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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第58回


06月20日(金) 06時30分
文:惠谷 治 



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左上は、1963年4月1日の「第1次能代事件」で、秋田県能代市の浅内浜に漂着した死体A(30歳前後)の写真。右上は、死体Aが所持していたソ連製拳銃トカレフと実弾8発が入っていた弾倉、そして革ケース。左下は、死体Aが所持していた大阪府公安委員会発行の「金成浩」名義の偽造運転免許証、右下は、死体Aが所持していた能代市付近の略図で、道、川、駅、村、高山などが記入されており、スパイ道具の秘密埋設地点を示していると思われる。私が調べたところによると、図中の駅は国鉄五能線の「東八森」駅で、高山というのは「薬師山(312m)」、図中の手前の山は「母谷山(276m)」、川は「水沢川」のように思われる(写真はいずれも内外政治研究所編『スパイの世界』より転載)
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第58回] 工作員のゴムボート使用とピストル武装が初めて確認された能代事件

 拉致の疑いが濃厚として特定失踪者問題調査会が1000番台リストとしている秋田市の木村かほるさん(第41回参照)が行方不明になった1960年から、千葉県の加瀬テル子さんが失踪した1962年にかけて、判明している北朝鮮の工作員の動向を時系列的に整理してみると、次のようになる。

1960年2月27日 秋田市で看護学生だった木村かほるさん(21歳)が失踪
1960年6月 崔燦寔(大寿丸事件)が工作員に徴用され、4カ月間の密封教育
1960年9月 京都府丹後町の経ケ岬の海岸から黄成国(日向事件)が潜入
1960年9月26日 兵庫県浜坂町の海岸から金俊英(浜坂事件)が脱出に失敗して逮捕
1960年10月19日 山形県酒田市の海岸から崔燦寔(大寿丸事件)が潜入
1961年2月 薫吉模(薫グループ事件)が工作員に徴用され、4カ月間の密封教育
1961年2月 馬今鳳(酒田事件)が工作員に徴用され、6カ月間の密封教育
1961年6月29日 新潟県村上市の柏尾海岸から薫吉模(薫グループ事件)が潜入
1961年8月15日 山形県酒田市の十里塚浜から馬今鳳(酒田事件)が潜入
1961年8月19日 山口県下関港から崔燦寔(大寿丸事件)が密出国
1961年9月24日 新潟県村上市の岩ケ崎海岸から金泰煥(解放号事件)が潜入
1961年9月以後 対南工作を強化するために「南朝鮮総局」を新設
1961年10月 山形県酒田市の海岸から崔燦寔(大寿丸事件)が再潜入
1962年2月以後 「南朝鮮総局」を拡充・再編した「対南事業総局」が発足
1962年4月 千葉県で家事手伝いの加瀬テル子さん(17歳)が失踪
1962年9月23日 新潟県村上市の大月海岸から金鳳国(解放号事件)が潜入直後に逮捕
1962年10月16日 兵庫県の余部海岸から朴基華(寝屋川事件)が潜入

 公開されている特定失踪者は、1960年には木村かほるさんを含め8人、1961年には5人、1962年には加瀬テル子さんを含め4人である。

 加瀬テル子さんは「千葉の海から来た」と話していたという未確認情報もあるが、この時代は工作母船による日本への潜入方式がようやく確立された時期であり、工作員の潜入・脱出地点は日本海側にあり、「千葉の海(太平洋側)」に工作船を出没させるほどの力量は北朝鮮にはなかったと思われる。確認されている当時の潜入・脱出地点は、山陰から北陸地方にかけてであり、まだ東北や北海道の海岸を利用するまでには至っていなかった。

 特定失踪者問題調査会は加瀬テル子さんの失踪について、次のように分析している。

 「当時の〔千葉県〕海上町周辺は、砂鉄、水あめが大きな産業であり、在日の企業・従事者が多かった。そして、それらは〔長野県大町を経由する〕『大町ルート』によって、新潟、富山へ輸送され、北朝鮮に輸出されていた。その『大町ルート』で多くの失踪事件が発生している。また近隣の旭市、飯岡市、八日市場市周辺で失踪が多発しており、それらは相互につながりがあると見られる」(2004年5月22日の第5次発表)

 1963年4月1日、秋田県能代市の浅内浜の波打ち際に、2つの遺体とゴムボートが漂着しているのが発見された。1つの死体は、革ケースに入ったソ連製拳銃トカレフを所持しており、北朝鮮製無線機、暗号表7枚、大阪府公安委員会発行の「金成浩」名義の偽造運転免許証、東京・大阪・韓国の地図、米ドル・日本円・韓国ウォンなどの工作資金も発見されたため、潜入に失敗した北朝鮮工作員と断定された。これは東北地方で発生した初めてのスパイ潜入事件で、ゴムボート使用とピストルでの武装が初めて確認された事例だった。

 それから1カ月ほどたった5月10日、2遺体の漂着地点から北に5キロほど離れた能代市落合の米代川河口付近(大関浜)で、腐乱死体が発見された。この死体もトカレフ拳銃を所持しており、解剖の結果、胃の内容物が同じことなどから、3人は同一グループと判断され、前者は「第1次能代事件」、後者は「第2次能代事件」と命名された。

 第2次能代事件の翌日(5月11日)、石川県羽咋郡高浜町(現志賀町)の沖合で3人の漁民が行方不明となる事件が発生した。これがいわゆる「寺越事件」で、確認されているなかではもっとも古い拉致事件である。(つづく)







