まあ心配掛けないように無理もしているんでしょうが「お父さんは大丈夫だ!何にも心配するな。手術の時もおまえは忙しいんだから、来なくていいぞ!」なんて言ってました。手術場には今、元気な人はストレッチャ−には乗らず、歩いていくのですが看護士さんに冗談言いながら、ガッツポーズで入って行きましたから。
ところで、私にはガンという病気に大変なトラウマがあります。昨年、忘れもしません。日本ハムファイターズが日本一になった翌日、叔父達の中では一番仲の良かった、交流のあった叔父が63歳ですい臓ガンによる、多臓器不全で亡くなったのです。最後の瞬間も病室で一緒に居ました。色んな意味で私には苦しい経験でした。美容師だった叔父は実年齢よりも10歳は若く見え、破天荒で、はらはらする事もあったけれど魅力的な人でした。シャンプーやトリートメント剤や、ストレートパーマ液などを自ら研究開発、商品化し海外にも取引先を持ち、年間数回指導や商談で中国やベトナム、タイや韓国などに行っていました。
昨年、私の母が最初の発病から20年経って乳ガンが新たに見つかり、過去に切除した左胸の反対の右胸までも切除する事になり入院、母はもちろん、私も叔父もかわいそうだと心を痛めて落ち込んでいました。そんな折、顔色がおかしい、尿の色も気になるということで、過労だろうぐらいの軽い気持で叔父もNTT病院に検査に行ったのです。消化器内科で検査の結果、かなりステージの進んだすい臓ガンが見つかったのです。なるべく早く手術をしましょうということでNTT病院に入院。
検査の後、手術の説明を受けるとすい臓全摘出、直腸切除、胃の三分の一切除、癒着している血管切除という大手術。
叔父は痛々しいくらい落ち込んでいて、他にいい方法はないのかインターネットで色々と調べたりして、結果セカンドオピニオンを受ける事を希望しました。トークDE北海道でガンの取材を数々してきて、また、ドクターとの交流もあるからということで私に電話をしてきて、「大手術は避けられないとしても、本当にNTT病院でいいのか、そのドクターにゆだねて大丈夫なのか、色々聞いて納得した上で治療したい。」という事でした。
早速、親しくして頂いているドクター達に相談すると、すい臓ガンの場合、放射線をあてるのは他の臓器を損傷してしまう恐れがあるので難しいだろう、外科手術か抗がん剤治療だなと言われました。外科手術だとすい臓や肝臓は、札幌にはH大のK先生しかいないよというアドバイスを何人ものドクターから頂きました。一方で外科手術は、人によって術後合併症が起きて死にいたるケースがあるから、K病院のH先生のところへ行ってみたらという意見も。
そこで叔父と相談した結果、やはりH大への信頼感がありK先生のセカンドオピニオンを受ける事になりました。数日後、NTT病院から資料を出してもらい、叔父と私はそのK先生を訪ねました。知的でさわやかで、温かく、非常に丁寧にわかりやすく説明してくれるその先生は写真や診断書を見た結果「大丈夫。胃は切りません。すい臓も残しましょう。きっとうまくいきますよ。僕で良かったらお力になりましょう」と言ってくれたのです。
絶望の淵にいた私と叔父は、一瞬目の前の霧が晴れたようで、救われた思いがして叔父は「先生に手術して頂きたいです。よろしくお願いいたします」と、すぐに心を決めました。私もそれが良いと思い安堵しました。
NTT病院から転院、数日後10時間近くかかって手術を行い、大成功で、転移もないということで家族、兄弟涙を流して喜びました。ところが、術後の経過が悪く、どんどん弱っていき、やせこけて80歳のお爺さんのようになってしまい、外科的処置はもう終わったと言う事で退院はしたものの、家でも起き上がれない、物を食べると調子が悪い。そんな中、NTT病院に入院して次のステップとして抗がん剤治療を始めると言うのです。抗がん剤の身体への負担は相当なものと聞いていましたので、叔父も私も、叔父の家族も不安に思っていたところ叔父の具合が悪くなりNTT病院への入院の日まで待てないという事と、抗がん剤の事をきちんと理解したいという事で、選択肢の一つとして勧められた抗がん剤治療の専門医、K病院のH先生の診察を受けに叔父と叔母と私の三人で行きました。
