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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第67回


07月17日(木) 00時00分
文:惠谷 治 



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撮影年月日が判明している1967年当時の金日成のスナップ。上段は、5月15日、「わが国人民に年中各種の果物を与えようと、ペクリ果樹園の遠大な設計図を示す」金日成という説明が付いている。中段は、6月13日に「咸興栄誉軍人樹脂日用品工場を訪れ、戦傷栄誉軍人の生活を親の愛で気遣い、革命の花をひきつづき咲かせなければならないと励ます」金日成という説明が付いているが、北朝鮮では「日用品工場」というのは軍需工場の偽装名である。下段は、10月8日に大安電機工場を現地指導する金日成の写真であるが、左の人物と金日成の間が不自然に空いており、修正された跡がはっきりと分かる。金日成に随行し、後に粛清された幹部の姿を消したものと思われるが、影なども不自然で捏造写真であることは疑いない。金日成は1967年当時も、眼鏡をかけたり、かけなかったりしていることが一連の写真から明らかである
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第67回] 粛清騒動で対南事業総局は解体され対南工作担当書記を新設

 1967年5月4日から8日まで、党中央委第4期第15回総会が、秘密裏に開催された。秘密会議のため、当時は日程を含め開催に関して一切伝えられることはなく、現在でも会議の全容は明らかになっていない。

 北朝鮮の文献に引用されている秘密会議での金日成演説で注目されるのは、金日成自身が自らを「首領」と呼んでいる点である。また、この会議で「唯一思想体系にそむくブルジョワ分子、修正主義分子の反党・反革命的罪悪」が暴露され、反党修正主義者たちが南朝鮮革命と祖国統一問題において、右傾降伏主義的傾向を犯し、修正主義的詭弁を弄したことが明らかにされたという。

 そして、党政治委員会常務委員兼書記である朴金×と李孝淳、党書記の朴容国(党国際部長)や金道満らが粛清された。彼らはパルチザン派のなかでは「甲山派」と呼ばれていたグループで、甲山派に連なる100人ほどの幹部も同時に粛清された。対南事業総局長だった李孝淳は、韓国内部において革命運動の形成を積極的に推進しなかったと指弾され、局長を解任された。

 植民地時代に朝鮮国内で反日活動を展開していた「甲山派」は、金日成の偽造された過去の実態を知っており、金日成による「唯一思想体系」を徹底させる上で不都合な存在だった。甲山派の粛清によって、金日成の独裁体制は完成した。今では、この秘密会議で金正日が「指導的力量を発揮」したことになっているが、金正日はその4カ月後(67年9月)に、ようやく党宣伝煽動部の文化芸術指導課長になったのである。

 それから2カ月ほどたった6月28日から7月3日まで開催された党中央委第4期第16回総会で、「党の唯一思想体系の確立」が公式に決定され、「全党に唯一思想体系を一層徹底的に樹立することにより、北半部の革命勢力をより強化すべきである」と告知された。

 李孝淳が対南事業総局長を更迭されると、対南事業総局は解体され、対南事業総局長よりも大幅な権限のある対南工作担当書記が新設され、人民軍総政治局長だった許鳳学中将(党書記)が任命された。

 「中央党の南朝鮮事業局〔対南事業総局〕の李孝淳らが、『投降主義的路線』だと非難され粛清されました。この粛清によって対南工作部署がひっくり返されて、対南工作員がいなくなってしまったのです。そのため、金日成は中央党の『指導グループ』を全国に派遣し、対南工作で使える“砂金”を探せ、という指令を下しました。指導グループは全国各地の職場を回って人事カードを点検し、私の職場に来て“砂金”を見つけたと喜んだものの、私の粛清歴を読んで、黙ってノートを閉じたそうです」

 1950年代後半の南労党粛清事件に巻き込まれた「英雄工作員」の金東赫(仮名)氏は、以上のように私に語った。1957年に金日成総合大学を3年で退学させられ(第48回参照)、江原道の文川機械工場の労働者に配置された金東赫氏は、熱心に働き、文川工業大学機械製作科を卒業したという。有能な人材だったにもかかわらず、南労党に関係した人物だとして、中央党の指導グループは金東赫氏を対南工作員に徴用できないと判断したのだった。

 「しかし、江原道の党責任者が報告書を読んだ後、私を呼びました。『工場の安全駐在部がトンム〔同務。同等か目下への呼びかけで同志の意味〕の悪事を、文献に書き連ねているが、心の傷を癒せば、工作員になれる』と言いながら、笑って書類を暖炉に投げ込んで、燃やしてしましいました。私に関する報告書でしたが、当然それはコピーのはずで、私に対するパフォーマンスでした。『トンムは、全ての試練を勝ち抜いた。党中央はトンムを信じる。腐った樹齢何百年の巨木を切り倒そうとすると、付近の草木に被害が及ぶ。周囲の木々は幹が曲ったり、枝が折れたりするが、それを整備すると、曲った木も真っ直ぐになる。腰が曲っていたとしても、トンムは真っ直ぐな木になる』と、その責任者は私に言いました。そして、採用書類を渡しながら、『明日、文川の軍病院で身体検査を受けるように』と告げました。翌朝、嬉しくて軍病院に検査に行くと、すでに私が党中央に召還されるという噂が流れていて、周囲の態度はがらりと変わりました。1年ほど前から女房が病気だったのですが、ある人は薬をもって来てくれました。私を監視していた安全駐在部の男ですら、挨拶に来るほどでした。1967年6月初め、中央党から召喚状が届き、党連絡部に出頭しました。党連絡部に召喚されると、695軍部隊(中央党政治学校)に入校させられ、1〜2年の基礎訓練を受けた後、招待所に入ることになっていますが、私には基礎訓練は必要ないということで、直接、連絡部の招待所に入りました」(つづく)

×は吉がふたつ







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