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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第66回


07月14日(月) 00時00分
文:惠谷 治 



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1995年に朝鮮画報社が発行した『栄光の50年』に掲載された上掲写真には、「1967年1月初、共和国北半部の領海に侵入し、わが方の断固たる反撃をうけ、沈没した敵の警護艦56号」というキャプションが付いている。1967年1月19日
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第66回] 党中央委員会委員長に代わって党総書記が新設された理由

 1966年10月5日、朝鮮労働党第2回代表者会議が平壌で開催された。12日までの8日間も続いた会議において、金日成は1962年12月の党中央委総会で採択された「国防の自衛」を具現化させる「4大軍事路線」に関する詳しい説明をおこなった。4大軍事路線は、「全人民の武装化」「全国土の要塞化」「全軍の幹部化」「全軍の近代化」の4つの方針からなっている。

 「全人民の武装化」とは、スイスのように全家庭に武器を配布して武装することではなく、女性を含めた全国民を戦争準備のために動員するというものだった。「全国土の要塞化」とは、すべての軍事施設や重要施設を地下に建設するということである。また、「全軍の幹部化」とは、人民軍将兵全員を戦時には民兵や学徒兵を指揮できる幹部(将校)に鍛え上げることで、この方針は全人民の武装化と表裏一体の関係にあった。「全軍の近代化」について金日成は、「人民軍を近代戦の要求に適合するように近代的武器と戦闘技術機器で武装し、最新軍事科学と軍事技術でしっかり準備する」と述べているものの、その実態については今さら説明する必要もない貧弱なものである。

 金一第1副首相はこの党代表者会議において、軍事費の負担が大きいため、1961年9月の第4回党大会で採択された人民経済発展7カ年計画を、3年間延長せざるを得ないと報告した。以後、北朝鮮の人民経済が正常化されることはなく、現在に至っている。

 そして、党代表者会議の直後に開かれた党中央委第4期第14回総会において、党中央の組織改編がおこなわれ、それまでの党中央委員会の委員長・副委員長制が廃止され、書記局制が導入された。党副委員長で副首相だった金昌満(延安派)は、この会議の半年ほど前にすでに粛清されており、協同農場の牛車引きとして過酷な労働を強いられ、病没した。

 書記局制の導入により、金日成が総書記となり、崔庸健、金一、朴金×、李孝淳、金光△、石山、許鳳学、金英柱、朴容国、金道満の10人が書記に選出された。新たな党政治委員会委員には序列順に、金日成、崔庸健、金一、朴金×、李孝淳、朴正愛、金光△、南日、李鍾玉、李周淵、金翊善、金昌鳳、朴成哲、崔賢、李英鎬が選出された。党政治委員会の候補委員には、韓相斗、玄武光、石山、許鳳学、崔光、呉振宇、林春秋、金東奎、金英柱、朴容国、鄭景福の11人が選出された。また、党政治委員会のなかに常務委員会が新設された。こうして党中央は、ほとんど満洲パルチザン派関係者で占められたのだった。

 明けて1967年早々(月日不明)に開かれた対南工作事業総会で、金日成は対南工作部署に対して次のように苦言を呈したという。

 「なぜ対南工作はいつも黒星を重ね、失敗ばかり繰り返すのか、革命は座ったままや、隠れてするものではない。もっと活発に強力に、対南工作をやらなければならない」

 金日成が指摘した黒星や失敗が、どの事件のことを指しているのかは不明であるが、韓国では、前年の1966年9月7日、日本海に面する東海岸一帯で、地下組織づくりと軍事情報の収集をしていたスパイ組織4組16人が検挙されるという事件が起きていた。金日成は、その2年前の小型潜水艇座礁事件や、韓国政府要人の暗殺失敗事件などを、念頭において発言したのかもしれない。

 この対南工作事業総会が開催された前後の1967年1月19日、日本海で漁船保護の任務にあたっていた韓国海洋警察隊所属の警備艦「唐浦号」が、北朝鮮の海岸砲台からの砲撃によって沈没し、139人が死亡するという事件が起こった。この事件は、金日成の発言に沿ったものように思われる。

 北朝鮮における絶対服従を理論化した「唯一思想体系」という用語を、金日成が初めて使用したのは、その2カ月後の3月17日から1週間開催された道・市・郡および工場党責任書記協議会においてであった。金日成は「党を改善し、党代表者会議の決定を貫徹することについて」という演説のなかで、「党の唯一思想体系を確立するのは、党建設で提起されるもっとも根本的な問題」と指摘した。金日成は、人民軍のなかでは「唯一思想体系」が確立されているにもかかわらず、党内にはそうした革命的気風がないと批判した。前年に党委員長が党総書記と変わったのも、党中央委員会を代表する副委員長がいるということは、「唯一思想体系」に反するというのが、その理由だった。(つづく)

×は吉がふたつ △は鋏のカネヘンがニンベン







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