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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第68回


07月20日(日) 08時00分
文:惠谷 治 



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上の写真は、1978年に金正日の命令で北朝鮮に拉致された韓国人女優の崔銀姫氏が、到着直後に収容されていた招待所(『闇からの谺』より転載)。下の図は、1977年に北朝鮮に渡った八尾恵氏が到着直後に収容された招待所の間取り図である(『謝罪します』より転載)。北朝鮮では、迎賓館、臨時宿泊所、隔離収容所などの宿泊施設を「招待所」と呼んでおり、北朝鮮全土に無数に存在する。上掲写真と間取り図の招待所は別ものであるが。外観や内部は基本的には同じである。招待所は林のなかにある一戸建てで、外部と接触できないように隔離されており、平屋や2階建てなどがあるが、思想改造用の映写室があるのが特徴である。招待所では「食母(シンモ)」と呼ばれる女性が、食事などの世話をする。工作員は招待所で教官から個人指導を受けるが、教官は通って来ることもあれば、招待所で工作員と共同生活する場合もある
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第68回] 金日成が最高人民会議で言及した韓国内のスパイ組織

 党連絡部の工作員に召喚された金東赫(仮名)氏は、党連絡部の招待所において、共産主義理論、南朝鮮革命理論、地下党組織方針などを学習した。

 「地下党組織方針とは、(1)思想、宣伝を優先する (2)指導核心を育成、組織して配置する(3)地下党組織を重要地区に配置すること、とくにソウルを中心とした軍事基地周辺を重視する (4)労働者、農民、兵士に浸透する(5)単線の連携のもとに複線にしていく(6)新旧の組織を区別する(7)北とは関係なく、南独自で組織したと偽装するーーというものである。そのほか合法、非合法、半合法の活動形態と偽装方法、軍事訓練、地政学、射撃、水泳、強行軍、無線通信の訓練を受けた」(『金日成の野望』上巻88頁)

 精力的な北朝鮮報道で知られた産経新聞の柴田穂記者は、金用珪という工作員から取材した内容を、以上のように書いている。

 金東赫氏は対南工作員だったが、対日工作員が招待所で受けている密封教育については、1967年当時、すでに日本の新聞でも報道されていた。

 「いままでに警視庁が検挙した“北朝鮮スパイ”は全部平壌郊外にある一軒家に、たった一人で外出を禁じられ、カンズメ状態になって日本語、日本の政治経済状況、文学、芸能、社会風潮などのほか、交通事故にあったときの処理の仕方や日本の警官や役人の弱点まで微に入り、細にわたって教えられていた。この教育を終えたころ、はじめて教師と一緒に外出を許される。この途中でかならず、見ず知らずの人間にひき合わされ、一緒に並んで写真を撮る。教育期間が終わると約1週間の休暇が与えられ、家族のもとに帰るが、工作員として日本に潜入する“秘密“をもらすことは許されない。休暇が終わって約1カ月後に日本潜入の命をうける。このとき1枚の写真を渡される。外出の途中でひき合わされた人間と一緒にうつした写真である。写真にうつっているものの親とか兄弟という非常に近い肉親が日本に住んでいる。日本潜入が成功したらすぐその人物をたずね、写真をみせ『貿易の仕事で日本にきたが、あなたの肉親の親友です』といってその家にもぐりこめといわれ、住所、氏名のほか、その家族を中心にした地図や細かい道順を教えられる」(1967年11月30日付毎日新聞)

 金東赫氏が工作員となった1967年当時の対南工作組織について、私は金東赫氏に尋ねてみた。

 「対南工作は南朝鮮事業局〔対南事業総局〕の局長が責任者でしたが、李孝淳が粛清されると、人民軍総政治局長の許鳳学が『対南事業担当秘書』になりました。当時は、党連絡部、後の党調査部である党文化部、そして党作戦部がありました。党連絡部長は、朝鮮戦争当時に内務相だった方学世、文化部長は金仲隣でした」

 金東赫氏は以上のように答えたが、他の証言や文献などから、1967年当時にあった党の対南工作部署は、党連絡部、党調査部、そして党文化部の3組織で、金東赫証言は誤解か記憶違いだった。また、金東赫氏の直接の上司となった党連絡部長の方学世については、次のような情報がある。

 「1960年12月には、政治的誤りを犯したことにより内務相を解任され、最高裁判所副所長に左遷され、ソ連に帰った。しかし、ソ連側の圧力で、66年11月、党中央連絡局〔南朝鮮総局〕情報部長、67年7月、対南事業総局調査部長をつとめ、67年11月から最高人民会議代議員になった」(『金日成の野望』中巻148頁)

 この情報源は不明であるが、金東赫氏が党連絡部工作員として召喚された時の上司を間違えるはずはなく、対南事業総局が解体された後の党連絡部長は方学世だったと考えるのが妥当だろう。

 「1967年から68年当時の党連絡部の機構は、部長の下に25の課があり、1課から14課までが、組織課、宣伝課、幹部課、総務課、財政課などの内部部署で、15課から25課までが、ソウル・京畿道など韓国の各道・各市を担当する指導課とともに、対日、対米、対欧など海外工作担当課もありました。『統一革命党』の工作は、ソウル・京畿道担当課がおこなっていました。海外工作担当課は、担当地域を限定しておらず、対日工作課が欧州の工作もおこなうように、地域はまたがっていました」(つづく)

△は渉のサンズイがコザトヘン







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