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面積が足りなかった


 
滑った。転んだ。擦り剥いた。
酒を飲み、タクシーを降りて自宅に帰る途中、雪で滑り路面で顔を擦り剥いた。
こうした状況で同じような怪我をすることは珍しくない。人生4回目だ。
俺の擦り剥けた顔を見た人は、一様に驚くが、家族で驚くのはカカァと息子を除く、娘ただ一人である。息子の三四郎は3年前の小学校1年生の時、自転車の居眠り運転という、あまり耳にしたことのない特技を活かして転び、顔をズタズタに擦り剥いた。
皮膚の削れた面積は、少なくみても俺の3倍はあった。
三四郎が擦り剥けた顔を地球儀に見立てると、当時は7月20日だった「海の日」に生まれた三四郎の傷の面積はまさしく海と同じだった。写真の傷は少々日数が経過したものだが、傷の面積は海が地球の面積の3分の2であるのと同じく、擦り切れていない皮膚の方が少なかった。
片や俺の面の傷は地球から海とユーラシア大陸を差し引いたほどの小面積にすぎない。
傷の面積で息子に完敗した俺は、当然ながら翌朝、三四郎に「俺も転んだけど、お前には完璧に負けた」と仁義を切った。
その時、三四郎は「俺の勝ちだな」と微笑んだ。
俺も思わず笑った。笑うと擦り剥けた皮膚が引っ張られるわけだが、この程度の傷で痛がる姿を息子に見せるわけにはいくまい。我慢してガハハッと笑った。 










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