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ジャーナリスト・惠谷 治「独裁者の秘密を徹底検証ドキュメンタリー金正日」
独裁者の秘密を徹底検証 ドキュメンタリー金正日 第70回


07月26日(土) 09時00分
文:惠谷 治 



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年表などによれば、金日成は1967年5月にソ連副首相と会談しているくらいであるが、1982年に発行された金日の外交活動をまとめた写真集『親善と団結のために』では、金日成は1967年に2人の賓客と会見している。上の写真は「3大陸人民連帯機構執行書記局代表団と会う金日成(4月)」、下は「エジプト・アラブ共和国民族会議のサダト議長と会う金日成(5月)」である。「3大陸人民連帯機構(OSPAAAL)」は、1966年にアジア、アフリカ、中南米の3大陸82カ国の代表によって設立された、反米組織で、当時の書記長はキューバのオスマニ・シンフェゴスだった。エジプトの副大統領を前年に辞職したアンワル・サダトは、政党「国民会議(民族会議)」の代表として訪朝し、金日成と親しくなった。1970年にサダトは大統領となり、1973年の第4次中東戦争では北朝鮮のパイロットが活躍するほど、エジプトと北朝鮮は緊密な関係に発展した
 第3部 独裁者・金正日権力の源泉
 第1章 党の謀略機関を掌握し拉致工作を定式化
 [第70回] 日本の官公庁を震撼させた総連工作員の「外務省スパイ事件」

 朝鮮人民軍偵察局の「第124軍部隊」は、1967年8月12日に創設された。

 「近い将来、南朝鮮を共産化するため、124軍部隊が後方に大量に侵入し、軍、政各部門で、どの程度の任務を遂行するかにかかっている。124軍部隊によって、南朝鮮の運命は左右される」(『金日成の野望』上巻78頁)

 第124軍部隊の訓練を現地指導した金日成は、以上のように“教示”したと、第124軍部隊の第1期生として入隊し、翌年韓国軍に捕らえられた金新朝少尉は証言している。

 このような金日成教示もあって、党対南工作担当書記に任命された許鳳学は、対南工作を積極的なゲリラ戦に変化させた。

 第124軍部隊の誕生から1カ月後の9月5日、韓国京畿道抱川郡の哨城駅付近で、鉄道のレールが爆破され、普通列車が転覆するという事件が発生した。その8日後(9月13日)には、京畿道坡州郡雲井駅付近で、米軍の軍需物資を積載した貨物列車が爆破された。いずれも北朝鮮のテロであり、第124軍部隊所属の工作員の仕業だったと考えられる。

 北朝鮮工作員の韓国に対する侵入・テロ事件は、1965年が59件、1966年が50件だったのに対し、1967年には568件と10倍に激増した。翌1968年には761件と更に増加したが、1969年には111件、1970年には113件と急減し、1971年にはわずか3件となっている(塚本勝一『超軍事国家』84頁)

 1969年からテロ事件などが激減した理由については後述するが、ここで、当時の日本でのスパイ事件をみてみよう。

 スパイ事件を調べてみると、足立事件(第64回参照)の朴◇華が1965年5月に工作員に徴用されて以後、濁川事件(1975年7月12日)で逮捕された李敏哲が、1968年12月に徴用されるまでの3年間、対日工作員が徴用された事例が見当たらないのである。既述してきたように、それ以前は毎年徴用されていたことを考えると異常だった。また、摘発されたスパイ事件も1965年には3件だったが、1966年には杉並事件(第21回参照)1件でだけで、1967年の1件だけの事件には潜入工作員は関与していない。

 摘発されるスパイ事件は氷山の一角であり、工作員の徴用は続いていたと思われるが、北朝鮮内部の対南工作部署の方針転換や組織改編の影響が、対日工作にも影響を与えていたことは疑いない。

 1967年の1件だけの事件は「外務省スパイ事件」と呼ばれている。この事件では、工作員とともに外務省欧亜局東欧課の川上俊二(仮名)事務官(37歳)も逮捕された。スパイ事件で公務員が逮捕されたのは、1954年のラストボロフ事件以来2度目のことで、官公庁を震撼させる事件に発展したので、少し詳しく紹介しよう。

 戦前に渡日し、1956年に法政大学を卒業した李載元(別名、李在元。事件当時37歳)は、東京大学農学部の研究室に籍を置いていたが、群馬県の朝鮮初級学校の教員となったあと、1963年に教員を辞めて上京した。東京で「在日朝鮮人商工連合会」に勤務し、連合会の政治部副部長になった1966年ごろから、「朝鮮総連職員」「在日朝鮮人商工新聞記者」などの名刺を使い、工作活動をおこなうようになった。

 法政大学在学中に「朝鮮文化研究会」で知り合った川上俊二が、外務省国際資料課に勤務していることを知った李載元は、旧交を温めるという口実で接近し、川上俊二の母親が病気であることに目を付けて彼を買収し、外務省情報を入手した。川上俊二は欧亜局東欧課に事務官として異動した後も、李載元に外交文書、警察庁外事月報、入管情報など多数の秘密文書を提供し、月額2万円平均の謝礼を受け取っていた。川上俊二が李載元に流した書類のなかには、日ソ首脳会談に関する機密資料など重要な文書もあったという。李載元は北朝鮮の帰還船が新潟に入港するたびに、新潟に姿を現しており、帰還船を利用して機密資料などを北朝鮮に送っていたのだった。

 警視庁外事2課は、1967年11月16日に川上俊二を逮捕し、続いて11月23日に李載元を逮捕した。取り調べによって、李載元は外務省だけではなく、他の官公庁職員にも浸透していたことが判明し、146人もの関係者に出頭を求め、事情聴取がおこなわれた。

 「調べによると、李〔載元〕が積極的に接近していた中央官庁職員は、農林省関係では某研究所幹部(56歳)、付属機関職員(61歳)、事務官(33歳)の3人、通産省は女性技官(38歳)、運輸省は技術職員(31歳)、総理府の内閣調査室職員(30歳)の6人。さらに茨城県東海村の日本原子力研究所職員(36歳)も含まれている。

 李は農林省研究所幹部に『母国の留学生がお世話になったお礼に・・・』といって近づき、通産技官には『あなたが韓国人に貸しているお金を、私がたてかえてかえす』、運輸省職員には、李の妻が朝鮮語を教えたというきっかけをつかんで接近した。さらに原研職員には、以前近くに住んでいたことを口実に近づいていた。そして、いったん面識ができると、李はこれらの人たちを、はじめ食事にさそい1回、2回と食事をかさねるうち、仕事内容などをこまかく聞きだしていた。『研究資料にしたいから・・・』といって、これら公務員が簡単に持ち出せる資料をまず要求、だんだんと機密文書まで持ち出させた」(1968年1月24日付読売新聞)(つづく)
          
◇ は憬のリッシンベンがオウヘン 







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