そこには最新のCTスキャンがあって、写真を撮ってみましょうという事になりました。まもなくして私と叔母が呼ばれ写真を見せられるとH先生は「これ、本当にK先生が手術したんですか?残ったすい臓がガン化していて全く機能していませんよ」と言われたのです。
「えっ!何の事言ってるの。どういうこと?どうなっちゃうの?」
頭の中が真っ白になり、叔母は肩を震わせているし、あの時の事を思い出すと未だに呼吸が苦しくなる感じがします。
「本人は相当苦しく、また痛みも激しいはずです。言わないとしたら我慢しているんですよ。まず、点滴で痛み止めを打ちますからね」
痛み止めをうって処置室から出てきた叔父は久しぶりに晴れやかな顔をしていて「あぁ楽になった。でも、家に居るのは辛いし、NTT病院の入院予定日まで待てないからここに入院させていただけませんか」とすがるように言い、家から遠いし古くて、環境がいいとは言えない病院なのでよく叔母と相談するように言ったのですが翌日、そこに入院しました。しかし、もう治療の仕様がなく、緩和治療と言う形での入院。2ヵ月後、その病院で亡くなりました。
結局、すい臓がんの手術はうまくいったものの、膵液をながす管のつなぎに手術的な問題があったのか、本人の体の問題なのかわからないのですが、残ったすい臓にすい液が溜まったことが原因で、すい臓が全部だめになってしまっていたのです。
結果、すい臓がんによる術後合併症が叔父の死因でした。
亡くなった後、K病院のH先生に「外科手術をする前に、一度相談しに来て欲しかったな。治るとは言えないまでも、もう少し快適に残された生活を過ごせたかもしれないな」そう言われたことが私の耳にずっと残っています。
信頼の厚い病院で、この人しかいないと言われたドクターに手術をして貰えることになり、地獄で天使にあったような気持になった私達。H先生に相談に行く事も勧められていたのになぜ、行かなかったんだろう。叔父や叔父の家族に申し訳ない気持と後悔が私の中から消えることはないでしょう。
ガンは見つかった時に治療をあせることはないんです。一日、一日大きくなるわけではないんですから、可能な限りの事を調べ、必要とあらばセカンドオピニオン、サードオピニオンと意見を求め、環境やその後の生活の事、自分の性格や死生観、色んな事をじっくりと考えて後悔のないように納得して治療方法を選択するべきでしょう。
最悪の状態の時に、少しでも希望が見えればそこにすがりたくなるのが人間です。でも、こと命に関してはもっといい方法はないかと貪欲に向き合ってもいいのではないでしょうか。
父が、手術した後、言ってました。「経験してはじめてわかった。手術は大変なもんだな。悪いところ取ってしまうというイメージしかなかったけれど、手術によって色々と大変な事が起きるんだな。俺はもう手術はしないぞ」
だから言ったでしょうじゃないけれど、自分のイメージと現実とのギャップをきちんと埋めてから、治療に入らないと医療者との間のトラブルにも繋がります。それから、最近医療者に対して不条理な事を言ったり、治療費を払わないなどのモンスターペイシェントが問題になっていますが、その背景には病気は治るという誤解があります。特にガンなどの深刻な病気は、病気の進行は止まっても病気になる前と同じ身体に戻る事はないのです。良くならないとか、体調が悪いとかストレスを感じ誰かにぶつけたいのはわかりますが、それは仕方がないことなのです。医療は最善をつくしても100パーセントではないと言う事を私達も理解しなければありません。
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