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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第41回


04月30日(水) 00時00分
文:惠谷 治 



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朝鮮戦争の激戦地となった鉄原(江原道鉄原郡)は38度線の北側にあり、開戦までは北朝鮮が支配していた。朝鮮戦争で休戦交渉が始まると、交渉に有利な立場を確保するため、鉄原、金化、平康を結ぶ「鉄の三角地帯」と呼ばれる地域で寸土を争う一進一退の戦闘が展開された。休戦協定で軍事境界線は鉄原の北部に引かれたため、現在は「安保観光」として鉄原を訪れることができる。上の写真は、北朝鮮が支配していた1946年、ソ連式工法の無鉄筋コンクリートで建設された旧労働党庁舎の廃墟である。かつてはソウルから元山に向かう鉄道(京元線)が鉄原を通っていたが、現在は分断され、韓国の最北端駅となった月井里駅には戦争当時に破壊された列車が保存されている(下の写真。いずれも著者撮影) 
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第41回] 朝鮮戦争直後の拉致の疑いが濃厚な「特定失踪者」

 政府が認定する北朝鮮による日本人拉致被害者は17人だが、それ以外にも多数存在していることに議論の余地はない。拉致被害者を「救う会」の事務局長だった荒木和博氏は、政府認定者以外の「拉致の疑いを排除出来ない、あるいは拉致の疑いが濃厚である」いわゆる「特定失踪者」の情報を集める「特定失踪者問題調査会(調査会)」を、2003年1月に設立した。

 調査会が公表している特定失踪者は、2008年3月26日現在で278人にものぼるが、調査会は公開リストのなかで、拉致の疑いが濃厚と考えられるケースを「1000番台」とし、それ以外を「0番台」としている。

 公開されているなかで一番古い特定失踪者は、1948年7月に失踪した平本和丸氏(当時20歳)である。平本氏は中学生まで咸鏡南道咸興に住んでおり、戦後はトロール船に乗っていた。平本和丸氏は、弟に「船で遠洋に出るため当分会えない。別れに来た」と言った後に消息不明となった。弟の平本敏昭氏は広島県内で小学校の教諭をしていたが、彼(当時21歳)も1950年8月に失踪した。その後、平本敏昭氏は大分県中津市の朝鮮在住時代の友人宅にいたことが判明しているが、9月21日以降消息不明となっている。

 平本和丸氏が失踪したのは、金日成が韓国人の拉致指令を出した後であり、在日韓国人の安●濬(第21回参照)が北朝鮮工作員の手引きにより、隠岐島から「直接ルート」で密出国した1948年12月と時期も重なっている。すでに北朝鮮では対日工作員を養成する教育・訓練システムは確立されており、安●濬は2カ月の教育・訓練を受けた後、1949年5月、ノルウェーの貨物船で名古屋港から不法入国している。

 こうした事実を考えると、平本和丸氏が北朝鮮の工作員に拉致されたとしても不思議ではない。ただ、弟の平本敏昭氏も失踪しているのは、兄からの連絡を受けて、どこかで合流した可能性も考えられる。以後、連絡がないということは、2人が騙されて北朝鮮に連れて行かれた可能性は高いが、他のさまざまな推測も可能で「拉致の疑いが濃厚」とまでは言えないため、2人は「0番台」となっている。

 調査会が拉致の疑いが濃厚として「1000番台」に指定したもっとも古いケースは、朝鮮戦争が終わった直後の1953年10月に失踪した徳永陽一郎氏(当時18歳)である。長崎市で店員をしていた徳永陽一郎氏には転職の話があり、履歴書を書いている途中に、突然いなくなった。10月17日、門司から家族に届いた書留には、家族から借りていた金が同封され「いい仕事があった」「歩いてでも帰ってきます」と書かれてあったという。

 北朝鮮による拉致の目的を考えると、次の6つに分類することができる。

(1) 秘密隠蔽のため
(2) 背乗り(身分盗用)のため
(3) 工作員の現地化教育の教官とするため
(4) 拉致被害者などの配偶者とするため
(5) 特殊技能者(専門家)を必要とするため
(6) 北朝鮮に有害な人物を除去するため

 そして、拉致方法で分類すると、次の3つが考えられる。

(1) 遭遇拉致(工作活動の目撃者など上記目的の1に相当する場合)
(2) 条件拉致(上記目的のうち2から5に相当する場合)
(3) 指名拉致(上記目的のうち5と6の場合)

 調査会の公開リストによれば、徳永陽一郎氏のあとに11人の0番台が続き、次の1000番台は、秋田市の木村かほる氏(当時21歳)となる。日赤秋田高等看護学校3年生の卒業式を10日後に控えていた1960年2月27日、寮の同室の友人に「ちょっと出かけてくる」と言って出て行ったきり、行方不明となった。彼女が秘密隠蔽のために「遭遇拉致」された可能性も十分に考えられるが、その1年前(1959年5月4日)に失踪した安達恵美子氏(当時23歳)、その1年後(1961年9月24日)に失踪した正木冽子氏(当時18歳)も看護婦だったことを考え合わせると、北朝鮮では何らかの理由で日本人看護婦を必要としていて、「看護婦を拉致せよ」という「条件拉致」だった可能性も浮上してくる。

 調査会では特定失踪者を、医療関係者、電話関係者、印刷関係者など職業別、カップルや出身校別などに分類し、「マッピング・リスト」として発表している。(つづく)

●は珂の可が民







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