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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第26回


03月16日(日) 00時00分
文:惠谷 治 



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米軍が1950年6月22日に撮影した「38度線で捕らえた北朝鮮の女性ゲリラ」とする写真。米軍の説明によれば、「幼児を背負った女性を含む女性ゲリラが北朝鮮軍の侵攻数日前に38度線付近で韓国軍兵士によって捕らえられ、捕虜収容所に拘禁された」というが、女性たちがゲリラだったという証拠については言及していない。ただ、女性たちの毅然とした表情や歩いている姿を見ると、避難民とは思えないのは事実である(ハリデイ/カミングス共著『朝鮮戦争』より転載)
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第26回] 職業軍人でないにもかかわらず前線司令官を務めた金策副首相

 1950年6月15日、シュトゥイコフ大使は、モスクワに次のように報告した。

 「6月25日早朝に進攻を開始する。はじめに朝鮮人民軍の兵団と部隊が◎津半島を攻撃し、その後南朝鮮西側沿岸を進み、総攻撃を加える。さらにソウルが占領され、漢江が支配下に置かれる。同時に東部地域では北朝鮮軍が春川市、江陵市を解放する。結果として敵の部隊はソウル地区で包囲され壊滅されることであろう。作戦の最終段階では、南朝鮮のその他の地区は敵側残存部隊の壊滅と都市・港湾の奪取により解放される」(トルクノフ『朝鮮戦争の謎と真実』118頁)

 人民軍は機動演習の名目で、6月12日から各師団が陸続と38度線近くに移動し、23日までに7個師団と1個戦車旅団などの全兵力が配置についた。韓国軍は38度線に4個師団、ソウルに1個師団を配備していたが、戦車は1両もなかったのである。

 6月20日、金日成は南侵開始日を25日と再確認し、その日時は中国にも通告された。翌21日、シュトゥイコフ大使は、金日成からの報告をモスクワに伝えた。

 「無線傍受および諜報情報によれば、南側は来るべき朝鮮人民軍による進攻に関して詳細な情報を握っている、と金日成は私に伝えた。その結果、南側は軍隊の戦闘能力強化のため対策を講じている。防衛線が強化され、◎津方面に追加部隊が集結している。このため金日成は当初の計画を変更し、全境界線に沿って今すぐ攻撃すると申し出た」(『朝鮮戦争の謎と真実』119頁)

 事実、CIA(米中央情報局)ソウル支局は、「38度線の北側で大規模な部隊移動が展開され、全住民が北側2キロ以遠に避難した。鉄道は人民軍が接収し、38度線付近への部隊、兵器弾薬の大量輸送が実施されている」という情報を入手し、6月19日、東京のGHQ(米占領軍総司令部)に報告していた。しかし、GHQはこの報告を握り潰し、本国には別の報告を上げていたのだった。

 6月23日、平壌中心部から15キロほど北方の市内兄弟山区域西浦洞の天然洞窟のなかに、人民軍総司令部に代わって戦闘部隊を指揮する「前線司令部」が設置された。前線司令官は本来であれば、崔庸健がなるべきだったが、職責剥奪の状態にあったため、金日成は金策副首相を前線司令官に任命した。

 「金策は最近まで産業相であり、もともと職業軍人でなかった。そういう彼が急に前線司令官になったからといって、20万の軍を指揮するには不適である。それで職務は『前線司令官』であるが、実際は政治委員の役をするか、兵站(補給)の監督などをし、軍事問題とか作戦の指揮は姜健にまかした。しかし金日成は多くの野戦軍の将官の耳目を意識したのか、あるいは金策の身辺に気を使ったのか、または金策の申し出によるのか、金策に大将の階級を与えず中佐階級を与えた。しかし金策は、そういう問題に不満を感じるような人物ではなかった」(『朝鮮戦争の真実』225頁)

 前線司令部の陣容、は以下の通りとなった。

  前線司令官    金 策(中佐)
  総参謀長     姜 健(中将)
  文化部司令官   金 一(中将)
   作戦局長    愈成哲(少将)
   砲兵局長    金鳳律(少将)
   工兵局     朴吉南(大佐)
   通信局     朴英順(大佐)
   偵察局     崔 遠(大佐)
   文化局長 金 日(少将)
   安全局長    石 山(少将)
   後方局長    金英洙(少将) 
   検察局長    金学仁(少将)
  第1軍団長    金 雄(少将)
   文化部軍団長  金在郁(少将)
   参謀長     黄成福(少将)  
  第2軍団長    金光×(少将)
   文化部軍団長  林 海(少将)
   参謀長     崔 仁(少将)

 こうして、開戦準備は完了した。

 ところが、翌日、事件が起こった。6月24日の昼、第1軍団参謀長の黄成福少将は、金雄軍団長の姿が見えないことに気づき、午後5時になっても所在不明のため、焦燥のあまり総司令部のソ連顧問に報告した。作戦地図もなくなっているという報告をソ連顧問から受けた金日成は、慌てふためき、一時は南侵計画の中止まで考えたほどだった。

 しかし、夕方6時頃、金雄軍団長は幕僚たちとともに指揮所に姿を現わし、現地偵察に出かけていたことが判明した。金雄は秘密保持のために、その行動を誰にも告げていなかったのだ。いきさつを知った金日成は、黄成福を「臆病者」「上官を信頼しない者」と激しく非難し、夜8時、黄成福参謀長を解任した(林隠『北朝鮮王朝成立秘史』165頁)。

 そのため、第1軍団は参謀長不在のまま、戦争に突入したのだった。(つづく)

◎は雍のしたに瓦 ×はニンベンに夾







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