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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第65回


07月11日(金) 00時00分
文:惠谷 治 



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1965年7月5日、韓国のソウル北方の臨津江と漢江の合流点で、浅瀬に座礁した小型潜水艇。この小型潜水艇は韓国軍が初めて捕獲したもので、排水量3トン、3人乗りだった。この小型潜水艇は人民軍偵察局海上処(第448軍部隊)所属と推定されている。写真は、バーミューデッツ著『北朝鮮特殊部隊』より転載
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第65回] 韓国軍によって初めて捕獲された人民軍偵察局の小型潜水艇

 東京オリンピックが開催された1964年、韓国と日本は国交を樹立(正式調印は6月22日)し、北朝鮮による日韓会談反対のキャンペーンは挫折してしまった。

 当時は中ソ対立が続いており、北朝鮮は1963年1月にソ連を批判したために、ソ連との関係が悪化していた。しかし、東京オリンピック期間中の10月14日、ソ連共産党のニキータ・フルシチョフ第1書記が失脚すると、北朝鮮は1カ月後のソ連10月革命記念日の記念式典に朝鮮労働党の2人の副委員長(金一と金昌満)が率いる祝賀団をモスクワに派遣し、ソ連との関係改善を図った。

 翌1965年2月、北ベトナムを訪問したソ連のアレクセイ・コスイギン首相が帰途に平壌を訪問し、その後に経済援助が再開された。5月の対独戦争勝利20周年記念日には、人民軍総参謀長の崔光が率いる軍事代表団をモスクワに派遣し、軍事援助協定が締結された。

 8月15日の祖国解放20周年記念式典には、フルシチョフ時代のKGB議長だったアレクサンドル・シェレーピン党書記(副首相)が率いるソ連親善代表団が平壌を訪れた。この代表団には、朝鮮に進駐したソ連極東軍第25軍総司令官イワン・チスチャコフ上級大将、第25軍政治委員のニコライ・レベジェフ少将、「政治司令官」と呼ばれていたアンドレイ・ロマネンコ少将など、金日成にとって懐かしい顔ぶれが揃っており、金日成は朝鮮解放の恩人たちに勲章を授与した。その行事を報道した「労働新聞」は、「金日成同志の夫人」が参席したと伝え、金正日の継母である金聖愛の存在が初めて公式に紹介された。

 その2カ月後、今度は朝鮮戦争後に平壌に駐屯していた中国人民義勇軍司令官だった楊勇(中国人民解放軍副総参謀長)が率いる中国軍事代表団が、朝鮮戦争参戦記念式典に出席するため平壌を訪れた。

 こうしたソ連や中国からの祝賀代表団を受け入れることは、朝鮮解放はソ連軍によるもので、朝鮮戦争には中国軍が不可欠だったという史実が繰り返されることになると考えた金日成は、この年を最後に、祖国解放記念日(8月15日)と朝鮮戦争参戦記念日(10月25日)の行事に代表団を招くことを止め、式典は小規模におこなわれることになった。

 そうした金日成の変化を示しているのが、前年のベトナム秘密訪問に続く、4月のインドネシア訪問である。前年11月のスカルノ大統領訪朝の答礼で、バンドン会議10周年記念会議に参加するためだったが、中ソ両大国と距離を置き、第3世界との連携の強化を目指すのが目的だった。

 金日成は金正日を伴ってインドネシアに向かい、4月14日、「アリ・アルハム社会科学院」において、「朝鮮民主主義人民共和国における社会主義建設と南朝鮮革命について」と題した講演をおこなった。金日成は、この講演において、前年に打ち出した赤化統一の指針である「3大革命力量強化論」について、初めて具体的に明らかにした。

 「思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛ーーこれが、我が党が一貫して堅持している立場」であるとし、初めて「チュチェ(主体)思想」という言葉を使い、「チュチェ思想」によって北朝鮮を朝鮮革命の確固たる基地にする。そして、「南朝鮮の革命は、労働者、農民、そして帝国主義と封建勢力に反対する学生、知識人たちが統一戦線を形成し、革命的で暴力的な手段による反米民族解放闘争に依拠しなければ、実現できない」とし、「この他、国際的な革命勢力との団結、協力を図らなくては成功しない」と述べたのだった。その翌日、金日成はインドネシアで53歳の誕生日を迎えた。

 それから3カ月後の7月5日、韓国のソウル北方の臨津江と漢江の合流点で、浅瀬に乗り上げている小型潜水艇が発見された。満潮時には潜水航行が可能だったものの、水深が浅いため干潮時に船体を晒してしまい、乗組員たちは潜水艇を放棄して、韓国軍に発見される前に脱出するという失態を演じていた。初めて発見された小型潜水艇は第448軍部隊、つまり人民軍偵察局の海上処所属と推定されている。

 続く7月18日、ソウル北方郊外の松湫遊園地に武装間諜(ゲリラ)4人が出現し、駆けつけた韓国軍と銃撃戦を展開し、ゲリラのうち2人が射殺され、2人が逮捕されるという事件が発生した。ゲリラたちは、自動小銃、拳銃、手榴弾、ダイナマイト、無線などを所持しており、逮捕された盧成輯の供述によると、韓国政府要人の暗殺が目的だったという。10月24日には、5、6人のゲリラが江原道楊口郡に出現し、韓国軍の金斗杓大佐一家5人を虐殺するという事件も発生するなど、北朝鮮による対南工作が激化していることが明らかになった。(つづく)







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