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[第35回]国内派(南労党)の牙城だった工作員養成機関「金剛学院」
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[第40回]1950年代に日本に潜入していた工作員は内務省所属
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[第41回]朝鮮戦争直後の拉致の疑いが濃厚な「特定失踪者」
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[第49回]「赤化統一」を未然に防いだ朴正煕少将の5・16軍事クーデター
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[第52回]1950年代半ばに対日工作員の日本潜入方式を確立
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[第53回]戦前に日本で生活した経験者を対日工作員として徴用
http://www.bnn-s.com/news/08/06/080602134634.html

[第54回]対南工作機関は「対南事業総局」と改称されて規模を拡大
http://www.bnn-s.com/news/08/06/080605142340.html

[第55回]社会安全省と人民軍偵察局の対南工作活動も強化された
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[第56回]北朝鮮から届いた写真の人物は加瀬テル子さんだった
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[第57回]潜入工作員が密航者だと警察に偽装自首する手法も登場
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[第59回]寺越事件の家族を訪朝時に迎えたのは工作機関の党連絡部日本課長
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[第60回]寺越事件の犯人は清津連絡所のベテラン戦闘員だった呉求鎬
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[第61回]寺越武志さんをかばって抵抗し射殺された寺越昭二さん
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[第62回]1日に2カ所同時に工作船を派遣できるようになった北朝鮮
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[第63回]工作船による潜入状況が具体的に明らかになった神田事件
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[第64回]1964年8月に摘発された韓国の「人民革命党事件」は真相不明
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[第65回]韓国軍によって初めて捕獲された人民軍偵察局の小型潜水艇
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[第67回]粛清騒動で対南事業総局は解体され対南工作担当書記を新設
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[第68回]金日成が最高人民会議で言及した韓国内のスパイ組織
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[第69回]半島統一を目指して1967年に再編された第124軍部隊
http://www.bnn-s.com/news/08/07/080722131318.html

[第70回]日本の官公庁を震撼させた総連工作員の「外務省スパイ事件」
http://www.bnn-s.com/news/08/07/080723153431.html

[第71回]北朝鮮の対南工作活動を在日朝鮮人密輸組織が支援
http://www.bnn-s.com/news/08/07/080728135238.html

[第72回]「青瓦台を襲撃し、朴正煕の首を取れ」と命令された工作組
http://www.bnn-s.com/news/08/08/080730101123.html

[第73回]兵装転換に手間取りプエブロ号救出に間に合わなかったF4ファントム
http://www.bnn-s.com/news/08/08/080801175105.html

[第74回]瀕死の韓国人捕虜の前で自白を強要されたプエブロ号の艦長
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[第76回]1度の浸透では朝鮮戦争以来最大規模の蔚珍・三陟侵入事件
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[第79回]体をゴムボートに縛りつけられて工作船から投げ出された工作員
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[第80回]日本人戸籍を入手し「背乗り」して真正旅券を不正に取得
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[第82回]日本に密航して大学院修了後にスパイとなった韓国人
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[第83回]工作員教育の一環として1970年代初めまでに取り入れられた海外研修
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[第84回]煙草のチェリーの箱のなかの1本から発見された小さな乱数表
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[第85回]1960年代末の特定失踪者は6人全員が10代後半の青年
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[第86回]1969年11月の会議で日本人拉致の必要性を述べた金日成
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[第87回]北朝鮮に拿捕された韓国漁船の乗組員を工作員として教育
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[第88回]潜入工作員と出迎える在日工作員がトランシーバーで連絡
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[第89回]偵察局の工作員養成機関であることが明らかになった第198軍部隊
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[第90回]高速で逃げ去る際に爆発音に似た巨大な音を出す工作船
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[第91回]佐渡島宿根木の岩陰で工作員の潜入を待ち構えていた捜査員たち
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[第92回]韓国中央情報部(KCIA)を模倣した国家政治保衛部の誕生
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[第93回]人民軍偵察員から党調査部の工作員に移籍された辛光洙
http://www.bnn-s.com/news/08/10/080930150040.html

[第94回]船外機付きゴムボートの侵入が初めて確認された「温海事件」
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081003105459.html

[第95回]工作員専用の915病院で目撃された日本人拉致被害者
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081006163131.html

[第96回]渡辺秀子さん殺害と子供2人の拉致を指示した女性工作員
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081010115346.html

[第97回]訪日韓国人が多数包摂されていた「鬱陵島拠点間諜団事件」
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081014104524.html

[第98回]李厚洛KCIA前情報部長の拉致を命じた金日成
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081015123805.html

[第99回]遠隔操作で朴正煕大統領を爆殺する装置を新たに開発
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081020105201.html

[第100回]在日韓国人を包摂し大統領狙撃犯に仕立て上げた朝鮮総連
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081021155348.html

[第101回]工作員の証言で新たに判明した日本人拉致被害者
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081025092020.html

[第102回]日本人化教育の教官獲得のため拉致を定式化させた金正日
http://www.bnn-s.com/news/08/10/081028153758.html

[第103回]すべての活動は金正日の「唯一指導体系」に対する忠誠心競争
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081030163315.html

[第104回]小泉首相に「特殊機関の一部が恣意的に拉致した」と答えた金正日
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081104123642.html

[第105回]帰国して子供たちと再会した後も口を開かない拉致被害者たち
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081105145221.html

[第106回]曽我さん親子を拉致した女工作員の弟は有名なバイオリニスト
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081110143107.html

[第107回]横田めぐみさん以前に日本人拉致はなかったとする金正日
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081111100606.html

[第108回] 北朝鮮の説明から読み取る日本人拉致被害者の所属機関
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081114154336.html

[第109回]平壌で一時期共同生活をしていためぐみさんと曽我さん
http://www.bnn-s.com/news/08/11/081117154502.html






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