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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第55回


06月11日(水) 00時00分
文:惠谷 治 



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左は、1989年9月19日にフランスの地球観測衛星SPOTが撮影した平安南道寧辺付近の衛星写真で、この写真によって北朝鮮の核疑惑が噴出したのだった。右はその写真に対応する日本の旧陸軍参謀本部陸地測量部が朝鮮統治時代に作製した5万分の1図に、私が日本で初めて寧辺の核施設を紹介したもので、1992年4月9日号のサピオ誌(小学館)に掲載したものである。寧辺で研究用原子炉の建設が始まったのは1962年1月のことであり、時期から推定すると社会安全省第15局が設置した工作員養成所というのは、核開発センターの警備のためだった可能性が高い。「南朝鮮総局が開設して統制下に置いた清津、寧越〔寧辺の誤記と推定〕各工作員学校」(『北朝鮮特殊部隊』72頁)という記述のなかの「寧辺工作員学校」というのは、同一施設か労働党独自の警備施設ではないかと思われる。
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第55回] 社会安全省と人民軍偵察局の対南工作活動も強化された

 1950年代後半以後に日本で逮捕された工作員は、訓練教官の指示通りに年齢や職業は自供するものの、所属機関を明らかにすることがなくなり、内務省系か労働党系か区別できなくなっている。しかし、1961年に「南朝鮮総局」が新設され、1962年に「対南事業総局」に拡充再編された頃から、対日工作はそれまでの内務省 (社会安全省)よりも、労働党の組織が主導権を握るようになったのではないかと推定される。

 1960年代初頭の社会安全省は、次のような実情であった。

 「情報、転覆活動および国内治安に関する広範囲の責務を負う社会安全省もまた、この時期に機構改編を行っている。社会安全省は隷下の国際部(旧対外保安局)を通じて限定的な対外積極情報活動を行った。対南朝鮮活動部および対南朝鮮特殊戦部隊は解体し、その責務の大部分は党の連絡部と軍の偵察局に吸収された。在日朝鮮人指導部(旧指導部)は朝鮮総連による非公然情報活動および転覆活動に関する責務を負っていた」 (『北朝鮮特殊部隊』73頁)

 旧内務省にあった「対南朝鮮活動部および対南朝鮮特殊戦部隊」という組織の詳細は不明だが、いずれにせよ、その組織は党連絡部と人民軍偵察局に分散吸収されたのだった。また、旧内務省には朝鮮総連を指導する「在日朝鮮人指導部」があったとされるが、前回既述したように、当時は党文化部にも朝鮮総連課が存在していた。しかし、その工作分担については明らかではない。

 「この時期に対南工作を担当した部署は社会安全省第15局であった。社会安全省第15局は平安南道寧辺と平壌郊外に、韓国に浸透させるための工作員や連絡員を養成する訓練施設を設置し、軍事境界線や海上を経由して工作員を韓国に浸透させた。これと並行して、日本を経由した対南工作にも力を入れた」(『北朝鮮情報機関の全貌』24頁)

 社会安全省の「第15局」が、平壌郊外と平安南道寧辺に工作員養成所を設置していたことは、国家安全保衛部の反探課指導員で1998年に韓国に亡命した尹大日氏も書いている。

 「1962年、内務省が社会安全省になると同時に〔内務省情報局は〕政治保衛局と改称され、これまでのスパイや反体制人物の摘発、検挙といった任務に加えて、対南工作をも主導することになった。その工作を担当したのは政治保衛局傘下の社会安全省第15局だった。社会安全省第15局は平安北道寧辺郡と平壌市郊外に工作員の養成訓練拠点を持ち、軍事境界線や海上から多くのスパイを韓国に侵入させた。また、直接韓国にスパイを送るだけでなく、迂回潜入、つまり日本を経由して韓国に工作員を送り込んだ」(『「北」の公安警察』74頁)

 平安南道の寧辺は現在、核開発センターがあることで知られているが、人目につかず秘密保全が容易な地域だったために、工作員養成所が設置されていた可能性も否定できない。しかし、寧辺で研究用原子炉の建設が始まったのは1962年1月のことであり、時期的に考えると、社会安全省の工作員養成所というのは核開発センター警備のための偽装だった可能性が高い。現在、寧辺周辺は社会安全省の後身である国家安全保衛部によって、厳重に管理されている。

 労働党対南事業総局、社会安全省と並ぶ3大工作機関である人民軍偵察局については、次のような情報がある。

 「偵察局は韓国軍および外国軍の軍事情報を対象とする伝統的な責務に加えて、韓国の一般的な政治経済情報の収集まで任務を広げ、さらにはゲリラ戦および特殊戦の任務も与えられた。1962年から68年までは情報収集を優先する一方、ゲリラ戦と特殊戦への力の入れ方は政治的重要度により変動した。この間に偵察局は組織の規模、責務事項および能力の強化を続けた。その結果、3個徒歩偵察基地、第448陸軍部隊(海上護衛部隊)、第17偵察旅団、第38空挺団、第283陸軍部隊および第124陸軍部隊の規模まで成長を遂げている。さらに政治、情報、特殊、訓練・計画、DMZ警察各部、外国語大学および写真要員室も存在した」(『北朝鮮特殊部隊』73頁)

 この間、韓国ではクーデターで政権を握った国家再建最高会議の革命委員会指導部は、早期に政府を民政に復帰させることを公約としており、1962年12月17日の国民投票で79%の賛成を受けたことを契機に、朴正煕議長は大韓民国を再び大統領制に戻し、12月26日、「第3共和国」を成立させた。(つづく)







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