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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第5回


01月13日(日) 00時00分
文:惠谷 治 



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この写真は、金正日の最初の写真集『我らの指導者』に掲載されているもので、「1975年10月3日に旺載山を視察中の親愛なる指導者金正日同志」というキャプションがついている。中国との国境に近い旺載山革命史跡地は、その前年から建設されており、金正日は74年5月にも現場を訪れている。薄いサングラスをかけた34歳の金正日は、このとき対南工作機関を震撼させる大検閲を実施している最中でもあり、自信に満ちた態度であることがみてとれる。写真を見ると、金正日が発案した金日成バッジを全員が着用している
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第5回] 謀略機関を完全掌握し権力基盤を構築した金正日

 金正日は総括会議において、対南工作機関が犯した過ちを一つ一つ指摘した。

 「最大の過失は、幹部事業〔人事〕が誤っていたことである。対南工作に直接かかわった革命家、すなわち工作員の選抜、教育、訓練において欠陥があった。対南工作員は革命家でなければならず、革命家的素養がない人間を、革命工作に動員しても、まともな工作活動ができるはずはない。政治的、思想的素養のある人間を、きちんと教育、訓練、指導できていなかった」(『金正日と対南工作』現代コリア1999年4月号37頁)

 この金正日の批判は、その後の工作員教育カリキュラムに反映されることになる。

 次に、対南工作の基本原則が守られてないことに言及した。

 「対南工作の基本は地下党を組織し、主力を形成することである。革命勢力の主力である地下党を建設する上で、基本原則が守られていない。なかでも組織原則の違反がある。革命的組織を建設したのではなく、家族党、寄り合い所帯、縁故者同士の集まりを作ったに過ぎない。革命活動を実施し、革命を指導できる地下党の建設に失敗した」

 金正日の指摘は鋭く、対南工作の担当者は脅えるしかなかった。また、幹部の「独断主義」「独善主義」「官僚主義」が対南事業を失敗させたと述べ、工作資金の浪費についても追及した。工作資金は米ドルで支出されているが、当時の北朝鮮は数十万ドルという単位の現金は保有しておらず、中国に依頼して調達していた。そのように苦労して入手したドルを、米CIAの二重スパイや韓国KCIAのスパイらに、まんまと詐取された事件について、金正日は激しく非難した。

 1970年代初め、日本で特派員をしていたこともある韓国言論界の重鎮で、貿易商をしながら日米を往来していた李某は、韓国の国会議員、将軍、高級官僚たちと密接な関係があり、統一のために何かやりたいと党文化部や党連絡部の関係者に接触してきた。李某は信頼に足る人物と判断され、韓国でクーデターを起こすこともできるという彼の言葉を信じて、年に数回、李某が北朝鮮を訪れるたびに1回あたり10万ドルほどの工作金が香港経由で送金され、1975年初めまでに40万ドル以上が送金された。しかし、何の成果も上がらず、李某の言行が一致しておらず、調査の結果、二重スパイであることが判明した。

 莫大な工作資金が革命組織ではなく二重スパイの手に渡ったこと自体も問題だったが、より深刻な問題は、この秘密工作が金仲麟党書記 の「功名主義」によって、配下の部長に連絡されることなく、独断でおこなわれたことだった。

 3時間に及ぶ演説で、金正日は次のように結論した。

 「過去のことはすべて白紙に戻そう。新たな戦略、戦術をもって、新たな姿勢と覚悟をもって仕事を始めよう。そのためには、過去の経験、教訓、誤謬を探るため、継続的に総括する必要がある」

 この金正日の言葉に従って、合同党総括会議が終了した後も、対南工作機関では引き続き総括会議を継続しなければならなかった。各部局、各課での総括会議は1976年4月初めまで続けられた。

 金正日は検閲事業を通じて、内部的欠陥や組織や人物の弱点を把握し、問題点を解決するためには、金正日自身が独自の戦略、戦術を立てなければならないという大義名分を獲得した。金正日は、国家政治保衛部に続いて、対南工作部門に対する集中検閲によって、北朝鮮の秘密機関を完全に掌握したのだった。

 金正日は「対南工作員の選抜、教育、訓練において欠陥があった」と指摘し、工作員が資本主義社会に適応できるように、「現地化、敵区化されるように教養体系を変えなければならない」と主張した。また、第3国経由の迂回工作では、工作員が外国人の身分で合法化されなければならないと述べ、「日本に行けば日本人に、中国に行けば中国人に、カンボジアに行けばカンボジア人になり、言語・習慣・職業問題を合法的に解決できなければならない」と語り、工作員の「現地化教育」の必要性について強調した。(つづく)







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