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辻 正仁の「音(オン)ラインにゅ〜す」 <2007年、印象に残ったオススメ盤 >


12月30日(日) 12時00分
文:辻 写真:辻



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Milco最新盤「恋のアルデンテ」は名曲揃い
 〜勝手に選ぶ今年の傑作〜

 本年最後の「音ラインにゅ〜す」、今回は今年発表された作品の中から、僕が特にオススメしたいものを紹介いたします。

 僕がパーソナリティーを務めているラジオ番組「KurageYa本舗」(FMドラマシティ77.6MHz 毎週月曜午後6時〜)で、毎年勝手に「俺レコード大賞」とか「俺新人賞」とか名付けて紹介してるんですが、その中から2組のアーティストを選んでみました。正月休みにする事がなくて、なにか良い音楽でも聴いてみたいという方はお試し下さい。

 まずは「新人賞」は、ダニエリア・コットンという女性シンガーソング・ライター。アルバム「Bang My Drum」は地味ながらいぶし銀の味わいがある作品。こういうのは時代を問わず聴き続けることができます。

 新人と言っても、本国アメリカではインディーズレーベルから既に作品を発表していて、今回はセカンドアルバムなんですけどね。日本ではこれがデビューアルバムということになるので、新人賞にしときます。

 黒人アーティストながら、幼い頃から白人系のロック音楽を聴いて育ったと言うだけあって、ノリはやはりロック色が強い。そこに、母親譲りのゴスペルテイストが注入されて、黒人特有の声帯から発せられるボーカルが味わえるという、意外と珍しいケース。 

 チラっと聴くだけだと、よくあるオールドロックみたいですけどね。その安心感の中でじっくり聴くと、やはり白人の作ったロックとも、黒人のアイデンティティーを押し出したソウルとも違った感触が楽しめる。

 60年代後半に、アメリカ南部を中心に盛り上がったスワンプロックというのがあったけれど、アレは白人のミュージシャンが、黒人のブルースやソウルのテイストを自分の音楽に取り込んだ結果生れたものだけれど、ダニエリア・コットンの場合は、丁度その逆。自分が生来持っている黒人独特の素養を、白人ロックの中で表現したというところだろうか?

 彼女はジャニス・ジョプリンと比較されることが多いようだが、黒人的なエモーションを吸収した白人シンガーと、白人のセンスを吸収した黒人シンガーの対比と類似点が興味をひくのかもしれない。

 さてもう一組は、小樽市出身の菅原龍平率いるバンド「Milco」。「俺レコード大賞」というか「俺最優秀楽曲賞」を捧げたいです。

 彼らが今年発表した「恋のアルデンテ」というミニアルバムは、ロックの疾走感とポップスの切なさが入り混じった、これまたいつまでも飽きの来ない傑作。タイトル通り、恋している男女の心象を背景に、オトナになりきれていない少年少女の姿が描かれている。そこにあるイノセンスや歯がゆさ、やるせなさなんていうのは、聴き手の年代によって、ノスタルジーとしても、リアルタイムの自身の心情としても響いてくるのではなかろうか?

 もう、ポップ・ロックの永遠のテーマに、小ざかしいひねりナシに真正面から取り組んでます。ヘタすると時代錯誤に陥るし、今や個性をアピールするために色んな表現手段とるのが当たり前ですからね。今時珍しくもあり、難しいんですよこういうアプローチは。

 そうしたトライを堂々と成し遂げたことで、Milcoは逆に他とは違う存在感を打ち出せているような気がする。

 最近ってやたらと「君」を励ます歌が多いじゃないですか。「君のそばにいるよ」とか「君の悲しみを救いたい」とか。正直、僕の歳になると微妙に空々しく感じて、感情移入できない事もあるんですよね。自分の機嫌によっては「んなことできるワケないじゃん」とか思う事もあるんですよ。曲書いてる人には悪いけど。

 そんな中で「恋のアルデンテ」に収録されている「はなれられない」という曲のリアリティに胸打たれました。洋の東西を問わず、メジャー、インディーズの境界もなく、今年聴いた曲の中で一番の名曲です。

 なんせタイトルがタイトルですから。もう単純に女の子に恋をして、「君からはなれられない」っていう歌ですよ。女の子にも、自分の感情にも翻弄されて、嬉しいやら切ないやらでのた打ち回ってるんだけど、恋することが自分の力になってるような。「あの頃の恋ってこうだったよな」っていう気持ちがよみがえる歌です。変にメッセージしてる歌よりもよっぽど切実で健全な気がしますよ。

 来年はね、こういうMilcoみたいな音楽がもっと浸透して欲しいし、この屈託のなさが受け入れられるような世の中になって欲しいもんです。そんな気持ちを込めての、「俺最優秀楽曲賞」をMilcoの「はなれられない」に進呈いたします。特に賞金、副賞などはございません。






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ダニエリア・コットン、日本でも着実に浸透中



■辻 正仁(つじ まさひと)

1966年生まれ。
FM新さっぽろ「海月屋本舗(毎週月曜18時)のパーソナリティ、ミュージックショップ「音楽処」の準スタッフ等々、様々な分野で活動中。
自主制作レーベル「海月屋(くらげや)」主宰。



関連サイト

Milco 公式HP
http://milco.jp/index2.html






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